新型コロナウイルスの影響などを受け、ここ数年今まで以上にデジタル化を進める企業が増えています。この記事ではまず、日本企業におけるデジタル化の現状と、あぶり出された課題について解説します。課題を解決するために大切な3つのポイントも紹介しますので、ぜひ取り組みの参考にしてみてください。
日本におけるデジタル化の現状
独立行政法人「IPA(情報処理推進機構)」が公表している「DX白書2023」によると、日本国内におけるデジタル化やDXの取り組み状況は、決して進んでいるとはいえません。
新型コロナウイルスの流行に伴いテレワークが急速に浸透し、2021年から2022年にかけて、DXに取り組む企業は55.8%から69.3%と大幅に増加しました。ただ、部分的ではなく全社を挙げて実践している割合はまだ少なく、米国の状況と比較すると大きく後れを取っています。
参照元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf P.18
企業がデジタル化を進める上での課題とは
日本の企業がデジタル化を思うように進められない背景には、様々な要因が考えられます。ここでは、IT分野に長けた人材の不足について、深掘りして解説します。
社内にIT領域に精通した人材がいない
長らくアナログな方法で業務を進めてきた場合、デジタル化へのノウハウを蓄積できていないことがよくあります。ITシステムを導入しようとしても、どのシステムにすれば良いかで迷ったり、導入後も使いこなせず、うまく運用できなかったりと、ハードルは高くなりがちです。
IT分野にまつわる知識やスキルを持った人材がいれば、そのような事態は避けられるかもしれません。ただ、そうした人材は一般的にIT企業へ就職するため、本来デジタル化を推進したい企業には集まらない、といった状況です。
IPAの「DX白書2023」によると、DX人材を教育するためには以下のような取り組みが必要とされています。
- 人材像の設定・周知
- 人材の獲得・確保
- キャリア形成・学び
- 評価・定着化
- 企業文化・風土
参照元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf P.165~
つまり、どのような人材像をめざすのかを明確化した上で、社内外から人材を確保し、適切な教育を施すことが大切です。また、新たに評価基準を見直し適切に評価することで、人材の定着化を図れます。そうしたサイクルを繰り返すことで、企業文化として根付くわけです。
しかし、DX人材は単純に「ITスキルに長けている」だけでは不十分であることにも注意しなければなりません。そもそもDXは、市場環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用することで製品やサービス、ビジネスモデル、ひいては企業文化・風土をも根底から変革する取り組みです。社内の各部署を巻き込み、コミュニケーションを図りながら主導できる人材がいなければ、なかなか社内のDXは進まないでしょう。
ITリテラシーを高めるための教育が必要
DX推進の一環として、ITシステムやツールを導入したとしても、それらを正確に運用するためには一定のITリテラシーが必要です。しかし、従業員のITスキルは個人差が大きく、知識や経験が少なければ使いこなすまでには相当の時間がかかることも少なくありません。また、うっかり誤った使い方をした場合は情報漏洩などのリスクも否めず、慎重に教育していくことが大切です。
こうした社員教育には、コストが大きな課題となります。そのため、多くの企業ではITスキルアップに向けた社内研修や、近年よく耳にするリスキリング(学び直し)の機会を持ちにくくなっていると考えられます。
ITシステムの導入や保守にコストがかかる
外部からITシステムを自社に導入するにあたっては、それ自体のコストがかかることも認識しておかなければなりません。導入費用はもちろん、保守や万一何か不具合があった場合の改修費用もしっかり確認しておきましょう。
システムの見直しが必要
ここ数年でDXへ取り組む企業が増えている一方、ただITシステムを導入するだけで終わり、といった企業もよく見られます。システムはあくまで手段であり、本来の目的を見失ってしまうと意味がありません。
自社の課題解決につながっているのかを効果検証したり、定期的に見直した上で、必要に応じてアップデートを行ったりと、導入後も問題意識を持って取り組みを継続していくことが大切です。
情報漏洩のリスクがある
アナログからのデジタル化は利便性や業務効率性が向上する一方で、セキュリティのリスクは増大します。
例えば、IPAが公表している「情報セキュリティ10大脅威 2023」によると、組織に対する主な脅威として「ランサムウェアによる被害」や「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃(サプライチェーン攻撃)」、「標的型攻撃による機密情報の窃取」などが挙げられています。中でも「ランサムウェア」は、ビットコインなどの暗号通貨を使って多くの収入を得られることから、サイバー犯罪として上位に挙がっています。
参照元:https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2023.html
また昨今では、AI(人工知能)を使ったサイバー攻撃の手法も増えてきており、注意が必要です。例えば、システムの脆弱性について分析・学習することで、攻撃する手段を改善していくような仕組みのものなどが挙げられます。
DXを進める中では、こうしたサイバー犯罪の最新情報を常に入手し、普段から万全の対策を打っておくことが不可欠です。
デジタル化の課題を解決する3つのコツ
最後に、企業がスムーズにデジタル化を進めるための大切なポイントについて、3つ解説します。
ITシステムの運用ができる従業員を確保する
まず、ITシステムを導入した場合、その運用を任せられる従業員を確保することです。運用、効果検証、改善のサイクルを繰り返すことで、組織のDX文化は根付いていきます。また、ITシステムに強い人材を育成することで、組織の労働生産性は上がると考えられます。
従業員がITシステムに後ろ向きな場合には 、できるだけ楽しみながら取り組みスキルアップを図れる方法がおすすめです。例えば、従業員が集まれる雑談チャットルームを開設すれば、モチベーションの向上のみならず、ノウハウやナレッジ共有にも役立ちます。
もし、社内での育成に時間やコストをかけられない場合は、外部から採用することも検討すると良いかもしれません。
徹底したセキュリティ対策を行う
サイバー攻撃は年々巧妙化しており、先述したように攻撃側にAIが使われることで、より高度になっていくと想定されます。せっかくデジタル化を進めても、サイバー攻撃を受けて業務が一時ストップしたり、社会的な信用が失墜したりすれば元も子もありません。考え得るセキュリティ対策を徹底的に行い、導入したシステムを滞りなく効果的に運用できるよう、万全の体制を構築しましょう。
ITシステムを運用する時には部門間の足並みをそろえる
ITシステムを運用する際、特定の部署だけが利用しているといった状態では、なかなかDXは進みません。部門や部署の垣根を越え、全社的に運用していくことで改善すべき点が見えやすくなり、より良いシステムに改修できます。
もし、ITリテラシー面で高低差が激しい組織の場合、一気に高度なデジタル化を進めると従業員は困り、逆に生産性が落ちるおそれもあります。そのため、ITシステムを導入するなら、なるべくどの部門・部署でも運用しやすいものを選ぶようにしましょう。その際、なぜデジタル化に取り組むのか、といった目的を共有し、部門間の足並みをそろえることも大事なポイントです。
まとめ
日本企業においてデジタル化の重要性は認識こそされているものの、人材不足やコスト、セキュリティなどのハードルがネックとなり、あまり進んでいないのが現状です。今後ITシステムを導入し運用していくためには、必要な人材を育成ないし採用すること、セキュリティ対策を万全に行い、全社一丸となって取り組んでいくことで、成功の可能性は高まります。ぜひ以下の無料アイデア集も参考にして、DX推進を加速させていきましょう。
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