ETLとELT|
プロセス・おもな違い・データ利活用でのポイント

 2024.08.22  デジタルビジネスシェルパ

データ統合に欠かせない手順に、ETLとELTがあります。どちらも抽出・変換・格納という3つの要素からなりますが、その順序と扱うデータの種類、メリット・デメリット、適しているケースなどが異なります。本記事では、ETLとELTについて、利用目的やプロセスの違いなどを解説します。

ETLとELT|プロセス・おもな違い・データ利活用でのポイント

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ETLとELTそれぞれの利用目的

ETLとELTそれぞれの利用目的

ETLとELTは、どちらもデータ統合の処理方法のことですが、異なるアプローチを取ります。

まずETLは、データを抽出し、変換した後にターゲットシステムに格納する一連のプロセスです。データのマスキングなどを行ってから格納するため、個人情報や自社の機密情報などのセンシティブなデータを扱う際にも適しています。データセキュリティやデータコンプライアンスの維持・向上にもつながります。 ELTを行うための前処理としての利用されることも多くあります。

大容量データの処理にはあまり向いておらず、特定業務用途向けのシステムに対する少量データの加工の用途で使われます。

一方、ELTは、クラウドへの移行に伴ってよく用いられるようになった、ETLよりも新しいプロセスです。データの抽出、格納を先に行ってから、必要に応じて変換するため、ETLよりも処理速度が速いのが特徴です。サイロ化した複数のデータソースを統合させたい場合や、スピード重視で大容量のデータを処理したい場合などに使われています。

具体的なケースは、後ほど解説します。

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ETLとELTそれぞれのプロセス

ETLとELTそれぞれのプロセス

ETLとELTでは、異なるプロセスをたどるため、それぞれにメリットとデメリットがあります。

ETLのプロセス

ETLは、Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)のプロセスを表しています。

ETLではまず、CRMシステムやIoTセンサーなどの様々なデータソースからデータを抽出します。次に、形式の変更や不正確なデータの削除、重複データの削除などによって、抽出したデータを必要な形に変換します。最後に、変換したデータをデータウェアハウス(以下:DWH)などのデスティネーション(最終的な保存場所)へ格納します。構造化データが対象で、一元管理されている企業のデータを抽出して変換したり、新しいデータを加えて既存のデータを強化したりする場合に使用されます。

なお、このプロセスを自動化するための仕組みが、ETLパイプラインです。ETLパイプラインによって、データの抽出、変換、格納という一連の作業が定期的に自動で実行されるようになり、大規模なデータセットの処理を大幅に効率化できます。また、ヒューマンエラーの削減やスケーラビリティの向上、データの整合性の確保などにもつながります。一元管理している企業のデータを取り込んで変換し、追加データで強化する場合などに用いられます。

関連記事:データウェアハウス活用の力~DWHがもたらす業務改革~

ETLのメリット

ETLはデータを変換する際に必要なデータのみを選別できるため、不要なデータを取り込むことがなく、データの肥大化を防げます。このため、データストレージの効率化が図られ、貴重なリソースを節約できます。

また、社内に点在する複数のデータソースを一元化できるため、データの統一性・一貫性を確保しやすくなります。格納前にマスキングや暗号化ができるため、データの保護も可能です。

ETLのデメリット

ETLはあらかじめデータの構造・形式・関係を定義するため、使用するETLツールによっては導入時に時間とコストがかかります。また、ETLツールやSQLを使いこなせる人材も不可欠です。変換のためにインフラを追加する場合、さらにコストがかかることもあります。

格納前にデータを変換することがボトルネックとなり、ELTよりも迅速さに欠けてしまうのもデメリットです。そのことから柔軟性やリアルタイム性が低いため、多角的な分析には向いていません。

ELTのプロセス

ELTは、Extract(抽出)、Load(格納)、Transform(変換)のプロセスを表しています。

ELTでは、まずデータソースから未加工のデータを抽出し、次にDWHやデータレイクに直接格納します。最後に、必要に応じてSQLやPythonなどを用いて格納したデータの変換や加工を行うという流れです。ELTは非構造化データや半構造化データを含むあらゆる形式のデータを柔軟に扱えるので、DWHだけでなく、データレイクに適しています。

