CDO(最高デジタル責任者)とは?
期待される役割や設置のメリットを解説

 2022.07.06  2024.03.22

DXをはじめ、ICT活用がビジネスの成功にとって本質的に不可欠になってきている昨今、CDO(最高デジタル責任者)の重要性は日増しに高まっています。しかし、CDOは日本ではまだ馴染みの少ない役職のため、どのような役割なのか知らない人も多いことでしょう。そこで本記事では、CDOという役職について具体的に解説します。

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CDO(Chief Digital Officer)とは?

CDOとは「Chief Digital Officer」の略称で、日本語では「最高デジタル責任者」と表現される役職です。組織階級としては、CDOはデジタル部門の責任者、あるいはさらに上層の経営層の一人に当たります。

組織におけるCDOの役割は、デジタル技術の導入によって、「ビジネスチャンス・収益源・顧客サービス・業務プロセスを、新たに生み出すこと」です。これは、例えば紙資料をデジタル化(ペーパーレス化)するという比較的平凡なものから、事業部全体の再編成という大規模なものまで、あらゆる形態が考えられます。
こうしたCDOは、昨今注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を、責任を持って遂行していく役割も、当然担っています。

もうひとつのCDO(Chief Data Officer)

CDOは「Chief Data Officer」を指すこともあります。これは日本語で「最高データ責任者」を指す役職です。最高データ責任者は、データ管理およびデータ分析に関する戦略を定義し、「データの品質・セキュリティ・コンプライアンス・ガバナンス」の統括を担います。

2つのCDOを比較すると、最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)が「デジタルビジネス戦略の顔役」という外向きの性質を持っているのに対して、最高データ責任者は「データ部門の統括者」という内向きの性質を持っています。

ただし、どちらのCDOも2010年代以降に広がってきた比較的新しい役職であるため、職務内容や人材配置に関して、基準がまだ確立していないのが現状です。
例えばDX推進においては、データ活用は核心的要素です。これを推進する際には、最高データ責任者も、DXを牽引していく存在として、企業への貢献が強く求められることもあります。こうした場合で、最高データ責任者は、最高デジタル責任者と同じような役割を担うことになります。

上記のような理由から、本稿では「最高デジタル責任者」「最高データ責任者」の両方を指してCDOの語を使用します。また、どちらかにしか当てはまらない事柄を説明するときは、その旨を記載します。

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CDOと類語の違い

CDOの類語として、CIO・CTO・CEOが挙げられます。特にCIOとCTOは共に、デジタルと不可分な役職なため、CDOとの違いが不明瞭になりがちです。ただ、CDOとCIO・CTO・CEOとは、以下の点で明らかに異なります。

CDOとCIO(最高情報責任者)の違い

CIOは「Chief Information Officer」の略で、日本語では「最高情報責任者」を意味します。CIOの役割は、企業におけるITサービスやテクノロジーの管理・導入・提供を監督し、IT環境が効果的に機能するよう、自社のビジネスをサポートすることです。

CDOとCIOの違いとしては、CDOが新しいデジタルビジネスモデルの推進者として「部門横断的あるいは対外的な役割」を求められるのに対し、CIOは基本的に「IT内の人材・業務プロセス・テクノロジー、などの監督者」であることです。したがって、CIOがDXに関わるとしても、「ITの刷新などによる業務効率化」といった手堅い戦略に落ち着く傾向があるようです。

こうした傾向から、CDOがまさに変革にコミットメントした役割を持つのに対し、CIOは既存システムの維持継続を担うという指摘もあります。この2者の働きにより、企業は「急速な技術変化」と「現在のビジネスの継続性」との間でバランスを保てます。

CDOとCTO(最高技術責任者)の違い

CTOは「Chief Technology Officer」の略で、日本語では「最高技術責任者」と訳されます。CTOは、製品の研究開発や技術投資など組織のテクノロジーを担う統括者です。例えば、開発の方針を決めたり、エンジニアの雇用・育成方針を決めたりするのもCTOの役割になります。CTOの役割は、CIOと非常に似ていることが多く、組織によっては、この役割が部分的に、または完全に重なっている場合もあります。

