これから求められるフィールドサービスは、受け身であった修理や工事、点検などを行うだけでなく、「顧客との接点がある重要な業務」として重要視されています。本記事では、フィールドサービスの概要や注目される理由、フィールドサービスが抱える課題や効率化するポイントを解説します。
次世代に必要とされるフィールドサービスとは?
近年、デジタル技術の進歩により、企業はどこからでもサービスを提供でき、顧客はどこにいてもサービスを受けられるようになりました。一方、サービスの中には、現場に赴かなければ作業できない業務も必ず存在します。その業務を行うのがフィールドサービスです。
フィールドサービスは、機械設備などの設置・点検・修理・工事・配送などが該当します。これまでは、「製品が壊れたら修理に向かう」「機械設備の安全点検を行う」など、迅速に対応することが一般的なフィールドサービスの業務と言われていました。しかし、近年はこれまでの枠に留まらず、フィールドサービスが担う役割は変わりつつあります。
企業側にとってフィールドサービスは、「顧客との接点がある重要な業務」としての意識が高まっています。これまでは受け身であったフィールドサービスが、「顧客をつかむための機会」として多くの企業に有力視され始めているのです。さらに、アフターサービスだけでなく、機能をさらに追加させるなどの顧客の要望に応えることも、フィールドサービスの一環として認識されています。
このような、新時代の進化したフィールドサービスの実現には、迅速な対応だけでなく高い品質も求められます。企業が進化したフィールドサービスを実現するには、それに見合った環境やシステムを取り入れていかなければなりません。それらをどのように実行していくかが、これからの重要な課題と言えるでしょう。
フィールドサービスが重要視されている背景
フィールドサービスが重要視されている背景には、顧客が求める「モノ」に深い関わりがあります。顧客は高い品質を期待するのと同時に、長期的に安全で安心して使えるモノを求めているのです。費用対効果を考えても、壊れてもすぐ修理に来てくれる、あるいは定期的なメンテナンスをしてくれるフィールドサービスは、顧客にとってなくてはならないサービスと言えるでしょう。
フィールドサービスが抱える課題
フィールドサービスは、顧客にとって安心安全のために必要なサービスであり、企業にとってはビジネスチャンスになり得るサービスです。一方で、フィールドサービスの導入には、解決すべき課題も存在します。
技術スタッフの人材不足や属人化
フィールドサービス業務を行う技術スタッフの人材不足は、多くの企業で解決すべき大きな課題です。新規採用が難航していることに加え、幅広い業務を少ない人数で行うなどの業務環境の悪化は、離職率も上がってしまいます。また、人材不足から技術や知識が継承されず、特定の熟練スタッフのみが常に対応している状態であるフィールドサービス業務の属人化は、業務スケジュールや事業継続にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
対応スピード
フィールドサービスは、対応スピードも重要です。顧客から依頼があった時にすぐに駆けつけられるよう、体制を整えておく必要があります。しかし、現場にすぐ駆けつけられても、スタッフの技術によって対応スピードに差が出てしまうケースも考えられるでしょう。顧客は高品質のフィールドサービスを求めます。そのため、技術力のあるスタッフの確保や、迅速に対応できるよう業務を効率化することが重要です。このことは、顧客満足度にも直結するでしょう。
フィールドサービスを効率化するポイント
高品質のフィールドサービスを提供するためには、フィールドサービス業務の効率化が重要です。主な以下のポイントを5つに分けて解説します。
- 全体最適を意識する
- フィールドサービスマネジメント
- 管理体制の構築
- フィードバックループの導入
- テクノロジーツールの導入
全体最適を意識する
フィールドサービスの効率化には、「全体最適」を意識することが重要です。そもそも全体最適とは、自社のシステムおよびチームなどの組織全体が「最適」である状態のことを言います。組織全体が最適であることは、すべての業務が効率化され、コスト削減や労働生産性の向上に繋がります。
フィールドサービスの現場だけに目を向けるのではなく、全体最適を意識し、包括的に眺めることがポイントです。現場だけでプラスに思える影響も、俯瞰的な視点で捉えるとマイナスの影響を与えてしまっているおそれがあるのです。
例えば、フィールドサービス品質が悪いのは現場の問題だけではなく、アサインの問題や情報共有が不足しているなどのおそれ、業務負荷が高すぎるなど、仕組みの問題も考えられます。これらすべての問題を俯瞰的な視点で捉え全体最適を目指すことが、役割の明確化やコスト削減、労働生産性の向上に繋がるでしょう。すなわちフィールドサービスの効率化にもなるのです。
