エンタープライズCMS(*)の導入は、多くの企業にとってデジタル戦略の中核となるプロジェクトです。しかし、その導入プロジェクトは複雑で、成功には入念な計画と実行が求められ、高度なプロジェクトマネジメントが必要不可欠です。CMS導入プロジェクトは、Webサイト刷新、デジタルマーケティングソリューションとの連携、複数のステークホルダー、機能・非機能要件の実現、コンテンツ移行、ユーザー体験の最適化など、幅広い要素を統合する複雑な取り組みです。本記事では、エンタープライズCMS導入プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの重要性と成功のためのポイントを詳しく解説します。
*エンタープライズCMS(以下CMS)
エンタープライズCMSは、大規模組織向けに複数ユーザーがコンテンツを作成・管理・公開できるシステムです。多機能なワークフローやセキュリティが強化されており、企業に合わせたカスタマイズが可能です。代表的なCMSには、Sitecore、Adobe Experience Manager、Drupalがあります。
【エンタープライズCMSを中心とするデジタルマーケティングシステム俯瞰図】
プロジェクトの目的とスコープを明確にする
CMS導入プロジェクトを開始するにあたって、最初に明確にすべきなのはプロジェクトの目的とスコープです。
- 目的:なぜCMSを導入するのか、具体的なビジネス上の目標を明確にすることが重要です。例えば、「サイト運用の効率化」、「パーソナライズされた顧客体験の提供」、「ブランド一貫性の確保」、「多言語サイトの統合管理」、「コスト削減」などの目標を明確にすることが求められます。
- スコープ:プロジェクトの対象範囲を明確に定義します。対象となるWebサイトや機能、対応するデバイスや地域を具体的にリストアップし、スコープ外の内容も明確化します。
明確な目的とスコープの定義は、関係者間の認識のズレを防ぎ、プロジェクトの進行をスムーズにします。
プロジェクトチームの編成と役割分担
CMS導入プロジェクトでは、技術面だけでなく運用面やコンテンツ管理の視点も必要です。そのため、多様なスキルセットを持つチームを編成することが成功の鍵となります。
- プロジェクトマネージャー(PM):全体の進行管理、リソース調整、関係者間のコミュニケーションを担います。
- テクニカルリード:エンタープライズCMSのアーキテクチャ設計やカスタマイズを担当。
- デザインチーム:UI/UX設計とフロントエンド開発を行います。
- コンテンツチーム:コンテンツの移行計画や新規作成を担当。
- 運用・マーケティング担当者:具体的な運用要件やマーケティング機能の要望を整理します。
各チーム・各メンバーの役割を明確にし、責任範囲を定義することで、プロジェクトの混乱を防ぐことができます。PMは各領域のプロフェッショナルを統括する役割です。プロジェクト期間中、各チーム・各メンバーが期待通りに作業し成果が出ているのかどうか、メンバーが働きやすい状況となっているのか、さらに円滑に進めるにはどうすればよいか、テコ入れが必要なのか等の視点で推進ベクトルを補正し、プロジェクトをゴールに向けて正しく前進させることがPMの重要なマインドです。
CMSの特性に応じたプロジェクト計画
CMSは強力な機能を保有する一方で、設計と実装に高度な専門知識を必要とします。そのため、以下のような計画が重要です。
要件定義の徹底
CMS導入プロジェクトでは、要件定義の精度がプロジェクトの成功を左右します。以下の点を確認しましょう。
- 必須機能と優先度
- 外部システムとの連携要件
- パフォーマンスやセキュリティ要件
- プロジェクト期間における有事の際の判断指針・QCD優先度
フェーズごとの進行
一度にすべてを導入しようとするとリスクが高まります。以下のようにフェーズを分けると効果的です。
- CMS基幹機能の実装/主要サイトの移設
- CMS機能拡充/翻訳ソリューション実装/海外サイト追加
- CMS機能拡充/デジタルマーケティングソリューション実装/関係会社サイト追加
リスク管理