大量のデータを扱う場合やデータの整合性を重視する場合、 DWHのようなデスティネーションに格納する前に、 データレイクにデータを一時的に保存してから必要な変換や加工を行うこともあります。この際、ETLツールやデータ統合、SQL、Pythonなどの使い方を習得することが必要です。

ELTのメリット

ELTはデータを直接取り込み、その後に変換するため、リアルタイム性が高く、大量データや大量の同時実行ワークロードを高速処理できるのが利点です。特にクラウド環境でのデータ活用に適しています。

また、ELTは多くのデータ処理作業を同時に進めるのにも適しています。例えばビッグデータ処理フレームワークなどを使用した並列処理を行えるので、大量のデータを短時間で効率的に処理できます。また、ETLに比べて柔軟性・拡張性が高く、 SQLやpython等を用いて大量データの一括処理を高性能な分析処理基盤内部で効率よく処理できるのもメリットです。

ELTのデメリット

一方、ELTはDWHのようなRDBベースのプラットフォームを利用するが前提のため、データは表形式に変換する必要があるため、データ加工に際して一手間かかります。

また、GUIベースの開発には別途ETLツールなどを組み合わせて使用する必要があるため、それらのツールを使いこなせる能力も求められます。

ETLとELTのおもな違いは、データフロー

ETLとELTのおもな違いは、データフロー

ここまで解説した通り、ETLとELTの最大の違いはデータフローです。ETLは抽出→変換→格納、ELTは抽出→格納→変換という異なるプロセスをたどります。変換位置も異なり、ETLは二次処理サーバ、ELTはDWHやデータレイクなどのデスティネーションです。

データフローや変換位置の違いから、データ処理のスピードやシステム負荷も異なります。ETLはデータを変換してから格納するため、デスティネーションへのデータ量が少なくなりデータの品質が事前に確保されますが、変換処理が複雑で時間がかかります。ELTはデータをそのまま格納するため初期の処理スピードが速く大量のデータをすぐに利用できますが、デスティネーションでの変換処理が必要になるため、データ量が増えるとシステム負荷が高くなります。

データ利活用でのポイント

データ利活用でのポイント

ETLとELTはそれぞれメリット・デメリットがあり、特徴も異なります。そのため、データ処理の目的に照らして、適切なほうを選ぶことが大切です。

ETLが適しているケース

データベースエンジニアがいない環境で、データの格納前に機密情報の保護や削除を行いたい場合、ETLツールの利用が非常に適しています。特に顧客データを扱う際には、以下のポイントが重要です。

  • データの持ち出しと同時にマスキング処理が可能
    ETLツールを使用することで、個人情報を安全に取り扱いながら、データの分析や開発に必要な変換をシームレスに行えます。
  • GUIベースの設定で比較的簡単に機密情報の保護・削除が可能
    専門知識がなくても、使いやすいインターフェースを通じてデータの変換・削除を自動化できます。

このように、ETLツールを活用すれば、高いセキュリティを維持しつつ、効率的なデータ管理・運用が可能となります。

ELTが適しているケース

ELTは特にデータの取り込みと処理を効率化する点で優れています。

  • 迅速なデータ取り込みが可能
    迅速にデータを取り込むことで、リアルタイム分析が求められる場合に特に効果的です。
  • 大量のデータ処理が可能
    処理速度はDWHのスケーラビリティに依存し、データ量が増えても基盤をスケールすることで安定した処理パフォーマンスを維持できます。
  • データ量に応じて柔軟に拡張できる
    データベースの容量を柔軟に拡張することで、ビジネスの成長とともにデータキャパシティを適応させることが可能です。
  • サイロ化したデータを一つのプラットフォームに統合する場合
    企業内で分散しているデータを統合し、場合によっては多くのユーザーにアクセスしやすい形に変換できます。

このように、ELTを活用することでデータの取り込みと処理を迅速かつ効率的に行い、ビジネスニーズに対する柔軟なデータ管理を実現することができます。

まとめ

ETLとELT|プロセス・おもな違い・データ利活用でのポイント 02

ETLとELTは、両者ともデータ統合の手法ですが、3つのプロセス(抽出・変換・格納)の順序が異なります。ETLは抽出後に変換を行い、最終的にDWHなどに構造化データを格納します。ELTは、未加工のデータを直接データレイクなどに格納し、必要に応じて変換を行います。それぞれを使い分けることで、データ統合のプロセスを最適化しやすくなります。

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