今やDXは様々な企業で注目を集めており、取り組み事例が増えています。ただ、これから取り組もうとした場合、どのように進めていけば良いのかと悩む企業も少なくありません。この記事では、DX推進にあたって必要なステップを分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
DXとは
そもそもDXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略した用語です。経済産業省は、2022年9月に改定した「デジタルガバナンス・コード2.0」の中で、DXを以下のように定義づけています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
引用元:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf
ここから分かるのは、単にITシステムやデジタルツールなどを導入するのがDXではないということです。あくまでデータやデジタル技術は、企業のビジネスを根底から変革させ、市場競争で勝つための「手段」にほかなりません。
なぜDXの進め方を知る必要があるのか
DXは現在、あらゆる企業・組織が取り組むべきこととして位置づけられています。ただ、やみくもに推進しても効果を見込めないため、全体的な進め方を知る必要があります。
例えば、DXを推進する初期段階で、今後の進め方をある程度定めておかなければ、推進の方向性がぶれてしまうかもしれません。いつの間にかDXそのものが目的化してしまうおそれもあり、注意が必要です。
一方、DX推進の効果的かつ適切な進め方を認識しておけば、DXによって達成したい目的を明確に定められ、最後までぶれずに取り組めます。
DX推進のために必要な要素
これからDX推進に取り組んでいくにあたって、ポイントをしっかり押さえておくと、より効果を高められるのでおすすめです。ここでは、DXを推進する上で重要となる3要素について解説します。
AIの活用
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表した「DX白書 2023」によると、近年はAI(人工知能)を活かしてDXを進める動きが加速しています。深層学習(ディープラーニング)はAI技術を支える手法で、人間が普段、脳の中で推測している動きをコンピュータ上で再現させるために使われています。
深層学習をもとにAIを活用すれば、膨大なデータを整理し、ビジネスに役立てられるはずです。例えば自動車製造の現場では、3Dプリンタを使って全ての部品を製作し、AIで動くロボットによりそれらの短時間での組み立てを可能にする、といった事例があります。さらにECの倉庫内では、AIロボットが商品の需要予測も踏まえ最短距離で動けるようにするなど、様々な工夫によって最適化されています。
参照元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf P.306~
業務プロセスの改善
既存システムを改修したり、新たなシステムへ置き換えたりする場合は、業務プロセスも併せて見直すことが大切です。
そもそも業務プロセスとは、組織における業務の流れや方法などを指します。業務プロセスによっては、スムーズにデジタルに移行できない場合や、無理にデジタル化を行うことで、かえって業務が非効率になる場合もあります。既存のプロセスでうまくいかない場合は、新しい業務プロセスを検討するなど、幅広い観点で対応しましょう。
社内体制の整備
DX推進は、ある一部の部門や部署だけが取り組んでも効果を生みにくく、全社一丸となって推進していくための体制づくりも重要です。もし現在、部署ごとに別々のシステムを活用しているのであれば、分散したデータを一元化したり、システムを統一させたりしなければなりません。
また、DXを強力に推進できる人材の育成も大きな課題です。IPAの「DX白書 2023」でも、DX推進人材に関する取り組みは次のように説明されています。
まず、人材像を定義し、社内に周知することで明確化します。それに当てはまる人材を社内外で確保すると共に、スキルアップの機会を提供することも大切です。適切に評価すれば人材は定着化するため、社内風土の在り方も検討し変革していきます。
参照元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf P.165
DX推進の人材は、ただITスキルに長けているだけではなく、各部門や部署とスムーズにコミュニケーションを図りながら連携するなど、幅広い視点を持ったマネジメント力も求められます。社内で育成するほか、既存人材の活用や社外から中途採用する方法、コンサルタントといった専門家を招く方法も人気です。
参照元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf P.171
DXの進め方
ここからは、企業がDXを推進する際の大まかな流れについて解説します。踏むべきステップについてあらかじめ理解しておくことで、目的意識を持ってスムーズに遂行できるはずです。
ステップ1. DXを進める目的を決める
どの企業でも、DX推進の重要性は既に認識されているかもしれません。しかし、DXの推進自体が目的になっているケースがよくあるのも事実です。
本来、DXはあくまで手段のひとつであり、既存事業の伸長や新領域の事業拡大などを通じて、市場で優位に立つことがゴールです。そのため、まず「なぜ自社でDXを進めなければならないのか」といった目的を明確化することが大切です。
ステップ2. 社内環境の確認をする
全社でDXを推進するためには、社内の環境や体制づくりも重要です。例えば、具体的な取り組みについて経営層へ説明して同意を得ることはもちろん、ITスキルを持ち、DX推進を主導できる人材を確保することなどが挙げられます。
これから継続的に取り組んでいくことから、DX推進を主に担う部門を新たに設置し、そうした人材を配置するのもおすすめです。
ステップ3. 現状を正確に把握して目標を決める
目的を定め、社内体制を整えるなどの準備ができれば、社内の現状を洗い出し、課題点や老朽化したシステムをピックアップしていきましょう。その際は、自社が持つ技術・人材・ITシステムやツール、データなど様々なリソースを整理することが不可欠です。
また、DXに取り組み成功した企業や、逆に失敗してしまった企業などの事例を取り上げ、それらの要因を分析・調査するのも一案です。
ゴールとなる目標を決め、それまでに必要な中間目標(マイルストーン)を設定すれば、進捗確認も容易になります。
ステップ4. 優先順位を決める
どのようにDXを進めていくのかといった方向性が定まれば、DX推進の対象となりうる業務を一覧化します。全てを一気に取り組むことは困難なため、一覧のうち、どのアクションから進めていくのか、優先順位を決めていきましょう。
ステップ5. 少しずつ業務のデジタル化を進める
DXによって最終的にビジネスを根底から変革することがゴールであったとしても、先にも述べたように、同時に多くの取り組みを進めることは現実的ではありません。できるだけ現場に近く細かな業務から着手し、様子を見ながら進めていきましょう。例えば、会議のペーパーレス化や、承認フローでハンコを廃止することなどがおすすめです。
細かな業務についてデジタル化できれば、組織におけるワークフロー全体をデジタル化するように広げていきます。
ステップ6. PDCAを回す
全社を挙げて少しずつ変革していく際は、PDCAサイクルを回し、必要に応じて改善することも重要なポイントです。社会や市場の状況は刻々と変化しています。DXは一度取り組んで終わりではなく、長期的に取り組んでいくものと捉え、効果検証と改善を繰り返していきましょう。
なお、DXの推進具合を評価するには、IPAが配布している「DX推進指標 自己診断フォーマット」を活用するのがおすすめです。
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
まとめ
企業がDXを推進していく上では、まず目的を定めて社内環境を整え、業務を洗い出し細かな業務からスモールスタートで取り組むと、成功する可能性が高まります。また、長期的な視点を持ち、PDCAサイクルに沿って改善を繰り返すことで効果もアップします。どの領域をデジタル化すれば良いのかアイデアが思い浮かばない場合は、以下の無料ダウンロード資料もぜひ参考にしてみてください。
- カテゴリ:
- デジタルビジネス全般