自社の業務効率化や生産性向上を実現したいと考えているのであれば、プロセスマイニングに取り組むのも1つの手です。業務の無駄を抽出、可視化でき、効率的に生産性の向上を図れます。本記事では、プロセスマイニングの概要やメリット・デメリットについて解説します。
プロセスマイニングとは?
プロセスマイニングとは、業務改善や効率化を目的とした分析手法の1つです。プロセス(Process)は過程や工程を、マイニング(Mining)は採掘、抽出を意味します。
イベントログの可視化により、無駄な業務や改善ポイントの抽出を行う点が特徴です。対象となるログは、操作画面のキャプチャやキーボードの操作ログ、業務システムのイベントログなどが挙げられます。
収集したイベントログを可視化し分析すれば、改善すべき業務の絞り込みができ、効果的な対策を打ち出せます。業務改善の施策を実行したあとも、継続的なモニタリングと効果検証、改善のサイクルを繰り返すことで、さらなる業務のブラッシュアップが可能です。
なお、プロセスマイニングはツールを用いて取り組むのが一般的です。ツールには、ビジネスでよく用いられるメジャーなシステムと連携できる製品もあり、イベントログのスムーズな収集と分析を行えます。
プロセスマイニングが重要な役割を持つ理由とは?
プロセスマイニングに注目が集まっている理由として、日本を取り巻く特有の状況が挙げられます。日本は少子高齢化が進み、労働人口の減少にも歯止めがききません。景気も一向に上向く気配が見えず、かつてのように事業へ莫大な投資を行うのも難しくなりました。
このような状況ゆえに、企業は業務効率化を進め生産性の向上に取り組む必要があります。業務を効率的に遂行できる環境が整えば、生産性が高まり、少ない人員でこれまでと同等、もしくはそれ以上の成果が期待できます。限られたリソースで利益の最大化を実現できる組織づくりには、業務効率化が不可欠であり、そのためにプロセスマイニングのような手法が必要です。
生産性向上の必要性は、多くの企業が理解していました。ただ、実際に生産性向上に取り組むとなれば、調査や実証など少なからずリソースが発生するため、余力のない企業にはなかなか取り組めなかったのが実態です。
一方、プロセスマイニングであれば、従来よりも低コストで業務効率化を進められるため、注目を集めています。
プロセスマイニングのメリット・デメリット
プロセスマイニングの実施によって、業務効率化に伴う生産性の向上効果が期待できます。一方で、短期的な成果が期待できない、導入するツールによっては大きなコストが発生する、といったデメリットがあることも理解しておきましょう。
プロセスマイニングのメリット
プロセスマイニングのメリットは、業務プロセスを可視化できスムーズに業務効率化を実現できる点です。しかも、従来のように担当者へのヒアリング調査や資料の作成などを行う必要もありません。ツールがイベントログを機械的に収集するため、抜けや漏れもなく、低コストで業務の可視化や効率化が可能です。
顧客満足度の向上につながるのもメリットです。業務効率化が実現すれば、業務品質がこれまでよりも向上するため、さらに素晴らしいサービスを顧客へ提供できます。従来よりも短時間で問い合わせに対応できたり、納期を短縮したりといったことが可能となり、顧客の利便性及び満足度を向上させられます。
また、プロセスマイニングは働き方改革の推進にも有効です。業務の無駄や問題点を抽出し、効果的に改善を進められるため、個々の従業員にかかる負担も軽減できます。業務が効率化すれば無駄な残業もなくなり、労働時間の短縮にもつながります。
働き方改革が進めば、従業員が快適に働ける環境が整い、採用力の強化や離職率の低下につながる点も魅力です。
プロセスマイニングのデメリット
プロセスマイニングのデメリットは、中長期的な視点で取り組む必要がある点です。この手法は魔法のような業務改善手法ではありません。即効性は期待できず、成果が目に見えるまでに一定の期間が求められます。短期的な成果を求めるのではなく、長い目で取り組みましょう。
