2019年に施行された働き方改革関連法や2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスなどの影響も相まって、国内ではワークスタイルの抜本的な変革が求められています。そこで重要課題となるのが新しい働き方の確立です。本記事では、ニューノーマル時代の新しい働き方のメリットやデメリットについて解説します。
新しい働き方とは?
今求められる「新しい働き方」とは、ICTの戦略的活用によって先進的なワークスタイルを確立し、分散型社会の実現やワークエンゲージメントの総合的な向上を目指す働き方です。
その基盤となる概念として、WAF(Work-From-Anywhere)があります。このWAFとは、業務に対するパフォーマンスを発揮できる環境であれば、オフィスや自宅などの制約にとらわれることなくカフェや図書館、公共施設などの好みに応じた場所で働けるワークスタイルです。
他にも余暇を楽しみながら働くワーケーション(ワーク+バケーション)や、人材の多様性を活かすダイバーシティ経営、職務内容に基づいて人材を採用するジョブ型雇用、週休3日制、副業や兼業のなども、新しい働き方を確立する上で重要な仕組みとなります。
また、2019年4月に施行された働き方改革関連法により、2023年4月から中小企業の時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられました。自己犠牲的な長時間労働を美徳とする古い企業風土の変革も新しい働き方を推進する上で欠かせない基盤となります。バーチャルオフィスの活用やウェルビーイングに配慮した労働環境など、オフィスの在り方そのものの変革も重要な課題です。
新しい働き方の推進が必要になった背景
総務省統計局の調査によると、2023年5月1日時点における国内の総人口は1億2,450万人(※1)で、2008年の1億2,808万人(※2)をピークに下降の一途を辿っているのが現状です。さらに総務省が2022年9月に公表したデータでは、国内の総人口に占める高齢者の割合は29.1%(※3)となっており、これは世界で最も高い水準となっています。
少子高齢化の進展と生産年齢人口の減少に伴って人材不足が深刻化している今、労働生産性の向上など目的に、ICTの戦略的活用による新しい働き方の確立が国家レベルで求められています。
また、国内では人口が三大都市圏に集中しており、震災や感染症の影響で一極集中型都市のリスクが露呈しています。新しい働き方の推進は、こうした都市部への人口集中を是正するソリューションとしても注目されています。時間や場所といった制約にしばられないワークスタイルが確立できれば、首都圏に住む優位性が低下し、地方分散型の活力ある社会の実現が期待できます。
(※1)参照元:人口推計-2023年(令和5年)5月報-(p.1)|総務省統計局
(※2)参照元:統計トピックスNo.119 統計が語る平成のあゆみ(1.人口)|総務省統計局
(※3)参照元:統計からみた我が国の高齢者(p.1)|総務省
新しい働き方を取り入れるメリット
優秀な人材を確保できる
WAFやワーケーションなどを体系化できれば、オフィス勤務や在宅勤務といった従来の働き方にこだわる必要がなくなります。こうしたニューノーマル時代に即した先進的なワークスタイルを確立することは、企業ブランドの向上につながり、そして自社の理念やビジョンに共感する優秀な人材の確保にも大きく寄与します。加えて、柔軟で働きやすい環境が整備されることで、従業員満足度の向上や定着率の改善が期待できます。
ワークライフバランスを整えられる
企業にとって人材は貴重な経営資源であり、従業員のパフォーマンス向上はマネジメントにおける重要課題のひとつです。先進的で働きやすい労働環境の整備は、ワークライフバランスの充実につながり、従業員のロイヤルティやエンゲージメントの総合的な向上が期待できます。またこうした人材のモチベーションや企業に対する貢献意識の向上は、離職率の改善につながる点も大きなメリットです。
コスト削減につながる