フィールドサービスマネジメント
フィールドサービスの効率化には、「フィールドサービスマネジメント」による業務最適化もポイントです。
フィールドサービスマネジメントとは、ITを用いてフィールドサービス全体を管理し、効率化することです。ITを駆使したフィールドサービスマネジメントを導入することで、効率的なアサインやスケジュール調整が可能になり、パフォーマンスの向上が見込まれます。また、顧客ごとの膨大な資料をデバイス上で取得できることで、情報取得が効率化され、生産性も向上するでしょう。さらに、現場の状況を可視化できることで、的確な指示ができ、伝達漏れの心配も抑えられます。このように、容易に報告・連絡ができることは、コミュニケーションの活性化に繋がります。
フィールドサービスマネジメントの導入は、これまでのフィールドサービスで発生していた作業の無駄が省かれることで、スピード対応が実現できます。最終的には、顧客満足度の向上や収益性の向上も見込めます。
管理体制の構築
フィールドサービスの効率化には、保守作業管理などの管理体制を徹底して行い、フィールドサービスの技術スタッフをサポートすることもポイントです。技術スタッフ管理がおろそかになると、作業負担が増しヒューマンエラーの発生も起こりかねません。さらに、現場作業が終了しても、報告書などの作成のために会社に戻り、残業を行う技術スタッフも少なくないのです。
管理体制を構築するには、デバイス上で必要な情報を一元管理することが重要です。このことで、どこからでも報告書の作成ができ、スケジュールや指示の確認も容易に行えます。技術スタッフの負担軽減にも繋がり、ヒューマンエラーの防止にも役立つでしょう。
技術スタッフは、余計な作業負担が軽減したことから、技術を磨くことにも専念できるでしょう。高品質なフィールドサービスが受けられることは、顧客にとってもメリットにも繋がり、長期的に良好な関係維持も期待できます。
フィードバックループの導入
フィールドサービスの効率化には、「フィードバックループ」の導入もひとつの手法です。「フィードバックループ」とは、その名の通りフィードバックを繰り返すことで問題を解決し、結果をより良いものにしていくことを言います。有名な業務効率化の手法である「PDCAサイクル」もフィードバックループのひとつです。
フィードバックループはただ実行するだけでは効果は得られません。フィードバックループを効果的に行うには、まず、改善を前提とした仕組みづくりが必要です。そのベースとなるのは、実行した内容や課題の蓄積です。具体的には、「アサイン状況」「作業内容」「時間」などの情報であり、これらの蓄積から、次へ進むための評価や分析がスムーズに行えるようになります。
フィードバックループはとにかく続けることが重要です。しかし、仕組みづくりから結果の評価や分析、改善へとつなぐ作業は簡単にできることではありません。継続させるためには、無理しないことも大切です。毎日の業務量を考慮しつつ、通常業務に支障をきたさずにできる範囲で進めることが理想と言えます。
テクノロジーツールの導入
フィールドサービスの効率化には、「ツールの導入」も大きなポイントです。フィールドサービスの効率化に、最も効果的な手法と言えるでしょう。ここでは、今後のフィールドサービス業務を担う注目ツール・システムを紹介します。
- 動態管理システム
動態管理システムは、GPSやインターネットから現場の車両の位置情報や、ドライバーの状況を管理者が把握できるシステムです。現場に赴き作業をするフィールドサービス業務において、大いに活用できるシステムと言えます。導入から得られる効果は、作業効率の向上や労働生産性の向上、配送ミスの防止、スケジュールの効率化です。これらは作業スタッフの働き方改革にも繋がります。 - IoT機器
IoT機器の導入は、フィールドサービスにおける現場作業効率を高めるポイントです。IoT機器によるデータ収集を行い、「コールセンター」「保守」「顧客情報」「品質管理」などのシステムを連携させるのです。これら、リアルタイムの情報が可視化されることで、スピーディな対応が可能になり、必要な時間、必要な場所に適切なスタッフをアサインできます。また、スタッフ間で最新情報を共有することで、トラブルを未然に防ぐことも期待できるでしょう。IoT機器で安全に管理できることで、顧客の信頼を得ることにも繋がります。 - ペーパーレス、ワークフローの自動化
紙の手順書を使用している場合、デジタル版を導入することも効果的です。現場にいても常に最新の手順書にアクセスできるのは大きなメリットですし、プログラミングの知識が無くても扱えるツールを使うことで誰でも気軽に更新できます。