CDOとCTOの違いとしては、CTOが「技術面での責任者」としてよりエンジニアサイドの役職であるのに対し、CDOは新しいビジネスモデルや新サービスの創出といった「経営者目線」が求められる役職であることです。
一方でとはいえ 、先述のようにCDOはまだ登場して間もない役職である上、組織構造は企業によってさまざまです。2つのCDOに加え、CIO・CTOの棲み分けをせずに、1人が兼務しているような場合もあることでしょう。

CDOとCEO(最高経営責任者)の違い

先の2つと比べ、CDOとCEOの違いはより明白です。CEOとは「Chief Executive Officer」の略で「最高経営責任者」と訳されます。CEOは文字通り、「経営のトップ」を担う役職であり、CDOの仕事は、CEOの仕事をデジタル面での施策によってサポートすることです。CDOはCEOの信任を受けて、その職務を遂行することになります。

CDOが注目される背景

CDOはここ10年ほどの間に米国企業を中心に設置が広がっている役職です。その背景となっている重要な理由は以下です。

デジタル技術を活用したサービスの創出

2000年代以降、インターネットおよびスマートフォンの普及によって、デジタル技術を活用したサービスは拡大の一途をたどっています。旧来の産業を押しのけるように音楽や動画のサブスクサービスが台頭してきたように、「最新のデジタル技術を活かして新しいサービスを創出すること」がビジネスの大きな成功を生むようになっているのです。

一方でとはいえ 、デジタル技術を使って商業的な成功を収めるには、「どのようなことがデジタルで可能なのか」という技術面での知見と、「どのようなデジタルサービスを顧客は求めているのか」という経営者的な視点の両方を持っている必要があります。そこで、その両方を兼ね備え、デジタル施策を企業全体で推進するためのリーダーとしてCDOが必要とされるようになったのです。

社内組織を横断したデータ活用

昨今は、社内組織を横断したデータ活用がますます重要になってきています。これも、CDOが必要とされる理由です。

新ビジネスを創出するためには、先進的な情報システムを活用し、データドリブンな意志決定をしていくことが必要です。そのため、そうしたデータ活用を担うトップ人材を、「CEO直属」という立場のCDOに着任させる企業が多くなっています。CDOはこうした背景の下で、より自由で活発なデータ活用を促していける全社的・組織横断的な環境作りを、強力に牽引していきます。

DXを推進できるリーダーの必要性

DXを推進できるリーダーが強く必要とされていることもCDOの設置が広がっている理由です。DXを「デジタルを活用した新規ビジネスの創出」「組織横断的なデータ活用」などとして具体化していくときには、多くの場合、企業の組織構造やビジネスモデルを変革しなくてはなりません。

こうした大掛かりな改革を実行するには、やはり「強い権限を有するリーダー」が経営サイドに存在する必要があります。CDOにこうした強力なリーダーシップを発揮してもらい、既存構造に変革を起こしてもらうことでこそ、本当のDX推進が実現するのです。

機密情報漏えいやサイバー攻撃に対応するセキュリティ強化の必要性

昨今では、機密情報の漏えい・サイバー攻撃などへの備えとして、セキュリティ対策の重要性が非常に高まっています。これらの対応は、特に「最高データ責任者」としてのCDOに求められます。

セキュリティの高い大企業も含め、顧客の個人情報を流出させてしまったり、サイバー攻撃の被害を受けてしまったりしたケースが後を絶ちません。こうした被害を抑えるためには、「強固なデータセキュリティおよびガバナンス体制を全社的に整備すること」が不可欠です。こうしたセキュアな体制を構築するために、組織のデータを司るCDOが求められているのです。

