タイでのビジネスに必要な基礎知識|
押さえるべきマナー・成功のコツを解説

 2025.03.13  デジタルビジネスシェルパ

経済成長が著しいタイは、多くの企業に魅力的なビジネス拠点です。ASEANの中心に位置し、積極的な外国企業の受け入れ政策を進めるタイでは、幅広い分野にビジネスチャンスが広がっています。本記事では、経済発展の背景や、競争力を高めるために重要なIT活用のポイントについて詳しく解説します。

タイでのビジネスに必要な基礎知識|押さえるべきマナー・成功のコツを解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)に 取り組むエンタープライズ企業の成功と挫折の現状

タイにビジネス進出している日系企業は5,000社以上

タイにビジネス進出している日系企業は5,000社以上

近年、多くの日系企業がタイへのビジネス進出を積極的に進めています。外務省の「海外進出日系企業拠点数調査(2023年調査結果)」によると、2023年10月1日時点で5,856社の日系企業がタイで事業を展開しており、これは近隣のインドネシアにおける2,182社やマレーシアの1,617社と比較してもかなり多く、日本企業にとってタイが魅力的な市場であることを裏付けています。

では、なぜ多くの企業がタイ進出を決めているのでしょうか。その背景には、持続的な経済成長、戦略的な立地、外国企業への優遇政策といった要因が関係しています。

参照元:海外進出日系企業拠点数調査(2023年調査結果)

デジタルマーケティング統合基盤の活用ポイント
イベントレポート『デジタルマーケティングと向き合う ~ 遅れを取り戻すために ~』(CTC Forum 2023 パネルディスカッション)

タイでのビジネスが注目される理由

タイでのビジネスが注目される理由

タイは東南アジアの中心に位置し、周辺国へのアクセスが容易であることに加え、政府による経済成長の促進策や外国企業への優遇政策など、日系企業にとって魅力的な市場です。

持続的な経済成長が見込まれる

タイ経済はここ数年、安定した成長を続けており、今後も堅調な発展が予測されています。タイ政府は、国内消費の拡大やインフラ整備など、経済成長を後押しする各種施策を実施しています。特に、財務相は2025年の経済成長率を3.0~3.5%と予想しており、これにより内需拡大がさらに加速する見込みです。

また、タイ政府は「デジタルウォレット」などの大規模な景気刺激策を推進し、キャッシュレス社会の推進や消費の活性化を図っています。バンコクを中心に、中間層や富裕層の拡大が進むことで、国内市場における購買力が高まり、企業にとって大きなビジネスチャンスが生まれています。この経済環境の変化が、日系企業のタイ進出を後押ししています。

周辺国にアクセスしやすい

タイは、東南アジアの中心に位置し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアといった周辺国と国境を接しています。このため、タイを拠点とすることで、ASEAN地域全体への輸出や物流ネットワークの構築がしやすくなる点が魅力的です。また、タイはASEANの自由貿易協定(AFTA)や日本との経済連携協定(EPA)を活用できるため、関税面でのメリットを享受できます。そのため日本企業はタイだけでなく、タイを経由して他の東南アジア諸国へ効率的に事業展開を進めることも可能です。

外国企業への投資優遇政策が実施されている

タイ政府は外国企業の投資を積極的に受け入れており、さまざまな優遇政策を実施しています。特に2023年1月3日に改正された新投資奨励政策では、新産業の育成やサプライチェーンの強化を目的とした税制優遇や土地所有許可が提供されています。ただし、これらの恩恵を享受するには、BOI(タイ投資委員会)への申請と審査が必要です。企業が適切な手続きを行い、認可を受けることで、より有利な条件で事業を展開できます。

参照元:日本貿易振興機構(ジェトロ)

タイでビジネスをするメリット

タイでビジネスをするメリット

タイには、ビジネスを展開する上で多くのメリットがあります。

英語を使ってビジネスができる

タイのビジネス環境では、英語が広く通じるため、日本企業にとって進出しやすい国の一つです。特に都市部やビジネス街では、英語を使ったコミュニケーションが一般的であり、取引先や現地従業員とのやり取りも英語で行えます。また、若い世代を中心に英語教育が進んでおり、基本的な業務上のやり取りに困ることはほとんどありません。このため、現地語に精通していなくても英語でビジネスを展開することが十分可能です。

