企業の社内研修や教育機関において、VRを活用するケースが増えています。
VRを用いることで現実ではできない体験をしたり、座学だけでは伝えきれない現場の臨場感やノウハウを伝えたりすることができます。
本記事では、教育用VRコンテンツを導入する背景やVR活用のメリット・デメリット、教育や研修にVRを活用した事例について紹介します。
1. 教育用VRコンテンツとは?
近年、教育現場や研修現場にVRを活用する事例が増えてきています。
VRとは「Virtual Reality」の略で、人工現実感と訳されます。本来存在しえないものをあたかも感じる感覚のことを指し、この感覚を体験させるコンテンツをVRコンテンツと呼びます。
VRでは仮想空間上に現実の空間を再現することにより、現実では物理的に体験の難しい現象を視聴者に体験させることができます。この特性は、ドキュメントなどでは伝えづらいノウハウを伝えたり、現実では体験できない事故事例を体験して危険行動を学んだりするのに適しています。
企業などの研修にVRの導入が増えているのは、この特性により、従来のドキュメントや2D動画だけではできなかった経験そのものの伝達が期待されているためです。
また、高機能なVRデバイスが入手しやすくなったことも理由に挙げられます。
VRコンテンツを実装するデバイスには、様々な種類があります。スマホやタブレットで360度の動画を楽しむライトなものから、部屋の隅にセンサを配備し専用のHMDとコントローラを利用して、仮想空間上で複数人がリアルタイムで交流するヘビーなものまで、利用用途に合わせて多種多様なデバイスが存在します。
その中でも現在主流なのはスタンドアロン型のHMDです。PCとの接続が不要で、4Kの解像度を有するHMDは、現在では家電量販店でも入手できます。
各メーカーから一斉にHMDが発売されたVR元年を経て、一部の企業で導入されていたVRが、現在は手軽に導入できるようになりました。社内教育にスマホやタブレットを導入され研修の方法が変わったように、HMDが導入され仮想空間上で現実と同等の訓練を行うのが当たり前になる日が近いかもしれません。
2. 教育用VRコンテンツの導入背景
企業や教育機関が教育用のVRコンテンツを導入する背景には、以下のような理由があります。
DXの取り組みの一環としての検証作業
DXの取り組みの中で最新技術のVRを取り組む企業が増えています。効果検証を行う上でのポイントとしては、VRに置き換えるのが適切な教育が何かを見定めることです。VRはその特性上体験させることが重要となるため、トップダウン式に現場でやらざるを得ない状況からスタートすると、不適切な内容をコンテンツ化してしまう可能性があります。例えば、現実でどこでもできてしまうような紙への記入作業などを学ばせるコンテンツは適切ではありません。VRを適用する業務・作業は何かを見定め、従来の教育とVRを併用することが重要です。
熟練者・機材の不足
専門性の高い知識・技術を学ぶためには現場で実機を触ることが必須となります。しかし、新人・若手がマニュアルを見ただけで熟練者のように作業をすることは難しく、熟練者が現場に付き添うことが必要になるケースが多いです。熟練者の数は少なく、通常業務に加え、新人・若手を教育することとなり負荷が高まります。こういった状況を改善するための手段としてVRが導入されることがあります。
また、実際に業務に使う機材が希少なためVRで再現したいというケースも多くみられます。機材が高価なため訓練用に購入できない、既に製造終了しているなど、物理的に訓練を行うことが難しい場合です。ものにもよりますが、VRであれば1億円を超える機材を数千万円ほどで仮想空間上に再現することができます。また、どこにでも持ち運びができるため利便性も高まります。
安全教育の必要性
事故の多発や、重大事故が発生したためVRの教育コンテンツを導入するケースも多くみられます。業務上の事故は実際に経験するわけにはいけませんが、VRであれば安全に体験可能です。事故の多くは簡単な見落としや、慣れによる手順の簡略化、イレギュラーな対応が重なった時に起こることが多く、事前にどういうときに何が起こるのかを体験しておくことは、ドキュメントなどで情報だけをインプットするよりも効果的です。
3. 教育用VRコンテンツの事例
実際に企業で導入されている教育用VRコンテンツについてご紹介します。
■安全教育用VR
「工場内作業レクチャー」
- 工場内における危険作業予防や、稼働機械の挙動確認が体験できます。
- 現実では体験できない事故を体験できます。
■医療教育用VRコンテンツ
「救命講習トレーニング」
- 機材の操作方法や、被験者の状態確認方法など、詳細な手順を実際のシチュエーションで学習できます。
- 資料や動画では見落としがちな現実の視野範囲での注意ポイントを確認できます。
■職業別トレーニング用VRコンテンツ
「飲食店作業トレーニング」
- 実際に飲食店で仕込みを行う際の手順や、仕込み内容について主観で体験できます。
- 狭い調理場での効率的な動き方など、座学だけでは習熟が難しい作業を反復確認できます。
4. 教育にVRを導入するメリットや効果
事例の通りVRコンテンツは業界/業種を問わず活用現場があらゆる場所に存在します。
しかし、すべての教育がVRに適しているわけではありません。VRのメリット・デメリットを理解し、研修の必要な部分だけをVRコンテンツで置き換えることが重要です。
VRを教育/研修に活用した場合のメリットとしては、下記が挙げられます。
参照元:企業におけるVRの教育利用に関する調査報告書
- 教育内容をVRコンテンツ化することで、何度でも練習をすることができるようになる。
- VR空間内での行動などをデータ化、実施内容を振り返ることができる。
- 危険な状況や緊急事態など、再現の難しい状況での教育をVR内で体験できる。
- 講師や先輩の指導内容の質に左右されずに、統一された教育を行うことができる。
- 教育や研修に必要となる交通費や機材費などを削減することができる。
5. 教育にVRを導入するデメリット
一方、VRを導入することのデメリットとしては下記が挙げられます。
参照元:企業におけるVRの教育利用に関する調査報告書
- 開発費用が高い。
- VR機器の導入やセッティングなどが難しい。
- VR酔いなどの関係で長時間の利用が難しい。
このように、VRを研修/教育コンテンツとして活用していく上では費用や運用面での
不安点が見られます。
6. 教育にVRを導入するためのツール
前述したデメリットの中でも、VRの導入コストは特に企業を悩ませる問題です。VRコンテンツ開発には専門的なツールを使う必要があるため、外注するケースがほとんどです。しかし外注をする場合は、コンテンツの撮影やレビューなどに時間がかかります。また納品後に修正が必要になると、その都度費用も発生します。3DモデルをベースのVRコンテンツ開発であれば一本数百万円程の費用がかかり、決して安くありません。
こういったコスト面の悩みを解決するためのツールとして、汎用のVRコンテンツや、VRの自主制作パッケージが販売されています。個別開発に比べるとクオリティが下がってしまう可能性はありますが、コンテンツを量産したい、手早くVRコンテンツを導入したい、検証のためにまずは使ってみたいという方々に向いています。
https://www.ctc-g.co.jp/solutions/fastvr/
7. まとめ
HMDが入手しやすくなったことにより、教育にVRを導入する企業・教育機関が増えています。VRの導入で、従来の研修ではできなかった事故体験や、技術伝承ができるようになります。教育用VRコンテンツを作るにあたっては、VRの特性を理解し、適切な内容をVR化することが重要です。汎用コンテンツやVRの自主制作ツールの登場により、VR導入のハードルが下がりつつあります。
寄稿:クリーク・アンド・リバー社
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