近年、国内ではDXの実現が重要課題となっており、ニューノーマル時代に即したワークスタイルの確立が求められています。そこで重要なキーワードとなるのが、オフィスワークとテレワークが融合した働き方を意味するハイブリッドワークです。本記事ではハイブリッドワークの概要や具体的なメリット・デメリットについて解説します。
テレワークのみだと様々な弊害も
国内では緊急事態宣言が発令された2020年4月にテレワークの導入率が飛躍的に上昇し(※1)、ワーク・ライフ・バランスの向上や多様な働き方の実現、オフィスコストの削減、地理的な制約の克服など、様々なメリットをもたらす働き方として大きな注目を集めるようになりました。しかし他の先進諸国と比較した場合、日本のテレワーク実施率は決して高いとはいえません。総務省の情報通信白書によると、米国やドイツのテレワーク実施率は60%弱となっているものの、日本は30%程度にとどまっているのが実情です(※2)。
テレワークは直接的な対面機会が激減することで業務連携や情報共有の遅滞を招くと同時に、社員研修や人材教育の効率が低下します。また、遠隔勤務では従業員の勤怠状況や業績貢献度を把握しにくく、人事評価の公平性を担保するのが困難になるという点が懸念されます。直接的なコミュニケーションが減少することで組織への帰属意識が希薄化し、孤独感や不安感から心身に支障をきたす例も少なくありません。このような背景から、テレワーク環境のみでは従来と同等以上の生産性を確保するのが困難となっています。
(※1)参照元:第七回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査(p.7)|パーソル総合研究所
(※2)参照元:令和4年版情報通信白書(p.101)|総務省
ハイブリッドワークとはオフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方
リモート型の労働環境が抱える課題や問題を解消しつつ、テレワークのメリットを享受できる働き方として注目されているのがハイブリッドワークです。ハイブリッドワークとは、出社型のオフィスワークとリモート型のテレワークを組み合わせた先進的な働き方を指します。自社の経営体制や従業員の個人的な事情などを考慮し、その時々の状況に応じてオフィスワークとテレワークを選択するのがハイブリッドワークの基本的なスタイルです。
また、ハイブリッドワークを推奨する企業はオフィス勤務か在宅勤務かの二者択一ではなく、WAF(Work-From-Anywhere)の原則を導入するケースも少なくありません。WAFとは、業務のパフォーマンスを発揮できる環境であれば、望む場所で好きな時間に働けるワークスタイルです。オフィスや自宅はもちろん、カフェや図書館、コワーキングスペースやシェアオフィスなど、時間や場所といった制約にしばられることなく、自分にとって最適な環境で働くという選択肢を能動的に選べます。
ハイブリッドワークを導入するメリット
ハイブリッドワークを導入する主なメリットは、コミュニケーションの円滑化と生産性の向上です。パーソル総合研究所の調査によると、オフィスワークの生産性を100%と定義し、テレワーク環境の主観的な生産性を尋ねた場合の平均値は89.6%です(※3)。多くの企業がテレワーク環境の生産性低下を自覚しており、その理由として考えられるのがICTを介した非対面のコミュニケーションです。ビジネスチャットやWeb会議システムなどを通じたコミュニケーションでは、どうしても意思疎通のズレや情報共有の遅滞が生じます。
ハイブリッドワークは重要な会議や打ち合わせはオフィスで実施し、資料作成やデータ入力などは自宅で集中的に取り組むなど、状況に応じて働く場所を柔軟に選択可能です。それにより、ワーク・ライフ・バランスの向上や地理的な制約の克服といったテレワークのメリットを享受しつつ、コミュニケーションの希薄化と生産性の低下を解消できます。また、ハイブリッドワークを確立できれば、出産や育児、介護など個人の事情に応じた多様な働き方が可能となるため、優秀な人材を確保できる可能性が高まる点もメリットのひとつです。