日本製品・サービスの需要が拡大している

タイでは、日本製品やサービスが高く評価されており、「壊れにくい」「長持ちする」といった品質の高さが消費者から支持されています。親日的な文化も根付いているため、日本食レストランや日本ブランドの商品が日常生活に浸透しており、さらなる市場拡大の可能性があります。
特に、食品・化粧品・自動車関連などの分野では、日本企業にとって有望なビジネスチャンスが広がっています。

産業集積が進んでいて材料・部品を現地調達できる

タイでは、自動車産業や電機産業を中心に産業集積が進んでおり、材料や部品の現地調達が可能です。そのため、比較的容易にサプライチェーンを短縮し、輸送コストを削減できます。特に自動車産業では、タイ国内で生産から組み立てまで完結できる体制が整いつつあり、日本の製造業にとっても大きなメリットとなっています。

人件費・施設費が安く済む

タイでビジネスを展開する大きなメリットの一つは、人件費や施設費が比較的安価であることです。他の東南アジア諸国と比べても、一定のスキルを持った労働力を低コストで確保できるため、企業にとって非常に魅力的な市場です。タイの人件費は日本の約4分の1で、同じ予算でより多くの人材を採用できます。そのため、労働集約型の業種や製造業にとって、タイはコストパフォーマンスの高いビジネス拠点です。

また、オフィス賃料についても、バンコクなどの主要都市であっても東京都心部と比べて半額以下で借りられることが多く、低コストで事業を運営できる環境が整っています。特に、近年ではビジネス特区や工業団地の整備が進み、インフラも充実しているため、初期投資を抑えながら快適なビジネス環境を確保することが可能です。

タイでビジネスをする際の注意点

タイでビジネスをする際の注意点

タイは日本企業にとって魅力的なビジネス拠点ですが、全てが順風満帆に運ぶというわけではありません。急速な経済発展を遂げている一方で、労働力の減少や貧富の差、不安定な政治といった課題も抱えています。これらの要因は、企業の事業運営に大きな影響を与える恐れがあるため、事前に理解し、適切な対策を講じることが重要です。

少子高齢化・人口減少が進んでいる

タイでは、2020年の合計特殊出生率が約1.53人と低い水準で、2028年頃をピークに人口減少に転じると予測されています。政府系シンクタンクである国家経済社会開発評議会(NESDC)の長期国家開発計画(2022~2037年)によれば、労働力人口は今後10年ごとに約300万人減少し、2037年には労働力需要が約4,471万人に達すると試算されています。このため、労働力不足が深刻化すると予測されており、オートメーション(自動化)の導入が求められています。このような事情は企業が現地での人材確保に苦慮する要因となり得ますが、IT技術やDXの推進により生産性を向上させることで、労働力不足の影響を軽減することが可能です。

参照元:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
アジア経済ニュース
政府系シンクタンク 2037年にタイ労働力人口不足が深刻化 求められるオートメーション導入

地域によって貧富の差がある

タイ国内では、バンコク周辺地域がGDPの約半分を占める一方、東北部や農村部では深刻な貧困問題が存在しています。所得水準、生活環境、教育機会、さらにはインフラ整備の面において大きな格差が見受けられることも問題です。こうした現状は、企業が長期的な視点で事業計画を策定する際に、地域ごとの市場特性を十分に考慮する必要性を示しています。市場のニーズや消費者の購買力に合わせた戦略を立てることが求められるほか、現地での社会貢献活動やCSRを通じて、地域格差の是正に寄与する取り組みも重要です。

参照元:日本貿易振興機構(ジェトロ)

経済が政治に左右される

タイは過去において軍事クーデターや大規模な反政府デモが発生するなど、政治的な不安定要因が経済活動に影響を及ぼした事例があります。権力交代や政策変更が頻繁に起こるため、長期的な経済計画を立てる上でのリスクが常に存在します。このような政治リスクに対処するためには、事業計画を立案する際にクラウドベースのBCP対策を取り入れるなど、リスク分散の視点を持つことが重要です。

タイへのビジネス進出で注目されている分野

タイへのビジネス進出で注目されている分野

近年、タイはASEAN諸国の中でも特に経済成長が著しく、外国企業の投資先として注目を集めています。政府主導の産業振興政策やインフラの整備が進められており、特にテクノロジーやバイオサイエンス、エコツーリズムなどの分野は、今後の発展が期待される産業です。

