デジタルマーケティングにおける戦略|
立案の流れから代表的な種類を解説

 2025.01.20  2025.01.21

デジタルマーケティングには環境分析に基づく戦略が必要です。本記事ではデジタルマーケティングの戦略を立案する基本的なプロセスを紹介します。代表的な施策やおすすめのソリューションについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

デジタルマーケティングにおける戦略|立案の流れから代表的な種類を解説

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デジタルマーケティング戦略立案の流れと、用いるフレームワーク

デジタルマーケティング戦略立案の流れと、用いるフレームワーク

デジタルマーケティングは大別すると、戦略の方向性や指針を立案する上流工程と、策定した施策を実行する下流工程に分類されます。上流工程の設計が曖昧だと、下流工程での手戻りが増え、利益率が低下します。したがって、デジタルマーケティングの成果を最大化するためには、市場調査や競合調査、需要分析、ペルソナやKPIの設定といった上流工程の設計が極めて重要です。ここではデジタルマーケティングで重要な役割を担う上流工程の基本的な流れや、代表的なフレームワークについて解説します。

1. デジタルマーケティングを行う目的を明確にする

デジタルマーケティングはデジタル技術を駆使したマーケティング手法の総称であり、事業者の経営体制や目的によって取り組むべき施策が異なります。例えば見込み顧客の獲得・育成を目的とする場合、まずはオウンドメディアやSNSなどを通じた顧客接点の創出と信頼関係の構築が求められます。こうした戦略の方向性や指針を定めるためにも、まずはデジタルマーケティングの目的を明確化するプロセスが必要です。それとともに、目指すべきゴールや仮のKPIを具体的に設定することで、施策の方向性も明らかにできます。

関連記事:マーケティングのデジタル化に必要な構想とは

2. 自社の外部環境を分析する

外部環境は不確実であり、リスクを抑えるための備えが必要です。例えば、一般消費者向けのECサイトを展開する事業者と、輸出入の企業間取引を主体とする事業者では、外部環境に起因する影響の種類や程度が異なります。前者は参入市場のトレンドや季節需要などの影響が大きく、後者は外国為替相場や国際情勢などの影響を強く受けます。一方、マーケティング戦略に大きな影響を及ぼす可能性があるため、継続的な調査・分析に取り組まなくてはならない要素です。外部環境を分析する代表的な手法としては、「PEST分析」と「5フォース分析」の2つが挙げられます。

PEST分析を用いてマクロ環境を分析する

PEST分析は、「Politics(政治的要因)」「Economics(経済的要因)」「Society(社会的要因)」「Technology(技術的要因)」の4要素を分析するフレームワークです。「Politics」は法規制や税制、「Economics」は株価や為替、「Society」は人口動態、「Technology」はAIやIoTなどのデジタル技術を指します。こうしたマクロな視点に基づく外部環境を多角的に分析し、自社に影響を及ぼすプラス要因とマイナス要因を把握することがPEST分析の役割です。

5フォース分析を用いて競争環境を分析する

5フォース分析は、自社を取り巻く外部環境の競争要因を「参入市場の競合」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「新規参入の容易性」「代替品の存在」の5項目に分類する分析手法です。競合他社、顧客、サプライヤーなどとの力関係、新規参入によって生じる脅威、自社の市場占有率を脅かす代替品の存在などを分析し、市場の競争要因を具体化することが5フォース分析の主な役割です。これにより、参入市場の競争構造や成長性を俯瞰的に把握でき、マーケティング戦略を立案する際の重要な判断材料が得られます。

3. 自社の内部環境を分析する

PEST分析や5フォース分析などによる外部環境の分析後には、参入市場における自社の優位性やプロダクトの長所・短所、人的資源や物的資源、見込み顧客の属性や購買行動といった内部環境を調査・分析します。それにより、自社のリソースやポジションを明確化した上で、マーケティング戦略の方向性を的確に定めることが可能です。こうした戦略の方向性を定める際に役立つのが「3C分析」と「カスタマージャーニーマップ」です。

3C分析を用いて顧客・競合・自社の関係性を整理する

3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3要素を分析するフレームワークです。基本的な流れとしては、見込み顧客の潜在的な需要を分析し、競合他社の現状や市場占有率の推移などを調査した上で、自社のプロダクトの長所・短所などを評価します。そして顧客分析と競合調査の知見を踏まえながら、自社の独自性や競争力などを分析することで、顧客ニーズを起点とした製品・サービスの開発や、競合他社との差別化戦略を推進する一助となります。

カスタマージャーニーマップで顧客視点を捉える

顧客視点に基づく購買体験を設計するためには、見込み顧客がどういった商品やサービスを求め、どのような体験を契機として、どのルートから購入に至るのかを把握しなくてはなりません。そこで必要となるのが、プロダクトの認知から購入に至る流れを時系列的に整理するカスタマージャーニーマップです。架空の見込み顧客となるペルソナを設計し、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」といった一連の購買行動を分析できれば、各フェーズで求められる最適な施策を定める一助となります。

