若手ならではの目線で切り開くDXについて、前半では実経験に基づいて、そこから得られた価値観をメインにお話ししていただきました。後半はさらに詳しく話を掘り下げ、DXや新規事業を妨げる要因やその解決策について、ご意見をうかがいます。
登壇者プロフィール
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業グループ エンタープライズビジネス企画室
デジタルビジネス推進第1部 DX・モデルシフト推進課
藤野 祐里佳(ふじの ゆりか)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業グループ ライフサイエンス本部
ライフサイエンス営業第2部 営業第6課
石川 綾子(いしかわ あやこ)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
新事業創出・DX推進グループ DXビジネス推進事業部
Buildサービスチーム Build第2課
門屋町 咲穂(かどやまち さきほ)
キーワードは“意識を変える先進力”
―――これまでの業務から感じた、「新しいことに取り組む」大変さはなんだと感じますか?
門屋町さん
当事者としての答えがない中、前に進んでいく意欲を持ち続けることだと思います。DXの推進とはいっても、実際には上からDX担当に任命されたから、組織のミッションとしてとりあえず新規事業に取り組むという方も多いのではないでしょうか。その場合、担当者が解決しなくてはいけない課題は、あくまでも組織の課題であって、自分自身の課題ではありません。そのため「別に自分がやりたいわけじゃないし、明確な答えもないから、何をすればいいのかよく分からない」という気持ちになり、事業が進まなくなってしまいます。組織のミッションにどうやって自分自身が興味を持つか、どうやって自分ごとに落とし込んで当事者意識を持つかというところが、ものすごく難しいと感じます。
藤野さん
私が難しいと感じるのは、お客様自身もアイデアが曖昧であることが多いということです。CTCのビジネスは、お客様の課題に対してソリューションを提供することなので、お客様の課題を引き出したい気持ちはあるのですが、お客様の中でその部分がしっかり固まってない場合もあります。そういったお客様の課題を一緒に探索するというのも、私たちがやらなければいけないことのひとつなのかなと思います。簡単にアイデアが出るわけではないので、お客様と一緒に0から1を作る苦しみを実感しながら、お客様に寄り添って考えていくのが大事だと思っています。その際に、長い時間をかけてお客様と向き合い、心理的安全性を担保した上で、とにかくお客様の話を最後まで聞くように意識しています。
石川さん
心理的安全性はとても大切だと思います。たとえば、仮に新しいアイデアが浮かんだとしても、自分が抱えている業務もこなせていないのに、こんな提案をしている暇があるのかと足踏みする方も多いと思います。そういう状況を改善するためには、上の推進力が非常に大切なのではないかと思います。そのためにも、我々とお客様だけでなく、お客様の組織内でも心理的安全性を確保していただくことが重要であると考えます。風通しをよくするきっかけになればといつも思っています。
新規事業に取り組むきっかけは、上から言われたからとりあえずやるという形でもいいんです。当事者意識は、その取り組みの中で徐々に培っていければいいと思うので。そして新しい取り組みを効率よく加速させていくには、どんどんやっていこう、誰でも挑戦していいんだよ、失敗してもいいんだよというように、上から下に向けて、組織の風土を変える働きかけが重要だと思います。どんな事業も誰か1人が頑張ったって意味ないですし、組織全体で変わっていかないと、事業を成功させるのは難しいと感じます。
私が関わった企業では、社内だけではなく、対外的にトップの方がDXを進めていくという強いメッセージを発信していました。企業メッセージとして表明した以上、何がなんでも取り組まなければいけない状況というものを作ったんです。そういった企業は動きが格段に違う印象だったので、上の強力であり協力的な推進力というのも、DXを推進する大きな要素なのではないかと感じます。
「伴走支援業務は映画製作に似ている。」~若手が考える新規事業の意義~
―――大変だと分かっていても、新規事業に取り組む意義とはなんでしょうか。
石川さん
私は営業という立場から新規事業に携わってきて、“営業は映画でたとえると監督なのかな”と感じています。観客であるお客様のニーズをうかがいながら、ニーズに合わせた映画を作るんです。PMやSEの方といった演者を、訴求したい製品やソリューションが衣装や音響として輝かせる。そしてその全体像を見てコントロールしていくのが営業ではないかと。営業としてPMの選定とオファー、使用するソリューションの選定などから始めて、実際に形になった映画(プロジェクト)を見ると、ものすごい達成感を味わえますね。
門屋町さん
そういう意味だと、私は営業の方にとても感謝しています。営業の方はお客様とお金だったりスケジュールだったりの調整をしてくれるので、演者側としては映画を輝かせるために作品にコミットすることが重要で、新しいプロダクトなどを作る、ひらめく、その瞬間をよりよいものにするといったことに集中できます。この時に、抽象的なアイデアだったものが具体的になり、プロトタイプなどの形におちてPJが進んでいくと貢献できたと感じます。そのため、この映画でどれだけ集客が見込めるかという部分までは、頭が回りきらないことが多いです。そこをフォローしていただけるのは、非常に助かります。
藤野さん
そのように努力して作った映画が、多くのユーザーに届けられて広がっていくと考えると、こういった新規事業は、結果的には世の中のビジネスの拡大につながるのではないでしょうか。DXに取り組む多くのお客様を見ていても、自社だけではなく、自社で提供するサービスを通して世の中をよりよくしたいという思いを掲げているように思います。そのような取り組みを私たちがご支援させていただくことで、世の中をさらによくする縁の下の力持ちになれればいいと思います。DXに関わる案件に携わるようになってから、そんな希望を抱けるようになりました。
同じ若手社員や上司に伝えたいメッセージ
―――最後に、新規事業に取り組む同世代のビジネスパーソンへ、もしくは新規事業を推進するリーダーの方々へ伝えたいメッセージをどうぞ!
藤野さん
まだまだ私も至らないところがたくさんあるとは思いますが、新規事業の世界には“これが成功”というような答えがない領域だと思います。そのため、まずは自分が考えたこと、感じたことを実行に移していくことを大事にするのがいいと思っております。
門屋町さん
私のメッセージは、主に同じ世代の方々向けになります。攻めのDXとか新規事業には正解がないので、取り組みのすべてを数字で測らないでほしいです。まずは事業に取り組むにあたって、リーダーとして部下たちが動きやすい環境を考えて、そういう環境を作るために、さらに上層部と意見を交わしてきてほしいです。そして、私たち部下を今よりもっと信頼して仕事を任せてください。そんなご支援をいただけたら、部下はより一層力を発揮できると思います。協力し合って、会社全体をよくしていきましょう。
今まさに現場の第一線で頑張っている方々へのメッセージとしては、意見のぶつかり合いを恐れないでほしいです。同じ人間じゃない以上、意見や価値観は必ずぶつかります。その時に大切なのは、異なる意見にどうやって橋渡しをするのかということです。まずは意見をぶつけて、相手のことを受け入れて、共通のゴールに辿り着くために考えることは、ビジネスパーソンとして意識した方がいい点だと思います。
石川さん
新規事業は、“unknown×unknown”という誰も答えを持っていない領域のビジネスです。そんなビジネスには1人だけで挑戦するのではなく、周りを巻き込んでいきましょう。新規事業のファンになる仲間をたくさん作って、皆で一緒に取り組んでいけばいいと思います。
※部署名、役職名、その他データは公開当時のものです。
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