CDOに求められる役割

具体的には、以下の役割がCDOに求められます。

データの探索、収集、保管の監督

第一にCDOの仕事は、「ビジネスに必要なデータを自社内に蓄積していく」という仕事です。
企業が施策を効果的に実行するには、社内・社外からさまざまなデータを集める必要があります。そこでCDOには、(自身も含め)経営陣の策定した事業戦略を深く理解し、「それを実現するために必要となるデータ」をまずは自分で割り出します。その上で、データチームにそれら関連データを適切に探索・収集・保管するように監督しなければなりません。

データ提供の統制

企業によっては、自社が収集したデータや、分析・加工したインサイトを他社に提供したり販売することがあります。しかしそうした提供・販売データの中には、個人情報など、万全に保護すべきデータが含まれていることもあります。したがって提供・販売時には、プライバシー・セキュリティについて徹底的に配慮しなくてはなりません。
こうした配慮は、CDOが責任を持って実現させる必要があります。例えばCDOは、該当データがプライバシーを保護された状態でやり取りされるよう、提供・販売プロセスを統括します。

デジタルによる企業価値の再創造

CDOの本質的な役割は「デジタルによって企業価値を刷新していくこと」です。つまりCDOは「DXの推進者」です。
部門単位でのペーパーレス化のような小規模なDXではなく、デジタルの力によって「部門横断的にビジネスプロセスを変革する」といった本格的なDX推進においてこそ、CDOは執行力を発揮します。したがってCDOには、優れた問題解決能力や変化への抵抗を突破するための「チェンジマネージメント能力」が大いに期待されます。
こうしてCDOは、データを十二分に活用できるデジタル環境を構築・維持します。それにより自社を絶えず、現代や将来の社会により適合する形態として作り変えていくことを目指すのです。

デジタルマーケティングの推進

ICTが急速に進化している現在、CDOは顧客の動向に目を凝らし、「どのチャネルが顧客と接点をつくるのに有効なのか」「自社のチャネルのどこに弱点があるのか」を考え続けなければなりません。その考えに基づき、例えば「最新のオンラインサービス立ち上げ策・各種顧客管理ツールの導入策」などの必要な施策を、積極的に打ち出します

CDOには、上記のような方法で、デジタルマーケティングを牽引していくことが求められます。そのためには、経営側の視点はもちろんのこと、全社的な調整力も不可欠です。つまりCDOには「各部門間の調整役」のような役割も期待されます。

デジタルを活用したビジネスモデルの考案

CDOは、社内状況を管理するだけではなく、社外へ向けて新たなビジネスモデルを提示する役割もこなします。「デジタルを活用することで、顧客ニーズや社会的必要性に応える」新規ビジネスモデルについて、具体的に考案しなくてはなりません。
したがってCDOには、自分や自社が保有するデジタルスキルを、「顧客ニーズを満たすようなビジネスモデル」へ昇華させる発想力が求められます。

また、新しい事業展開を進めていく際には、社内だけでなく、社外の組織・人材との連携も必要になってくるでしょう。そのためCDOとなる人物には、新しいビジネスモデルを魅力的に紹介して社外を巻き込むような、「名プレゼンター」としての役割も期待されます。それにより、CDO自身や自社の人脈を広げつつ、社内外をまたぐ実務的なネットワークを組織します。

CDOに必要なスキル・資質とは

上記の役割の多さからもわかるように、CDOには非常にさまざまなスキルや資質が求められます。

第一に重要になるのは、ICTの知識とスキルです。DXを推進するには、「そもそもどのようなデジタル技術があるのか、そしてデジタル技術でどのようなことが可能になるのか」を幅広く知っていなければなりません。ICTはすさまじい速さで進歩していくので、情報をどんどん更新していくように知識への貪欲さや、頭のやわらかさも重要になってくるでしょう。

第二に重要になるのは、組織のマネージメント層としての資質です。CDOは単に技術者なのではなく、企業全体に影響力を持つ役割なので、「組織全体のITリテラシーを高めていく能力」が求められます。
また、デジタルの知識を具体的なビジネスモデルに変換できる「アイデアマン」の資質も高ければ理想的です。もちろん、施策を遂行するための実行力・調整力・コミュニケーション能力などを持つことは大前提です。