さらにワークフローを自動化すれば、業務の更なる効率化も期待できます。例えば手順書やチェックリストを更新したタイミングで、次の担当者への通知が行くよう設定すれば都度連絡する手間も省けます。 - スムーズな情報共有による、現場作業の直接的な支援
テクノロジーツールの導入により、現場の写真や映像をスムーズに共有できれば、現場からの問い合わせにも的確に対応できます。また業務熟練者が遠隔からサポートに入ることができれば、より多くの現場での作業品質を均一にできるでしょう。
フィールドサービスの効率化に成功した事例
ここでは、実際にフィールドサービスの効率化に成功した事例を3例紹介します。自社において、フィールドサービスの効率化を考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
A社
フィールドサービスの効率化に成功したA社の事例を紹介します。
A社は、管理システムの導入から、約1万を超えるフィールド作業とマネジメントの効率化に成功しました。
導入の背景には、1万ヵ所もの設置工事が発生するプロジェクトにおいて、遅延リスク防止のための管理工数が増大していたことがありました。また、工事に付随する作業難易度が高く、紙の文書を参照して行う作業には、多くの時間と労力を要していました。
機器設置工事管理システムを導入したことから、リアルタイムで工事の進捗状況が把握可能になりました。また、デバイス上に表示されたチェックリストに基づいた作業を進めることで、ミスを回避でき、作業品質が向上したこともメリットのひとつです。フィールドサービス業務の効率化からマネジメントの高付加価値化が実現でき、顧客満足度の向上やさらなる作業効率アップのためのベースができたのもポイントでしょう。
B社
フィールドサービスの効率化に成功したB社の事例を紹介します。
150ヵ国の地域で保守サービスを行ってきたB社は、拠点ごとのシステム運用コストに大きな課題を抱えていました。さらに、顧客満足度向上のためには保守サービスが重要であるとの考えに至ったことから、クラウドサービスの導入を決定しました。
導入したCRMツールは、保守サービスに特化している点や安価な利用料金が魅力です。B社は、ツールをグローバル展開することで、フィールドサービスに関するデータを収集・分析・フィードバックする仕組みを構築しました。結果、故障による訪問回数を前年対比34%削減に成功。同社は、将来的にIoTとフィールドサービスシステムの連携で、さらなる顧客満足度の向上や業務効率化を狙います。
C社
フィールドサービスの効率化に成功した大手製造業であるC社の事例を紹介します。
大手製造業であるC社は、これまで製品や部門ごとの問い合わせ先がバラバラで、問い合わせ対応が整備されておらず、それが原因で顧客満足度を低下させるリスクを持っていました。また、窓口では過去の対応履歴を確認できず、エンジニアが必ず顧客先へ出向く必要がありました。しかし、エンジニアのスキルや状況がわからず、マッチングに支障をきたしていました。そこでクラウド型サービスを導入し、コールセンターとフィールドサービス業務を一元化したのです。
新サービスでは、コールセンターへの入電と同時に顧客情報が表示されます。エンジニアのスキルや位置情報、スケジュール情報もリアルタイムで把握できるため、最適なマッチングがすぐに行えます。迅速で高品質な対応から顧客満足度の向上が期待でき、窓口の一元化でコスト削減、業務効率化も期待できます。さらには、データ分析に活用できるレポートを経営層が確認できるため、経営上の意思決定を支援することも可能です。
まとめ
従来とは異なり、これからは「顧客との接点がある重要な業務」として、フィールドサービスが多くの企業が注目しています。企業規模を問わず導入する必要性が叫ばれており、「競合他社との差別化」や「フィールドサービスの収益化」などのメリットが期待できるでしょう。しかし、フィールドサービスが抱える課題として、人材不足やスピード対応への環境整備が挙げられます。これらは、フィールドサービスの効率化により解消できます。
フィールドサービスの効率化には、全体最適の意識や、フィールドサービスマネジメントやフィードバックループの導入、管理体制の構築がポイントです。効率化の実現には、ツールやシステムの導入が重要で、「動態管理システム」や「IoT機器」の導入やペーパーレス化、ワークフローの自動化できるツールの検討も効果的と言えます。
フィールドサービスの効率化を図り、実際にクラウドシステムを導入した企業の成功例として、マネジメントの効率化や作業品質の向上、コールセンター・フィールドサービス業務の再整備を短期間で実現できたことなどが挙げられます。
多くの課題を残す新時代のフィールドサービスを導入するには、クラウドシステムやツールの利用など、デジタル化による効率化が重要と言えるでしょう。
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