BtoB ECとは?種類・メリット・デメリット・導入のポイントを紹介

 2025.03.24  デジタルビジネスシェルパ

近年、企業間取引(BtoB)にインターネットを用いて注文や決済などを行うBtoB ECの市場規模が拡大しています。本記事では、BtoB EC導入を検討中の企業担当者の方に向けて、BtoB ECの概要や導入するメリット・デメリットについて解説します。さらにBtoB EC導入を失敗させないためのポイントも併せて紹介します。

BtoB ECとは?種類・メリット・デメリット・導入のポイントを紹介

デジタルマーケティングソリューション

BtoB EC(BtoB コマース)とは?

BtoB EC(BtoB コマース)とは?

BtoB ECとは、企業間取引(Business to Business)をインターネット上で行うこと、またはそのためのシステムのことです。これまでEC(電子商取引、ネット販売)といえば、BtoC(企業対消費者取引)が中心でしたが、近年、BtoB ECに取り組む企業が増えています。

BtoB ECの市場規模

経済産業省が公表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2023年の日本国内のBtoB ECの市場規模は465.2兆円で、前年の420.2兆円より10.7%増加しています。EC化率(全商取引において電子商取引が占める割合)は、前年より2.5ポイント増加の40.0%と、商取引の電子化が進んでいることがわかります。これに対して2023年の日本国内のBtoC ECの市場規模は24.8兆円です。日本国内のBtoB EC市場は、BtoC ECの市場の約19倍と、市場規模が非常に大きいことがわかります。

参照元:経済産業省「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001.html

BtoB ECの取引形態

BtoB ECの取引形態は、大きく分けてEDIとECサイトの2種類があります。どちらも企業間で取引する際に用いられるシステムですが、目的やメリットに違いがあります。

EDI

EDI(Electronic Data Interchange)とは、専用回路やインターネットを介し、あらかじめ定められたルールやフォーマットを用いて、注文書や請求書などをやり取りするシステムです。主に大企業や行政機関の取引で利用されており、従来の紙を使った取引を電子化し、業務の自動化を図る目的で開発されました。そのため、導入によって受発注に関わる人的ミスや印刷費、発送費といったコストの削減、属人化の防止、業務スピードの向上などのメリットが期待できます。ただし、導入や運用には高額なコストがかかる場合があり、ベンダーは顧客に合ったシステムを利用しなければならず、取引量が少ない企業間取引ではメリットが乏しいといったデメリットがあります。

なお、従来のEDIは主にISDN回線を用いていましたが、NTT東日本・西日本ではISDN回線の新規販売などを終了し、2028年12月31日にはサービスの提供を終了する予定です。したがって、これからEDIを導入する場合には、Web-EDIやクラウドEDIがおすすめです。

ECサイト

EDIの後に登場したのが、法人向けの商品を取り扱うBtoB ECサイトです。BtoB ECサイトは、商品やサービスの受発注だけでなく、マーケティング機能も備えています。インターネット環境が整っていれば、いつでも、どの企業とも取引が可能です。そのため、取引ボリュームが小さい顧客とも取引がしやすく、売上の向上が見込めます。

BtoB ECの種類

BtoB ECの種類は、大きくクローズ型、スモール型、マーケットプレイス型の3つに分けられます。それぞれの特徴は、以下のとおりです。

クローズ型BtoB ECサイト

クローズ型は、特定の企業や既存の取引先だけがアクセスできる、いわば閉ざされた環境のサイトです。利用するには会員登録やパスワードによる認証が必要で、非公開のECサイトのため、取引先でない企業や一般消費者は、サイトの閲覧すらできません。決済方法は請求書払いが基本です。

クローズ型のメリットは、セキュリティが高く、情報漏えいのリスクを抑えられます。また、顧客のニーズに合わせた価格やサービスを容易に設定できます。ただし、導入や運用にはコストがかかり、新規顧客を獲得するには不向きなサイトです。そのため、既存顧客の利便性を向上させ、リピート発注を高めたい企業に向いています。

スモール型BtoB ECサイト

スモール型は、中小企業やスタートアップ向けのECサイトで、BtoC ECのように誰でも閲覧・購入できる比較的小規模なサイトのことです。初期費用を抑えつつオンライン取引を始められますが、顧客の差別化が難しいため、事前払いでの取引が一般的です。スモール型は、既存顧客だけでなく、遠方の顧客や小口取引顧客など、あらゆる顧客をターゲットにでき、新規顧客獲得を目指す中小企業に適しています。

