現代のビジネス環境において、データは企業の成功に欠かせない重要な要素の一つとなっています。データ利活用を進めることで、意思決定の質を高め、競争力を強化し、効果的な戦略の検討に取り組むことが可能になります。そのデータ利活用を支援する一つの要素が「BIツール(Business Intelligence)」です。BIツールはデータの可視化・分析を行い、わかりやすく簡潔に情報を共有し、関係者の意識を揃える役割を持ちます。現在ではデータ利活用をサポートするツールとして、多くの企業に採用されています。本記事では、BIツールの概要と目的、利用イメージ、可視化・分析における注意点について解説していきます。
BIツールの概要と目的
BIツールは、継続的なデータ利活用に適したツールです。ビジネスの成功には重要な意思決定を繰り返し行い、競争優位性を確保する必要があります。そのためにはデータの可視化・分析を、棒や折れ線といったグラフで表現した上で、色や形を使って強調していくといった多様な表現をすることで、現状を素早く直感的に理解することが重要です。
また、データを理解するだけにとどまらず、AIやML(機械学習)と連携することで、より高度なデータ分析を行うことも可能です。データ利活用は様々なシーンで効果的な運用が進んでおりますが、その中でBIツールは強い存在感を示しています。
BIツールを使用する主な目的は、ビジネスにおける意思決定をサポートすることです。データを可視化することで客観的かつ多角的な考察を得ることが可能となり、それを共有することで論理的な意思決定を行うことができるようになります。具体的には以下の3つに分けられます。
- データドリブンな意思決定
- 業務パフォーマンスの向上
- データの共有
1つ目はデータドリブンな意思決定です。データに基づいた意思決定を実現するために経営者やマネージャーは、経験や直感に頼るだけでなく、データを論理的に用いてエビデンスのある判断することができます。 例えば、売上データや顧客の購買履歴を元に、顧客の属性や季節性を考慮した効果的な販売戦略やマーケティングを展開することができるようになるなど、従来過去の経験をもって判断していたものを論理的に判断することが可能になります。
2つ目は業務パフォーマンスの向上です。BIツールを使うことで、ビジネスプロセスの改善点を特定し、効率化やコスト削減の機会を見つけることができます。例えば、生産ラインの稼働状況や生産数、コストを分析して、歩留まり率の改善、時間当たりの生産数向上、在庫管理の最適化を行ったりすることが可能です。
図1:BIツールで描くダッシュボードの例
提供:ウイングアーク1st株式会社 【MotionBoard】
3つ目はデータの共有です。1つ目で意思決定が重要と述べましたが、如何にデータをうまく分析したとしても、結果の共有がうまくできなければ意思決定につながることはありません。複雑なデータをグラフチャートの形や色を用いて視覚化することで、データの理解と共有を素早く直感的に行うことができます。情報の透明性が向上し、チーム全体の意思決定が迅速かつ的確になります。また、データの可視化によってKPIのモニタリングが容易になります。
BIツールの利用イメージ
BIツールは、ビジネスに関わる様々な人によって活用されます。利用者の立場が異なればデータの見方や確認する項目なども変わってきます。例えば、「経営者」であれば、経営戦略の見通しや組織のビジョンに関して、組織全体のデータを俯瞰することでビジネスの進捗状況を把握し、戦略の方向性を決定することに役立ちます。「管理者」であれば部門ごとの業績やプロジェクトの進捗状況を把握し、課題を特定して改善策を引き出すなど日々の業務において役立ちます。「現場担当者」であれば、案件管理や実績の確認、顧客や案件の傾向分析など日々の活動に役立つサポートを行うことができます。
上記はあくまでも一例ですが、立場によって求めるデータ分析の形は異なります。求めるデータを求めるタイミングで確認できるような運用を実現する仕組みを構築することが重要です。
可視化・分析における注意点
データを可視化する際に多種多様な表現があります。その際に表現方法に気を付けなければ誤解を生んでしまうようなグラフとなってしまうことがあります。ここでは思わず誤解を生んでしまう表現方法について2つの例をご紹介します。
① 一般的な認識と逆の配色をする
図2:配色による直感的な理解を妨げる例
提供:ウイングアーク1st株式会社 【MotionBoard】
多くのグラフでは色を用いて強調したり、異なる意味を持たせたりとより分かりやすくするための工夫として使用されます。その際、一般的にはプラスの表現を青や緑、マイナスの表現を赤やオレンジで表すことが多く用いられます。上記の図では売上を表す棒グラフで表現していると共に売上の値によって色を付けていますが、配色についてはプラスイメージが赤、マイナスイメージが青となっています。初めてこのグラフを見る際の第一印象として、「赤いグラフには何か問題が発生しているのか?」といった印象を抱く可能性があります。グローバルでの展開を考えている場合には、国や文化によっても解釈が異なることがあるため誰が見るのかといった視点は意識しておく必要があります。作成者の意図とは別にグラフを見る側の視点に立って配色を検討することで誤解を生みにくいグラフを作成する意識が重要です。
② 比較したい項目を適さないグラフで表現する
図3:視覚的にわかりにくい表現とわかりやすい表現
提供:ウイングアーク1st株式会社 【MotionBoard】
グラフを作成する目的として他との比較を行うことがあります。通常棒グラフや折れ線グラフなどを用いることが多いのですが、見た目が良い点から円グラフを選ばれることがあります。図3では各地域別の売上で区切られる大きさが変化するように表現しています。左側の円グラフを見ると地域ごとの売上の大きさは漠然と伝わりますが、一番売上が大きいのはどこなのかを判断するのは難しく、また具体的な金額もわかりません。右側の円グラフを見ると地域別の売上が具体的に示されているため、それぞれいくらなのかを把握することができます。付帯情報として合計の値も表示することで全体と地域ごとの売上を比較することも可能です。
今回示したグラフはあくまでも一例に過ぎませんが、グラフの表現方法一つで相手への伝わりやすさが変化することが分かります。表現方法は完全な正解があるわけではありません。しかし、より多くの人に伝わりやすい表現を選択していくことで誰が見てもわかりやすいグラフに近づけていくことができます。グラフを見る人がどんな人なのかをイメージした上で、より伝わりやすい表現方法を検討していくことが重要です。
まとめ
BIツールの活用は、データを用いて事実に基づいた意思決定を行い、ビジネスの成果を上げるために有効です。BIツールを用いてデータが可視化されることで実態の把握や問題の特定が容易になることで、データの共有を図りつつもデータドリブンな意思決定を可能とし、業務パフォーマンスの向上に貢献します。BIツールはビジネス変革を目指す上で非常に重要なのでぜひ活用していきましょう。
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