関連記事:デジタルマーケティングにおける顧客体験の最適化

4. 基本戦略を策定する

参入市場や社会情勢の動向といった外部環境と、人的資源や物的資源、財務状況、プロダクトなどの内部環境を分析したなら、それらの情報を統合しながら企業全体としての戦略の方向性を策定します。このマーケティング活動における全社レベルの大局的な指針を、基本戦略と呼びます。参入市場やターゲットの明確化はもちろん、市場における自社の立ち位置や差別化戦略の方向性、あるいは人事や予算といった経営資源の配分を定めるのも基本戦略の一部です。基本戦略の策定に用いられる代表的なフレームワークとして、「STP分析」と「SWOT分析」が挙げられます。

STP分析でターゲットとポジショニングを決定する

STP分析は、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」を分析するフレームワークです。市場を細分化し(Segmentation)、購買意欲の高い顧客を絞り込み(Targeting)、自社の立ち位置を明確化します(Positioning)。それによって受注確度の高いターゲット像を具体化しつつ、競合他社と差別化を図るポイントを言語化・数値化することで、後述する実行戦略を策定する際の判断材料にできます。

SWOT分析で戦略を具体化する

SWOT分析は、内部環境における「Strengths(強み)」と「Weakness(弱み)」、外部環境の「Opportunity(機会)」と「Threat(脅威)」を分析するフレームワークです。例えば自社製品が業界内で高いブランド認知度を誇るものの、広告宣伝費の増大が課題になっているとしましょう。この場合、SNSを中心としたプロモーションを展開することで、コストを抑えつつ幅広い潜在層にアプローチできる可能性が高まります。このように新たな機会を設けて弱みを克服する、または強みを補強して脅威の影響を回避するなど、内部と外部の要因を組み合わせながら戦略の方向性を定められるようにすることがSWOT分析の役割です。

5. 実行戦略を策定する

基本戦略を実行する手法や具体的な方法論を定めるフェーズです。STP分析やSWOT分析などを通じて策定された基本戦略に基づき、提供するプロダクトの機能性やデザイン性、価格、流通経路などを明確化し、販売促進や広告宣伝の具体的な手法に落とし込みます。実行戦略の策定で用いられる代表的な手法は「4P分析」と「4C分析」の2つです。

4P分析で施策を立案する

4P分析は、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4要素を販売者視点から関連付ける分析手法です。まず自社が提供する商品やサービスの強みと弱み、競合製品との差別化ポイントなどを明確化し、市場の相場観や損益分岐点などを考慮しながら適正価格を検討します。そして商品を顧客に届けるための最適な流通経路を設計するとともに、具体的な訴求方法を策定するというのが4P分析の基本的な流れです。このプロセスを経ることで、「どのような商品を」「いくらの価格で」「どの販売経路から」「どのように提供するのか」を具体的な行動レベルに落とし込めます。

4C分析で施策を立案する

4C分析は、「Customer Value(顧客が得る価値)」「Customer Cost(顧客が支払うコスト)」「Convenience(顧客にとっての利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」を顧客視点から分析するフレームワークです。例えば高品質な製品を取り扱っていても、販売経路が実店舗に限定される場合、交通費や移動時間といった非金銭的コストが顧客の購買意欲を低下させる可能性があります。こうした機会損失を防ぐには、ECサイトの立ち上げによる販売経路の整備、もしくはSNSやメールマガジンを介した顧客接点の創出が必要と推察されます。このように、顧客ニーズを踏まえて実際に何をすべきか、という具体的な施策を立案する際の助けとなるのが4C分析です。

6. KPIを設定し、効果を検証する

デジタルマーケティングの具体的な施策を立案できたなら、個々の施策に対し、あらためてKGIに基づくKPIを設定する工程が必要です。例として「ECサイトの年間売上高を前年比+10%」をKGIとする場合、PV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)、自然検索流入数、ページのスクロール深度、CTAのクリック率、コンバージョン率などの指標をKPIに設定し、それぞれの効果を定量的に検証しなくてはなりません。それにより、最終目標の実現に至るまでのプロセスを視覚的に把握できると同時に、各種KPIの進捗状況に応じて施策を修正・改善することが可能です。そして仮説検証を繰り返しながらPDCAを回すことで、ナレッジの蓄積と戦略の精度向上が期待できます。

デジタルマーケティング統合基盤の活用ポイント
イベントレポート『デジタルマーケティングと向き合う ~ 遅れを取り戻すために ~』(CTC Forum 2023 パネルディスカッション)

デジタルマーケティング戦略の種類

デジタルマーケティング戦略の種類

ここではデジタルマーケティングにおける主要な施策と特徴について解説します。

WEBサイト運用

WEBサイトの運用はデジタルマーケティングの代表的な施策のひとつです。具体的にはECサイトを利用した商品・サービスの販売、コーポレートサイトを通じた顧客接点の強化、オウンドメディアの活用による潜在顧客の発掘、リクルートサイトを介した求人・採用といった手法が挙げられます。中でも、WEBサイトを活用したマーケティング戦略を推進する上で重要な課題となるのが以下の2つです。

