多くの企業でAzure Virtual Desktop（以下AVD）がテレワーク環境として採用されています。AVDは容易に環境構築できる一方で、他の専門的な製品と比べると運用面で課題があることも事実です。
本記事では、そのような課題を解決するサービスとして「Nerdio Manager」を紹介します。複数回にわたる連載を通じて、Nerdio Managerの利点や活用方法について詳しく解説していきますのでよろしくお願いいたします。
Azure Virtual Desktopの運用課題
まずは、AVDの運用課題について２点ほど例を挙げて説明します。
ユーザーインターフェース
Azureはパブリッククラウドサービスであり、その機能の管理には主にAzure Portalを利用します。AVDもAzureの一つのサービスであり、その管理画面にはAzure Portalからアクセスできます。しかし、AVDのメニュー内の機能だけでは、環境構築や運用管理作業を完結することはできません。
ユーザープロファイルの設定やその保存先となるディスクの追加、バックアップ、稼働中の仮想マシンのログ取得や監視など、運用に欠かせない機能を用意するためには、AVD以外のサービスも併用して環境を構成し管理する必要があります。デスクトップ仮想化を目的とした専用製品であれば、これらの運用機能は統合された1つのインターフェースで提供され、集中管理が可能です。しかし、AVDではAzureの様々なサービスの管理画面を運用に合わせて切り替えながら利用する必要があります。
OSイメージ管理
利用者の利用する仮想デスクトップは、AVDのホストプールで管理されます。ホストプールではどのようなOSイメージ（マスターイメージ）を使って仮想デスクトップを展開するかを構成します。運用ではここで使われるOSイメージを頻繁に更新、再展開する場面が発生しますが、このイメージ管理・運用は意外と面倒です。
イメージファイルは仮想マシンを一般化（Sysprep）し作成します。一般化に伴い元となった仮想マシンは削除されてしまうため、継続的に変更可能な仮想マシンを維持しようとすると、一般化の前にスナップショット等を活用して元のOS状態を損なわないようにする必要が出てきます。また、出来上がったイメージはそのバージョン管理を別のサービスを利用して行います。これらは、他のデスクトップ仮想化を目的とした専用製品であれば、単純な操作で可能ですが、AVDでは少々複雑な手順が必要となってしまいます。
AVDは仮想デスクトップ環境を構築するための優れた機能を提供しますが、あくまでAzureの１つの機能としての提供です。運用を考慮した場合は、Azureに対する豊富な知識と複雑な運用手順が求められることに注意が必要です。
Nerdio Managerとは
Nerdio Managerは前述したような課題を解決するのに適した製品です。機能として提供されるAVDを拡張し、AVD環境を運用する上で必要な各種サービスに対し直感的な操作が可能となるインタフェースを提供します。
また、Microsoft Intuneを統合することが可能であり、仮想デスクトップ以外のクライアントもまとめて管理することができるクライアント管理ソリューションとなっています。
Nerdio Managerでは、「運用負荷の軽減」、「コストの削減」、「回復力と拡張性の向上」の３つを大きな提供機能の柱として掲げており、本連載ではこれらが提供する機能について詳しく掲載していく予定です。
運用負荷の軽減
Nerdio ManagerはAVD運用に対応した優れたユーザーインタフェースを提供します。その他にもAzure上で複雑な操作が必要となる手順や手動による操作を自動化することで多くの運用負荷を軽減させます。
課題にあげたマスターイメージの管理についても、Nerdio Managerでは他製品と同様の仮想マシンを用いて簡単にマスターイメージを管理する手法を提供します。
また、マスターイメージの管理やその展開の他、ユーザー管理、ユーザープロファイル管理、バックアップやその復元といった運用中の手順を極力最小化できるように機能が実装されています。
マスターイメージの管理に関しては「【第3回】Nerdio Manager～AVDのマスターイメージ運用をより楽に！～」で詳しく紹介していますので、そちらもご覧ください。
コストの削減
パブリッククラウド上で仮想デスクトップを運用する際、最もコストが発生するのは仮想マシンの起動時間に対する課金です。そのため、各仮想デスクトップ製品は、これらを最適化するために複数のトリガーを持ったオートスケール機能を実装しています。AVDにもスケーリングプランがあり、スケジュールをベースにしたマシンのON/OFFが可能です。
Nerdio Managerはこれに加え、マシンリソースの状況やセッション状態などをトリガーとして起動できるスケーリング機能を有しています。これにより、より細かな制御による高いコスト削減が可能となります。
また、仮想マシンには必ずストレージが存在し、これもまた重要な課金要素となっています。ストレージは仮想マシンの電源をON/OFFしても課金は発生し続けます。しかし、Nerdio Managerではこのストレージに対してもコストを削減する機能を備えており、利用していない間のストレージコストを大きく低減させることが可能です。
オートスケールに関しては「【第4回】Nerdio Manager～オートスケール機能～」での紹介を予定しています。
回復力と拡張性の向上
AVDは堅牢で可用性の高いサービスですが、Nerdio Managerはネイティブサービスに基づいて構築された多くの機能を追加します。これには、AVD セッション ホストの問題を自動的に検出して修復する AutoHeal などの機能が含まれます。セッション・ホストが応答しなくなったり、エラーが発生した場合、AutoHeal はホストを再起動または再デプロイできるため、中断を最小限に抑え、安定した環境を維持できます。大規模または複雑な環境の場合、Nerdio Managerは、単一のコンソールから複数のAzureテナントにわたるAVDデプロイメントの管理もサポートしています。これにより、これらのタイプの環境を持つ組織の制御が一元化され、可視性が向上し、管理タスクが簡素化されます。
CTCの提供する「AVDクイックスタートパッケージ」
CTCでは迅速かつ安価にAzure上に仮想デスクトップ環境を構成するサービスとして「AVDクイックスタートパッケージ」を提供しています。
パッケージには設計ドキュメントや簡易利用手順書、QAサポートが含まれ、導入直後から実際の環境を用いて自社の仮想デスクトップ環境を運用・拡張していくことが可能です。
この「AVDクイックスタートパッケージ」では以前までCitrix CloudとAVDを連携した構成やAVD単体構成を提供していましたが、現在は本サイトで紹介したNerdio ManagerとAVDを連携した構成の提供も開始しています。
まとめ
今回はCTCで取扱を始めたAVDを最適化する「Nerdio Manager」についてのご紹介をしました。Nerdio Managerを利用することで、AVDをより便利に利用できそうだという感覚が少しでも伝わったのであればうれしく思います。
また、そのNerdio Managerを使ったAVD導入サービス「AVDクイックスタートパッケージ」についても簡単にご紹介しました。ご興味頂けたのであれば、AVDクイックスタートパッケージの資料をダウンロード頂ければ幸いです。
第2回以降は、今回挙げたようなNerdio Managerの便利な機能についてより詳しく紹介していきますので、ぜひそちらもご覧ください。
