パブリッククラウド上のリソースは基本的に時間単位の従量課金で、利用した分だけ費用を請求されることになります。仮想デスクトップサービスであるAzure Virtual Desktop(以下AVD)も同様で、その主な課金対象は仮想マシンに割り当てられたCPUやメモリです。
企業の経営者であればこの課金をできるだけ抑えたいと考えるのは当然です。
では、AVDの課金を抑える方法について、いくつか方法を考えてみましょう。
まず、もっとも簡単な方法として挙げられるのは、「節約プラン」や「予約」といった仮想マシンの買い方を使うことです。事前に利用するリソース量をコミットすることで、時間単価を削減することができます。
次に考えられる方法は、実際にシステムを利用していない休日や利用者が少ない夜間などの時間に余分な仮想マシンの電源を落としてリソースを解放することです。
前者は長期の利用をコミットしなくてはなりませんし、どの程度のコミットを行うかを事前に計画する必要があります。
後者は電源OFFに伴う利用者への負担が少なからず発生します。上手に運用すれば、予約や節約プランよりも高いコスト削減効果を得ることができます。
また、この両者を組み合わせることでさらなるコスト削減ができることは言うまでもありません。
本記事では、電源ON/OFFを制御してコストを削減するオートスケールについて、Azureの標準機能のみの場合とNerdio Managerを使った場合について、どのような設定ができるのかを紹介していきたいと思います。
Azure Virtual Desktopのスケーリングプラン
まずは、AVDから見ていきましょう。
AVDにはスケーリングプランと呼ばれるオートスケール機能があります。
スケーリングプランは、主にスケジュールと、起動中のセッション数の割合によるセッションホストの電源のON/OFFを制御します。
以下はホストプールの種類としてプール(マルチセッション)を選択した際の設定画面の流れです。
AVDでは、1日を利用者がデスクトップ利用を始める「ランプアップ」、もっとも利用者が集中する「ピーク時間」、利用が減少していく「ランプダウン」、それ以外の「ピーク時以外の時間」に分割し、それぞれセッション数の割合に応じてセッションホスト数が増減されるように制御します。
この中で、コスト削減を意識した場合、重要となのは「ランプダウン」の設定です。
「ランプダウン」では、何割のアクティブユーザーが残っている状態で強制シャットダウンを行うのか?その際に切断状態で放置されているユーザーを考慮するのか?といった言った設定を行うことができるので、これを納得のいくように設定することで、VM起動時間を制御しコストの最適化を図ります。
Nerdio Manager for Enterpriseのオートスケールプロファイル
Nerdio Managerは、AVDと同様のセッションホスト数の割合をベースとしたオートスケール以外にも、より詳細なセッションホストの状態をトリガーに電源制御を行うことが可能です。
ここでは、Nerdio Managerで利用できるセッションホスト状態をベースにしたオートスケール設定について確認します。
- CPU usage
- RAM usage
- Avg active session
- Available session
- User-driven
Nerdio Managerでは上図に示したものをトリガーとして利用が可能です。CPU状態やメモリ状態を参照し、負荷状態に応じてセッションホスト台数を増減させていたり、ユーザーセッションが無くなったセッションホストは停止するといった制御を複数の条件を組み合わせて設定することが可能です。
また、ドレインモード(セッションホストへの新規ログインの抑制機能)を組み合わせ、アクティブセッション数が下がったところで電源をOFFにするといったようなことも可能です。
さらに、このオートスケール設定には、壊れてしまったセッションホストを検知し、自動的に修復する機能も備わっています。
これにより、起動はしているものの誰もログインできないような無駄なVMへの課金を制御できますし、運用負荷低減にもつながります。
まとめ

今回はAVDのスケジュールベースとNerdio Managerの利用状況ベースのオートスケール機能について確認しました。両者とも細かい設定が可能で、コスト削減に大きく寄与できることが感じられたと思います。
特にNerdio Managerでは、複数のトリガーでセッションホスト台数の増減設定が可能なので、AVDよりもセッションホスト台数の最適化という面では優れています。
また、最初に触れた「節約プラン」や「予約」を組み合わせたコスト削減を検討する場合、Nerdio Managerには、セッションホストの利用状況から、どのマシンタイプでどれくらいコミットすれば良いのかを算出する機能もあります。Nerdio Managerを導入した際には、オートスケール機能と併用してこれらの機能を利用し、コスト削減にチャレンジしてみては如何でしょうか。
次回はさらなるコスト削減を実現させるNerdio Managerのディスク管理機能について紹介します。
【第5回】Nerdio Manager ~ディスクコスト削減~- カテゴリ:
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