コンテンツSEO

ユーザーの検索意図に即した高品質なコンテンツを発信し、検索エンジンでの上位表示を目指す手法です。定期的な記事のリライトやKPIの継続的な検証といった対策が必要ですが、上位表示を実現できれば自然検索流入数が大幅に増加し、広告費をかけることなく顧客接点を強化できます。それにより、長期にわたる安定的な集客とコンバージョン数の増大が期待できます。

チャットボット/WEB接客

チャットボットはAI技術を活用した自動会話プログラムで、Q&Aなどにおいて24時間365日のサポート体制を実現可能です。問い合わせ対応からリードの獲得につながるケースも多く、レコメンド機能によるクロスセルの促進なども期待できます。直接的な成果を得られなくとも、問い合わせやクレームのデータセットをVOC分析に活用できる点もメリットのひとつです。

広告運用

リスティング広告やSNS広告、ディスプレイ広告といったWEB広告を運用する手法です。例えばリスティング広告はGoogle検索などの検索キーワードに連動して表示されるため、購買意欲の高い顕在層にピンポイントで訴求できるという利点があります。出稿キーワードや入札単価、クリック率などを定期的に分析し、広告運用のノウハウが蓄積されれば、低予算でもコンバージョンを獲得できる可能性が高まります。

ホワイトペーパー

WEBサイトに流入したユーザーに有益な資料を配布し、ダウンロードと引き換えに顧客情報を取得するマーケティング手法です。CTAのクリック率や資料のダウンロード数、ダウンロード後の問い合わせ率やアポイントメントの取得率などをKPIに設定し、これらの指標に基づいて施策の効果を測定します。訪問営業やテレアポといった業務を代替できるため、営業活動におけるリソースの効率化や最適化を図れる点がメリットのひとつです。

メルマガ

主にEメールを介して有益な情報を発信するマーケティング手法です。例えばホワイトペーパーをダウンロードしたという事実はそのユーザーが自社製品に一定の関心をもつ証であり、メルマガを通じてベネフィットを伝えられれば成約に至る可能性が高まります。メルマガの開封率やURLのクリック率などを定期的に分析し、ユーザーの属性や関係性に応じてコンテンツを変更することで、より高いコンバージョンが期待できます。

SNS運用

InstagramやX(旧Twitter)などのソーシャルメディアを活用する手法です。SNSはコミュニティの形成や情報共有を図る媒体として機能し、とくに若年層との顧客接点を強化できる点がメリットです。フォロワー数やインプレッション数、自社メディアへの誘導数などを分析し、継続的な改善に取り組むことで極めて費用対効果の高い広告媒体になり得ます。

動画配信

動画配信サービスを通じてコンテンツを提供するマーケティング手法です。現代はブロードバンドの浸透や5Gの拡充によって通信速度の高速化・大容量化が進み、モバイルデバイスの普及も相まって動画コンテンツの市場規模は年々拡大していく傾向にあります。動画の視聴回数や平均視聴時間、インプレッション数、クリック率、離脱率などを詳細に分析できるため、その知見をコンテンツの改善や顧客理解の深化に役立てられます。

効果を最大化する「デジタルマーケティングソリューション」

効果を最大化する「デジタルマーケティングソリューション」

デジタルマーケティングの投資利益率を高めるためには、大局的な戦略を定める上流工程の設計が重要です。もちろん施策を実行する下流工程も大切ですが、具体的なアクションを定めるためには、前提として市場調査や競合調査、需要分析、顧客分析などに基づく精緻なデータが欠かせません。そして顧客属性・行動データなどを活用して顧客体験価値を高める施策を定め、その施策の実行を支えるテクノロジーを導入するプロセスが必要です。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)では、こうした一連の工程を総合的に支援するサービスを提供しています。組織が目指すビジョンを起点として企画構想の立案や取り組みの推進を支援するとともに、デジタルマーケティングの基盤となるデジタル技術の導入を支援します。デジタル化が加速する現代市場の中で競争優位性を確立するためにも、CTCのデジタルマーケティングソリューションを利用してみてはいかがでしょうか。

関連記事:デジタルマーケティングソリューション|伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

まとめ

まとめ

デジタルマーケティングは大別すると、大局的な戦略を定める上流工程と局所的な施策を実行する下流工程に分類されます。上流設計が曖昧だと下流工程で手戻りや軌道修正が発生しかねないため、上流工程で戦略を立案するプロセスが極めて重要です。上流工程における戦略立案の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. デジタルマーケティングの目的を明確化する
  2. 自社の外部環境を分析する
  3. 自社の内部環境を分析する
  4. 基本戦略を策定する
  5. 実行戦略を策定する
  6. KPIを設定して効果を検証する

具体的な施策としては、「WEBサイト運用」「広告運用」「ホワイトペーパー」「メルマガ」「SNS運用」「動画配信」などが挙げられます。それぞれにコストや効果、アプローチしやすい層などの違いがあるため、立案・策定した基本戦略と実行戦略に基づいて、自社に適した手法を選定することが大切です。

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