新しい働き方の実現によって得られるメリットのひとつがオフィスコストの削減です。リモート型の労働環境を整備できればオフィススペースを縮小できると共に、デスクやチェア、文具といったオフィス用品の購入費用なども削減できます。また、水道光熱費や通信費といった固定費の削減にもつながり、さらに従業員の制服や通勤手当などの支給も不要になるため大幅なコスト削減が可能です。
一極集中を是正できる
先述したように国内では三大都市圏に人口が集中しており、都市部の過密化による感染症や自然災害リスクの増大、そして地方の過疎化と税収減少といった問題が懸念されています。ICTの戦略的活用によって働く場所の完全自由化を実現することは、分散型社会の実現と地方創生の推進にもつながります。首都圏の企業に属しながら物価の安価な地方で働いたり、観光地で余暇を楽しみながら働くワーケーションを推進したりできるため、都市部への一極集中を是正できる可能性が高まります。
新しい働き方を取り入れる際の注意点
新しい働き方は労働力不足の解消や都市部への一極集中の是正、分散型社会の実現などのメリットをもたらすものの、いくつかの懸念事項も存在します。特に注意すべきポイントして挙げられるのが以下の3点です。
機密情報漏洩のリスクがあがる
新しい働き方では基本的にクラウドコンピューティングを基盤とするITインフラを構築し、グループウェアやコラボレーションツールを活用して社内外でのコミュニケーションを図ります。そうしたリモート型の労働環境では、複数のユーザーがパブリック環境でリソースを共有するため、個人情報や顧客情報、製品開発情報などの取り扱いに関して注意が必要です。業務や部署によっては、従来の境界防御型モデルでは安全性の担保が困難となるため、シングルサインオンや多要素認証、エンドポイントセキュリティといったゼロトラストモデルに基づくセキュリティ環境の確立が求められます。
コミュニケーションが減る
WAFやワーケーションの推進によって多様な働き方を実現できれば、従業員満足度の総合的な向上が期待できるものの、組織内のコミュニケーションが希薄化するというデメリットがあります。リモート型の労働環境では従業員同士の直接的なやり取りが減少するため、情報共有や意思伝達の遅れによって労働生産性の低下を招く要因になりかねません。また従業員の業績貢献度や勤務態度を可視化しにくくなるため、人的資源の適切なマネジメントが困難です。そのため、いかにしてオンライン環境でコミュニケーション機会を創出するかが重要な課題となります。
DX推進を意識する
新しい働き方の目的はデジタル技術の活用によるワークスタイルの抜本的な変革です。これらはDX推進に本質的な目的のひとつでもあり、国内の様々な分野で重要課題となっています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のDX白書2023(※4)では、DXに取り組んでいる割合は8割を超えています。特に、その中でも大企業は9割以上のほとんどの企業がDXに取り組んでいることが同資料からわかります。しかし、実際にDXの成果が出たとしているのは約6割弱とされています。つまり、現状はDXに取り組みつつも、成果は出せていない企業が一定数いるということです。
リモートワークやテレワークのみではなく、ハイブリットワークやバーチャルオフィスなどのさらなる新しい働き方の確立は、DX推進および会社の体制の抜本的な変革に繋がるでしょう。ただし、新しい働き方の導入は手段であり目的ではありません。あくまでその先にDX、また経営変革が目的としてあることを意識して取り入れましょう。
(※4)参照元:DX白書2023(p.10)|総務省
まとめ
新しい働き方は、デジタル技術の戦略的活用によって先進的なワークスタイルを確立するとともに 、ワークエンゲージメントの向上を目的とする働き方です。時間や場所などの制約にしばられない働き方を確立することで、少子高齢化に伴う人材不足や都市圏への人口集中など、日本が抱える諸問題の解決につながるとも期待されています。
新しい働き方の具体的なメリットとしては、優秀な人材の確保、ワークライフバランスの充実、コスト削減、一極集中の是正などが挙げられます。ただし、セキュリティ対策やコミュニケーションの希薄化といった懸念事項もあるため、こうした課題の解決に寄与するソリューションが必要です。
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