世界では実にさまざまなクラウドサービスが提供されています。その中で、最も多く利用されているのがやはり「クラウドストレージ」でしょう。文字通り、ストレージをクラウド上に置き、サービスとして提供するものです。
ただし、一口にクラウドストレージと言ってもいくつかの種類がありますし、用途も違います。大切なのはそれぞれの違いを知り、適切なクラウドストレージを選択することです。本稿では、知っているようで意外と知らない、クラウドストレージの用途や種類についてご紹介します。
クラウドストレージとは?広く普及した理由
ストレージとはデータを長期的に保存するための記憶装置であり、従来はこのストレージを構築するためにサーバーを調達し、ソフトウェアをインストールし、ネットワークに接続していました。そのため、1つのストレージを構築するのには多くの時間と費用がかかります。
さらに、バックアップ対策や増え続けるストレージ容量の予測および対策を実施する必要があり、ストレージ運用には想像以上にコストと負担がかかっていたのです。
この問題を解消したのがクラウドストレージです。ストレージがクラウド上(インターネット回線を経由)に置かれているため、サーバーを購入したり、ソフトウェアをインストールしたり、ネットワークに接続する必要がありません。サービスを契約するだけで簡単に利用でき、従来必要だった調達・構築作業が一切不要になります。
また、バックアップ対策を容易にし、増え続けるストレージ量も必要に応じてリソースを追加できるため、運用にかかる負担を大幅に軽減できます。その他、災害対策(Disaster Recovery)なども自然と行えることから、クラウドストレージへの需要は急速に高まり、今では世界中の企業が何らかの形でクラウドストレージを利用しています。
クラウドストレージの種類
クラウドストレージの種類は大きく分けて3つあります。それぞれに特徴や役割が違いますので、「自社に必要なクラウドストレージは何か?」を明確にした上で、適切な種類を選ぶことが大切です。
1.ファイルストレージ
システムによっては、共有ファイルにアクセスしたり、ファイルシステムを必要としたりします。多くの場合はNAS(ネットワーク接続型ストレージ)サーバーによってサービスがサポートされます。
2.オブジェクトストレージ
クラウド上で開発されたシステムの多くは、オブジェクトストレージという膨大かつスケーラビリティの高いストレージによって支えられています。オブジェクトストレージは拡張性と柔軟性を必要とするシステムをゼロから構築するのにベストな環境です。さらに、既存のデータストアを分析、バックアップ、アーカイブ用にインポートすることも可能です。
3.ブロックストレージ
ERPやデータベースシステムなどのエンタープライズシステムの多くは、ホストごとにレイテンシーの低い専用ストレージを必要とします。これはオンプレ環境ではDAS(直接接続ストレージ)やSAN(ストレージエリアネットワーク)に該当し、ブロックストレージは仮想マシンごとに、ハイパフォーマンスを提供します。
クラウドストレージのメリット
では、クラウドストレージを利用することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
低コスト
従来、ストレージを構築するにはサーバー購入やソフトウェアライセンス購入など、必要以上にコストを支払う必要があり、ストレージ費用を圧迫する原因になっていました。クラウドストレージは従量課金体系なので、料金は使ったストレージの分だけ支払います。そのため、コストの最適化を実現し、ストレージ費用を大幅に削減できます。
高い安全性
多くのクラウドストレージ提供事業者は、セキュリティ対策に力を入れています。多くのセキュリティ認証取得と、定期的な監査対応により高い安全性を実現します。クラウドストレージを利用するにあたりセキュリティに不安を感じる方も少なくありませんが、クラウドストレージを利用する方が独自のセキュリティ対策よりも高い安全性を確保できる可能性があります。
高い拡張性
オンプレミスのストレージで容量を拡張したい場合、スケールアップやスケールアウトといった手間と費用のかかる対策が必要です。一方、クラウドストレージは増え続けるデータ容量に応じて、ストレージを簡単に拡張できます。管理画面より拡張するだけなので、手間もなくコストも最適化されます。
高い可用性
クラウドストレージを利用すると、信頼性の高いサービスが複数のアベイラビリティゾーン(地理的・物理的に独立したデータセンター群)で提供されます。状況に応じて海外のアベイラビリティゾーンを選択することで、対災害性を高められるなど、常に高い可用性を維持できます。
高い耐久性
多くのクラウドストレージは自動でデータの複製保存を実施することで、非常に高い耐久性を実現します。オンプレミスでは耐久性を高めるために冗長化構成を取るなど、レプリケーションを独自に構築する必要があるため、クラウドストレージならそこにかかる手間やコストを大幅に削減できます。
迅速なアプリ展開
オンプレミスでストレージを構築する場合、サーバー購入から実際の構築まで数か月を要することがあります。これではアプリケーション開発の現場では開発にかかる時間が長期化してしまいますが、クラウドストレージなら一瞬でアプリケーション開発に必要な環境を整えられます。
まとめ
企業にとって、情報は重要な経営資源です。ITインフラを正しく構築し、データを運用管理することは必須事項と言えるでしょう。オンプレミスのストレージをクラウド化することで、様々なコストを削減しつつ、データ管理における業務効率を最大化できます。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひストレージのクラウド化を検討してみませんか?
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