マーケットプレイス型BtoB ECサイト

マーケットプレイスとは、多くの企業が参加して商品やサービスを販売するプラットフォームです。初期費用を抑えつつ、集客力に優れた市場に参入できます。ただし、価格競争が激しく、手数料がかかります。また、品質にばらつきが生じる可能性もあります。

スモールスタートに最適なBtoB ECツールのご紹介
[Blog][Middle][デジタルマーケティング]BtoB企業の営業・マーケティング変革

BtoB ECとBtoC ECの違い

BtoB ECとBtoC ECの違い

BtoB ECとBtoC ECは、取引対象者や取引量、決済方法が異なります。

取引の量や金額

BtoB ECとBtoC ECでは、取引の量や金額に大きな差があります。BtoC ECでは消費者が対象のため、購入は1個単位から行われますが、BtoB ECでは大量発注が一般的です。また、取り扱う金額もBtoCでは少額ですが、BtoBでは高額になる取引もめずらしくありません。

販路

BtoB ECとBtoC ECでは、販路も異なります。BtoC ECでは、基本的に全ユーザーが全商品を閲覧・購入できます。しかし、BtoB ECでは、得意先や会員登録している企業だけが閲覧・購入できる商品を取り扱っている場合もあります。

決済方法

BtoC ECでは、クレジットカード払いや電子決済、コンビニ決済、代金引換などが用意され、決済が完了してから商品を受け取るのが一般的です。対してBtoB ECでは、多くの企業が購入後にまとめて請求を行う請求書払いを利用しています。ただし、取引回数が少ない企業に対しては、未回収リスクの少ない銀行振込による前払いや代金引換などで決済を求めることもあります。

BtoB ECを導入するメリット

BtoB ECを導入するメリット

インターネット上で取引を実施できるBtoB ECを導入することで、企業には以下のようなメリットが期待できます。

業務を効率化できる

BtoB ECを導入すると、業務の効率化を実現できます。対面や電話、FAX、メールによる受注方法は、担当者がシステムに手入力する必要があるため、手間がかかることや入力間違いによる人的ミスが起きやすいのが課題でした。さらに電話受注では、聞き間違いやメモの取り違いによるミス、FAX受注では文字が読み取れないことによる再確認や訂正などが起こることも多く、余計な工程が発生しやすいのもデメリットでした。しかしBtoB ECを導入することで、顧客の注文データを自動処理できるため、情報入力や確認作業にかかる手間を削減できます。また、業務の自動化が進むことで人的ミスが減り、従業員はよりクリエイティブな思考が求められる業務にシフトすることも可能です。

新規顧客の拡大につながる

BtoB ECの導入は、新規顧客の拡大につなげることが可能です。従来の営業方法では、営業担当者が足を運べない遠方にはアプローチできない、小口の取引先には時間を割けないなど、新規顧客の拡大に課題がありました。しかしBtoB ECなら、インターネット広告やSEO対策など活用することで、見込み顧客をECサイトに誘導し、購買へとつなげることが可能です。さらにこれまでカバーできなかった地域やフォローできなかった企業にも、インターネット環境さえあれば場所にとらわれず手軽に有用な情報を届けられます。そのため、営業活動に大きなリソースを割かなくても、新規顧客の拡大を目指せます。

ターゲティングの精度を向上できる

BtoB ECでは購買履歴を蓄積でき、売れ筋商品や顧客ごとの購入傾向などの分析が可能です。他にもユーザーが閲覧したページやページの滞在時間、アクセス頻度などの分析ができ、自社の顧客が何を求めているかが把握できます。また、BtoB ECは企業規模や業種、職種などのセグメント別にアプローチやメールマーケティングの最適化を行えるのもメリットです。例えば、セグメント別にニーズや好みに合ったDMを送信することで、顧客と良好な関係を構築でき、リピート率を高められます。

リターゲティングの強化を行える

BtoB ECでは、ユーザーの行動データを分析することで、リターゲティングを強化することもできます。商品を検索した、またはカートに一度入れたものの購入に至らなかった顧客に対し、割引クーポンを配布したり、在庫数を通知したりすることで購入につながる可能性を高められます。このようリターゲティングの強化は、顧客の購買意欲を高め、さらなる売上の増加が見込めます。