CDOに関連する注目すべき動向

「顧客・社会側のニーズに、デジタルで応えられるビジネスプラン」を立案するには、社会的な動向について具体的に認識している必要があります。例えば、次のような事柄が、昨今特に注目されており、CDOが十分に押さえておくべき動向です。

各センサーに集約されるリアルデータ

「スマートホーム」という発想に象徴されるように、昨今ではIoT機器が一般家庭にまで普及するようになりました。こうして現在、社会全体でIoT機器が急増しています。それに伴い、IoT機器のセンサーがリアルタイムに収集・発信するデータ、つまり「IoTデータ」も、膨大な量になってきています。

当然こうしたIoTデータは、ビジネスに転用可能です。その方法は非常に広範に及ぶため、自社・顧客の状況を熟考し、最適な方法を導き出します。
代表的な活用事例はスマートファクトリーです。「IoTセンサーがネットワークを形成して、生産設備全体の状態を常に監視し、運用状態を自動で最適化する仕組み」が構築されます。

データの売買を仲介する取引市場の存在

ビジネスにおいてデータの利用価値が高まっていることを反映し、「企業間でデータを提供・販売する動き」も活発化しています。そこで重要な役割を果たすのが、企業間でのデータ売買を仲介する、取引市場です。

昨今では、日本国内においても「データ売買を整備する取り組み」が進み始めています。これに呼応し、「自社保有のデータを市場で販売し、マネタイズすること」もビジネス上の一般的な行為と認識されるようになるでしょう。もちろんプライバシーやセキュリティへの対策が、併せて重要となります。

オープンデータおよびデータカタログの普及

オープンデータとはその名の通り「二次利用可能な公開データ」のことです。こうしたオープンデータにタグ付けなどを施し、利用者が検索しやすい状態に目録化したものは「データカタログ」と呼ばれます。

内閣官房IT総合戦略本部は、オープンデータの積極的な公開を国内企業に呼びかけており、近年ではその成果が徐々に出つつあります。国や地方の公共データも公開が進んでいるため、この流れが進めば、今後民間企業が利用できるデータソースはますます広がっていくと期待されています。

「IoTの普及」「データ取引市場の成立」「オープンデータの公開」など、近年の日本では、企業側が積極的にデータ活用を推進できる環境が充実しつつあります。そしてそれに伴ってCDOの責任や仕事もより具体化しつつ、広がっていくと考えられます。

CDOの求人内容と年収の範囲

先述のような状況にある日本で、CDOは次のような業務内容と年収範囲で求められています。

求人内容としては、「AIやIoTなどの最新技術を用いたビジネス企画」「デジタル戦略の企画・立案」「デジタル化推進のためのナレッジ共有」などが一般的です。
年収については、CDOは役員待遇なため、一般に800万円以上、大手だと3,000万円というケースもあります。しかし他方で、大手でも500万円ほどというケースもあります。つまり各企業で大きく異なるので、応募する場合は個々にチェックすることが大切です。

また実際には、求人段階では「CDO”候補”」として募集されることも少なくありません。応募を希望するときは、このような言い回しにも注意し、契約内容を確認する必要があります。

まとめ

本記事では、CDO(最高デジタル責任者・最高データ責任者)の役割について主に解説しました。CDOにはICTに関する幅広い知識と、経営者的な能力を併せ持つことが要求されます。

またCDOは最新のデジタル技術を活かして、経営レベルからDX推進を遂行していく役職でもあります。加えて最高デジタル責任者としては、顧客・社会ニーズの把握もより重要になります。

今後ますますICT活用がビジネスにおいて重要になっていくでしょう。それに併せて日本でも、CDOの定義を厳密化しつつ、実際に設置する企業が増えていくと考えられます。

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