低コストで業務効率化や生産性の向上を実現できるものの、プロセスマイニングの実行にはツールが必要です。現在では、様々なツールがリリースされており、高価な製品もあります。導入するツールによっては高額な費用が発生する点には注意が必要です。
また、プロセスマイニングに取り組むにあたっては、一定の手間を要します。ツールの導入から設定、イベントログの収集、分析、効果検証、改善などにリソースを割かなければなりません。成果を高めるにはPDCAサイクルを回しつつ改善を繰り返す必要があるため、必然的に多くの工数が発生します。
プロセスマイニングの仕組み
1. ログを収集する
まず行うのが、業務で使用しているツールやシステムからの、いつ、誰が、何をしたかなどの記録にあたるログの収集です。そして、収集したログから、プロセスマイニングに必要な3つの要素であるケースID、タイムスタンプ、アクティビティといった情報を含むイベントログを作成します。なお、使用するプロセスマイニングツールによって収集できるログが異なるため、導入前にきちんとチェックしておきましょう。
2. プロセスの内容を精査する
抽出した業務プロセスの内容を精査し、改善できるポイントを見つけ出すフェーズです。プロセスマイニングツールを用いてイベントログをフローチャート化し、業務の見える化を図ります。
ルールから逸脱した業務の取り組み方をしていないか、緊急時にはどのような対応をしているのか、といった部分をチェックしましょう。見える化された取り組み方を精査することにより、対応に誤りがあり、無駄に作業時間が長くなっているポイントを発見できる可能性があります。どのような対応をしていたかだけでなく、なぜそのアクションが必要になったのか、といった部分の確認も必要です。
無駄な工数が多く発生している業務プロセスも抽出しましょう。なぜ工数がかかりすぎているのか、業務量に対してリソースは適切に分配されているのかも確認します。
3. 見える化と優先順位付けを行う
前ステップによって、問題がある業務プロセスが抽出できました。改善すべき業務が少なければ良いのですが、問題のある業務が膨大ともなれば、改善の取り組みを一度に進めるのは困難です。
そこで、まずは抽出した業務への優先順位付けを行いましょう。改善によって大きな業務効率化が期待できるものや、すぐにでも取り組みを始める必要があるものなどを優先するのが基本です。
4. PDCAを回して結果を追跡する
プロセスマイニングは、あくまで業務効率化と生産性向上を実現するための仕組みです。イベントログの収集と可視化、優先順位付けで終わるのではなく、改善に取り組みつつ継続的なモニタリングと効果検証が求められます。
大切なのは、PDCAサイクルを回しながら結果を追跡することです。計画と実行、測定、改善のサイクルを意識せずに取り組んでも、本当に成果が現れているのか、どの程度改善されたのかといったことがわからず、意味のない取り組みを続けてしまうおそれもあります。PDCAサイクルを回しつつ、さらなる業務改善ができないか、もっと効率化できないかを考えていきましょう。
まとめ
今後、日本の労働人口は減少の一途をたどると考えられ、多くの企業が人材難に陥ると予測できます。このような事態に対処するには、生産性向上への取り組みが欠かせません。そのためには、プロセスマイニングによる業務の可視化や分析が必須です。
データの利活用による生産性向上や、自動化による業務効率化などを実現できるソリューションサービスもあります。例えばCTCが提供する、業務改革型DXのDIGITAL SHIFTは、最適なクラウドシステムの提供や、データ連携・加工の自動化を通して、業務効率化が可能です。このようなサービスを利用すれば、効率的な生産性向上が実現できます。
また、RPAの導入も生産性向上に有効です。プロセスマイニングで効率化できる業務を発見し、RPAで業務を自動化できれば生産性の向上につながります。プロセスマイニングを始めるのなら、RPAの導入もセットで考えると良いかもしれません。
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