顧客の興味に応じた提案ができる

BtoB ECサイトには、顧客の興味や購買履歴に基づいた商品をレコメンドする機能もあります。一般的に、BtoBでは顧客の買いたいものは明確で、購入時期も決まっている場合が多いです。定期的に同じものだけを購入し、それ以外のものを合わせて買うことは、BtoCに比べると少ないという特徴があります。しかし、レコメンド機能を利用すれば、閲覧や注文履歴などをもとに、顧客のニーズや関心に合ったおすすめ商品を表示できます。このようなレコメンド機能にはAI技術が活用されており、ECサイトのデータを学習することで、膨大な商品の中から顧客にとって最適な商品を見つけることができます。

ECサイトで顧客が商品に興味を持った段階でレコメンド商品を表示させれば、その商品に目が留まり、新たな発注のきっかけになるかもしれません。さらに商品を検討している段階であれば、その商品の機能を紹介する記事や、他のユーザーがよく閲覧している記事を表示させることで購入意欲を高められ、成約数や購入単価の向上につながります。

BtoB ECを導入するデメリット

BtoB ECを導入するデメリット

BtoB ECの導入はメリットが多いものの、デメリットも存在します。導入の失敗を防ぐためには、以下のデメリットについても把握しておくことが大切です。

導入や運用にコストがかかる

BtoB ECのデメリットのひとつは、導入や運用にコストがかかることです。BtoBでは業界独自の商習慣や取引形態、業務フローを考慮する必要があるため、既存のプラットフォームでは対応できないケースもあります。その場合、独自のシステムを構築しなければならず、内容によっては数百万~数億円など、高額になることもめずらしくありません。さらに、システム導入に伴う研修の受講料や外部のコンサルタントを雇用する人件費などのコストも必要です。このような初期費用や運用コストは企業にとって大きな負担であり、多くの企業がECサイトに参入できない要因になっています。そのため、コストをできるだけ抑えてBtoB ECを導入したい場合には、小規模で小口の取引先や新規顧客のみをターゲットにしたスモールスタートで始めるのがおすすめです。

既存顧客のフォローが必要になる

BtoB ECを導入すると、それまで電話やFAX、メールなどで注文を受けていた企業に、発注方法を変更してもらわなければなりません。中には、従来の慣れ親しんだ発注方法が使えなくなることに抵抗を持つ既存顧客もいます。最悪の場合、取引がなくなる可能性もあるため、既存顧客にはECサイトの利用方法を解説した資料を配布する、ECサイトを利用するメリットを解説するなど、手厚いフォローが必要です。ECサイトの導入により新規顧客の獲得を目指せるとはいえ、既存の顧客が離れてしまっては元も子もありません。そのため、前述したようにまずは小口の取引先や新規顧客のみをターゲットにしたサービスを開始し、十分なフォローをした上で順次、既存顧客に受注方法を変更してもらうと良いでしょう。

BtoB EC導入にあたってのポイント

BtoB EC導入にあたってのポイント

企業がBtoB ECを導入する際には、業務効率化や売上アップなど目指す目的を明確にし、自社の目的を実現できる機能が付いたシステムを選ぶことが重要です。例えば、業務効率化を図りたい場合は、作業を自動化できる機能が搭載されているかどうかを確認しましょう。見積書の作成や発注の承認、請求書の発行などが自動でできれば、従業員の作業負担を大幅に削減できます。納期や出荷状況など、顧客からの問い合わせが多い項目をシステムに表示できるものを選べば、顧客対応にかかる時間を短縮することも可能です。また、企業によっては大量購入に対する割引額を自動計算して顧客に提示する「ボリュームディスカウント機能」や海外の顧客との取引が容易になる「多言語対応機能」があると、ビジネスを効率的に進められます。

さらに、自社で利用しているシステムやツールとの連携ができるかどうかも確認しておきたいポイントです。既に利用している会計システムや顧客管理システムなどと連携できれば、業務がスムーズに進行します。加えて、サポート体制が充実していることも重要です。導入から運用まで、きめ細かなトータルサポートを提供してくれるツールなら安心して任せられます。万一、トラブルが発生してもサポートが充実していれば、迅速な対応によって被害を最小限に抑えられます。

そしてBtoB ECを導入する際は、低リスクで始められるスモールスタートが望ましいです。範囲を絞ってスタートすることでコストも抑えられ、事業の成長に伴ってカスタマイズしたり、規模を拡大したりする際も、従業員のシステム理解が進んでいるため、業務がスムーズに進みます。

まとめ

まとめ

BtoB ECは市場規模が拡大しており、多くの企業で導入が進むと予測されます。BtoB ECの導入には、業務効率化や新規顧客の拡大など多くのメリットがありますが、導入や運用にコストがかかり、既存顧客のフォローも必要です。そのため、スモールスタートでの導入が推奨されます。

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