第2回の記事ではNerdio Managerの機能の一部をAVDと比較しながら簡単に紹介しました。今回はその中でも手間のかかるイメージ管理について深堀して見ていきたいと思います。
AVDでイメージ管理に苦労している方は、この記事を参考にNerdio Managerの導入について検討してみては如何でしょうか。
はじめに
Azure Virtual Desktop(AVD)はセッションホストを作成する際、マーケットプレイスに用意されたWindows 10/11のマシンイメージを利用することが可能です。
しかしながら、Azure Portalで提供されるマシンイメージは英語版のWindows OSをクリーンインストールした状態です。日本の企業で利用するのであれば、日本語版を使いたいのは当然で、さらに、Microsoft 365 AppsやAdobe Reader等、業務で利用するアプリケーションがインストールされた環境が当然のように必要になってきます。
そのため、仮想デスクトップ環境の準備段階で、あらかじめ企業で必要となるアプリケーションのインストールや各種設定変更を行ったマシンをイメージとして保存し、そのカスタムしたメージ(マスターイメージ)からデスクトップを展開するといった運用を行うのが一般的です。
そして、このマスターイメージにはOSやアプリケーションの更新、アプリケーションの追加といったメンテナンスが付きまといます。
運用担当者であれば、このメンテナンスにはできるだけ手間をかけたくないと考えるのが普通ではないでしょうか。
では、ここからはマスターイメージのメンテナンス方法について、AVD、Nerdio Managerそれぞれでどの程度違いがあるのかを見ていきましょう。
Azure Virtual Desktopのマスターイメージ管理とセッションホストへの展開
上図はある1つのマスターイメージを継続的にカスタマイズしていく一般的な流れを図にしたものです。
①
まず、AzureのマーケットプレイスからダウンロードしたWindowsOSイメージをカスタマイズ(日本語化やアプリケーションのインストール)し、マスターVMを作成します。
ここで作成されたマスターVMがその後の更新の基盤となるゴールデンVM(ゴールデンイメージ)としての役割を持つと認識してください。
②~④
①で作成したマスターVMをAVDのホストプールで扱うイメージに直接変換してしまうと、後のカスタマイズに利用できなくなってしまうため、マスターVMからスナップショットを作成し、ディスクの作成、VM作成という操作を実施し、一時VMを作成します。
この一時VMからセッションホストが利用するイメージを作成することになります。
⑤~⑥
作成された一時VMを起動し、OSにログインしてからSysprepコマンドを実行します。Sysprepによって一般化されたVMをキャプチャしてイメージを作成します。このイメージがホストプールで指定されるイメージとなります。
その後、ゴールデンイメージへの変更が必要となった際には、①で作成されたVMに変更を加え、また②~⑥の作業を行っていくことになります。
実際の運用では、これらに加え、イメージのバージョン管理をしていくことも合わせて検討したほうが良いですが、一旦ここでは割愛します。
更新されたイメージの適用
マスターイメージを作成しても、セッションホストが自動的に新しいものに変更されるわけではありません。イメージ更新後は、新しいイメージを元にしたセッションホストになるようにホストプールも更新する必要があります。
主な手順
- セッションホストの追加
新しいイメージを利用してホストプールに新しいセッションホストを追加します。 - セッションの切断
既存セッションホストからユーザーをログアウトさせ、ログインできないようにします。 - セッションホストの削除
既存セッションホストを削除します。
Nerdio Managerでのマスター管理と展開
上図は前述したAVDでのマスターイメージ管理と同様のことをNerdio Managerで実施する場合の流れを表しています。
Nerdio Managerのメニューより「DESKTOP IMAGE」を選択します。
マスターイメージは通常の仮想マシンとして管理されているため、対象VMの電源をONにし、カスタマイズを実施します。実施後は、メニューより「Set as Image」を選択することで、イメージを更新できます。AVDの手順の中の②~⑥の操作をほぼ自動的に行ってくれると思ってよいでしょう。
上図は「Set as Image」を選択した際の詳細画面の一部です。イメージのバージョン管理もここで設定することが可能です。
イメージのメンテナンス時は、Nerdio Manager内からスクリプトを実行して、イメージの更新を図ることも可能です。下図は日本語化と規定言語を日本語に設定している例です。
スクリプトを活用することでOSにログインすることなく設定ができるのは非常に便利です。
この他にも、毎月のWindows Updateの2日後にイメージを自動的に更新し再展開というような自動運用も可能で、運用負荷を大きく低減できるのも魅力です。スクリプトについては別の回で詳しく紹介していく予定です。
更新されたイメージの適用
AVDでは既存のホストプールに更新されたイメージを元にしたセッションホストを追加して古いセッションホストを削除するといった手順を行いましたが、Nerdio Managerではイメージを適用したいホストプールのアクションメニューより「Resize/Re-image」を選択することで、ホストプールを更新します。
「Resize/Re-image」を選択後。表示された詳細設定ウィンドウでは、新しいイメージを選択し、展開します。ログイン中ユーザーへのアラートもこの画面から実行可能です。
また、画面上部のスケジュールタブを選択することで、誰も利用していない夜間にこっそり入れ替えるといった設定も可能となります。
設定後に「Run now」ボタンを押下すると展開が始まります。既存のセッションホスト名も維持しながら展開を行ってくれるので、マシン管理の面でもありがたい配慮をしてくれます。
まとめ
「マスターイメージの更新・展開作業」という一文より考えられる一般的な作業は、OSのカスタマイズとその適用という2点だけです。しかし、AVDではそれを運用として現実的なものにするためには、多くの補助的な作業を手動で実施する必要が発生します。
これに対し、Nerdio Managerの手順は非常に単純で、「機能」として提供されるAVDを「運用」という面でサポートするツールだということが、今回よく認識できたかと思います。
仮想デスクトップ環境では、マスターイメージに対するパッチ適用、アプリケーションのアップデートや追加といった運用が必ず発生します。複雑な手順や時間のかかる作業は運用者への大きな負担となり、問題が発生すれば多くの利用者に迷惑がかかります。
Nerdio Managerのような「運用」を主軸に置いたツールを導入し、そういった問題の発生リスクを低減させることは、AVDを上手に運用していく上でとても大切なことなのです。
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