(※3)参照元:第七回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査(p.5)|パーソル総合研究所
ハイブリッドワークの普及で見えてきたデメリットと課題
新しい時代に即した働き方として注目されるハイブリッドワークですが、いくつかの懸念事項も存在します。なかでも重要な課題となるのが以下の3点です。
社員間の情報格差
ハイブリッドワークでは、オフィスワーカーとテレワーカーの情報格差が懸念されます。例えば、オフィス環境では何気ない雑談からアイデアが生まれたり、重要な情報交換が行われたりする場合が少なくありません。そのアイデアや情報が在宅勤務の従業員に共有されず、業務の進捗やプロジェクトの進展に悪影響を及ぼす恐れがあります。反対にWeb会議で共有された重要事項がオフィス勤務の従業員に共有されないという事態も起こりかねません。このような課題を解消するためには、ひとつのプラットフォームにデータが集約される情報共有基盤の構築が必要です。
勤怠管理の複雑化
ハイブリッドワークでは、オフィス環境とテレワーク環境で働く従業員を個別に把握し、なおかつ人事情報を統合的に管理しなくてはなりません。完全なテレワーク環境と比較すると勤怠状況を把握しやすいものの、オフィスワーカーとテレワーカーが混在することで勤怠管理が複雑化・煩雑化します。先述したように、テレワーク環境では従業員の勤怠状況や業績貢献度を把握しにくく、人事評価における公平性の担保が困難です。これはハイブリッドワークにも当てはまる懸念事項のため、オフィスワーカーとテレワーカーが混在する労働環境に最適化された勤怠管理システムが求められます。
エンゲージメントの低下
ハイブリッドワークの導入によってコミュニケーションの希薄化を解消できるとはいえ、それはあくまでも完全なテレワーク環境と比較した場合です。従来のオフィス勤務と比較すると出社回数が減少するため、コミュニケーション不足から従業員同士の結束力や組織に対する貢献意識が損なわれる恐れがあります。また、評価も難しいため不公平感を感じてモチベーションが下がる要因にもなりえます。さらに、業種によってはリモート型の労働環境に対応できず、組織への不満を募らせる要因となりかねません。このような背景から従業員のエンゲージメントやロイヤルティが低下し、組織全体の生産性に悪影響を及ぼすリスクが懸念されます。
ハイブリッドワークを導入する際のポイント
ハイブリッドワークを実現するためにはICTの戦略的活用とコミュニケーション機会の創出が重要課題です。ハイブリッドワークでは外部から社内ネットワークにアクセスする必要があるため、ゼロトラストネットワークに基づくセキュアな情報共有基盤が求められます。ビジネスチャットやWeb会議システムなどを導入するのみならず、それらを活用してミーティングや雑談の機会を意図的に創出し、コミュニケーションの円滑化を促進する仕組みも必要です。
また、オフィスワーカーとテレワーカーの勤怠状況を一元的に管理できる勤怠管理システムの導入も求められます。ハイブリッドワークを前提とした就業規則と人事評価制度を確立し、セキュリティポリシーなどの指針を周知徹底しなくてはなりません。こうしたデジタル領域の変革を推進するだけでなく、従業員の固定席を廃止するフリーアドレスを導入したり、オンライン会議専用のスペースを設置したりなど、ハイブリッドワークに最適化されたオフィス環境の整備も重要なポイントです。
まとめ
ハイブリッドワークはオフィスワークとテレワークが融合した新しいワークスタイルです。テレワーク環境では直接的な対面業務の減少が業務連携や情報共有の遅滞につながり、コミュニケーション不足による孤独感の増大や生産性の低下を招く要因となります。状況に応じてオフィスワークとテレワークを切り替えることで、こうした課題を解消しつつ、それぞれのメリットを享受できます。CTCはニューノーマル時代に即したワークスタイルの変革を支援する様々なソリューションを提供しています。ハイブリッドワークの確立とDXの実現を目指す企業は以下のページから詳細をご確認ください。
https://www.dx-digital-business-sherpa.jp/
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