CMS導入は、新しい技術の採用や多様な外部システムとの連携、複雑なサイトの実現、既存コンテンツの移行など、様々なリスクを伴います。これらのリスクを早期に特定し、関係者全員で共有のもと緩和策を講じることが重要です。
コミュニケーションと関係者調整
CMS導入プロジェクトには、多くの関係者が関わります。そのため、効果的なコミュニケーションが欠かせません。
- 定例会議の実施:プロジェクトの進捗や課題を共有する場を定期的に設けます。また、プロジェクト進捗上、大きな問題が発生している状況においては、朝会等で、日々の状況を関係各位で共有し、早期是正を試みます。
- ドキュメント管理:プロジェクトに関連する資料を一元管理し、最新情報を全員が共有できるようにします。必要コストとしてBOX・Confluence等のサービスを活用し、更新履歴・共同編集・自動バックアップなどの利便性を確保します。
- エスカレーションルートの明確化:大きな課題が発生した場合に、各ステークホルダの誰に相談するのか、その先のフローを含め事前に定めておきます。
- チケット管理ツールの活用:プロジェクト推進において関係部門・関係会社を跨るタスク・課題の管理が発生します。プロジェクト期間中膨大に発生するタスク・課題の管理においては、Redmine、JIRA等のチケット管理ツールの活用が必須となります。
コンテンツ移行と品質管理
既存のWebサイト・CMSから新CMSへのコンテンツ移行は、緻密な計画と事前検証、品質確認など、労力と時間を要する重要な作業です。また、CMS導入プロジェクトにおいて最もリスクの高い要素となります。このため、本番移行の前に十分な準備を行う必要があります。
- 移行計画の策定:どのコンテンツをどのタイミングで移行するのか、スケジュールを詳細に設定します。タスク概要の洗い出し、関係者の役割、制約事項も整理します。
- 移行検証:想定する方式での移行が可能なのか、問題がある場合、どのような解決方法があるのかをプロジェクト初期段階で実環境を利用し検証します。必要に応じ、暫定的な移行ツールを開発し検証することも視野に入れます。
- コンテンツ検証:コンテンツ移行後、誤字脱字やレイアウト崩れがないかをチェックする仕組み、確認ルールを整えます。
- テスト環境でのリハーサル:移行作業を本番環境で実施する前に、本番データを利用しテスト環境で十分に検証し、本番環境で初めて発生する類の問題を可能な限り事前に抑止します。
運用後のサポート計画
CMS導入後にコンテンツ運用やシステム運用・保守を滞りなく実行するための計画が必要です。運用後の体制、役割、フローを作成しスムーズな運用が行えるように関係各位と合意形成を図ります。
- 運用マニュアルの整備:管理者や運用担当者が業務を行う際のよりどころとなるマニュアルを整備します。
- トレーニングの実施:CMSの使用方法について、関係者へのトレーニングを行います。その際の質問、各種調整事項が発生した際は、これをマニュアルに反映し、常にマニュアルが最新の状態を保ちます。
- 継続的な改善:運用開始後のフィードバックをもとに、システムの改善を続ける仕組みを構築します。
まとめ
CMS導入プロジェクトは、技術的、組織的、そして人的な側面を統合する複雑な取り組みです。この複雑さを管理し、プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトマネジメントが不可欠です。明確な計画、リスク管理、ステークホルダー間の調整、適切なツールの活用を通じて、企業のデジタル戦略を支える基盤を構築できます。
プロジェクトマネジメントを正しく実行することで、企業はCMS導入の目的を達成し、競争力を強化するための確固たる基盤を得ることができるでしょう。
当社は、Webサイト構築・CMS導入・デジタルマーケティング基盤構築において、20年以上にわたる導入実績があります。ここで培ったノウハウ、プロジェクトマネジメント力は我々の「バリュー」です。本領域の導入をお考えの際や、お困りの際は我々にご相談ください。プロフェッショナルとしてご期待にお応えできることをお約束いたします。
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- デジタルマーケティング