テクノロジー産業

タイのテクノロジー産業は、政府が推進する「タイランド4.0」構想の中核を担う重要な分野として急速に発展しています。従来の製造業中心の経済から、知識集約型産業へと転換を図るため、デジタル技術の導入が積極的に進められています。特に注目されているのは、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)、Eコマース、フィンテックなどの分野です。タイ国内のデジタル化が進み、モバイル決済やキャッシュレス取引が急速に普及していることも、これらの産業を後押ししています。

また、政府はデジタルインフラの整備にも力を入れており、データセンターや5G通信網の拡充に向けた投資が活発化しています。今後ますますテクノロジー関連のスタートアップ企業が誕生し、国際的な企業との連携も進むかもしれません。

バイオサイエンス産業

タイのバイオサイエンス産業は、医薬品や健康食品、バイオテクノロジーの分野を中心に、目覚ましい成長を遂げています。特に、近年では年平均約10%の成長率を記録しており、医療機器、薬用化粧品用天然抽出物、フードサプリメント、バイオ医薬品などの分野で顕著な発展が見られます。

この成長の背景は、国の主導で行う積極的な支援や投資環境の整備です。タイ政府はバイオテクノロジー分野で国内外の企業が参入しやすい環境を整え、国が持つ豊富な天然資源を活用したバイオ製品の研究開発も盛んに行っています。特に、伝統医療やハーブを活用した製品は、国内外で高い評価を受けており、今後も市場の拡大が期待されています。

参照元:革新的なタイのバイオテック:持続可能な未来を推進

エコツーリズム産業

タイは美しい自然と豊かな文化を誇る観光大国であり、近年では環境保護と観光を両立させる「エコツーリズム」の推進に力を入れています。タイ政府は、持続可能な観光モデルの開発を重要視し、「TATセブン・グリーンズ・コンセプト」という環境に配慮した観光戦略を掲げました。

エコツーリズムの具体例としては、地域住民との交流を深めながら伝統文化を体験できるプログラムが挙げられます。昔ながらの暮らしを営む村でのホームステイ、農作業体験、伝統工芸品の制作体験などが人気です。異文化交流を通して、観光客はタイの文化や自然をより深く理解でき、同時に地域経済の活性化にも貢献できます。

タイへのビジネス進出で押さえるべきビジネスマナー

タイへのビジネス進出で押さえるべきビジネスマナー

タイでのビジネスを成功させるためには、現地の文化や慣習を理解し、それらに応じたビジネスマナーを身に付けることが重要です。敬意を払う姿勢や時間の使い方、言葉遣いが重要視されるため、これらのポイントを押さえておくことで、円滑な取引や信頼関係の構築が可能です。

通勤時間前後の打ち合わせは避ける

バンコクを中心とした都市部では、朝夕の通勤時間帯に深刻な交通渋滞が発生します。特に、車やバイクが道路を埋め尽くし、公共交通機関であるBTS(スカイトレイン)も混雑するため、移動に通常の2倍以上の時間がかかることも珍しくありません。そのため、ビジネスミーティングを設定する際は、通勤時間帯を避けるのが賢明です。タイでは、フレキシブルな勤務時間を採用する企業も増えているため、午前10時以降や午後の比較的落ち着いた時間帯にアポイントを設定するのが望ましいでしょう。

国王と仏教に敬意を払う

タイでは、国民の約95%が仏教徒であり、国王は憲法上「宗教の保護者」として敬われています。そのため、ビジネスを行う際にも、王室や仏教に対する敬意を示すことが重要です。例えば、公の場で国王を批判することは厳禁であり、仏像や僧侶に対する軽率な言動も避けるべきです。また、寺院を訪れる際は、肌を露出しすぎない服装を心がけ、慎んだ態度で参拝しましょう。また、「ワイ」と呼ばれる両手の平を合わせる伝統的な挨拶を行うなど、小さな配慮の積み重ねが、タイのビジネスパートナーとの信頼関係を築く上で役立ちます。

正式文書は仏暦を使用する

タイでは通常、公的な文書や契約書などに「仏暦」が使用されます。仏暦は、西暦に543年を加えた年号で表されます。例えば2025年は仏暦で2568年です。ビジネス上の書類や請求書などで仏暦を使用しないと、正式な文書としての信頼性に欠ける結果を招く恐れがあるため、十分に注意が必要です。仏暦の使用に慣れるためには、ビジネス文書を作成する際に仏暦と西暦の対応表を用意し、正確な日付を記載する習慣を付ける方法がおすすめです。

名前の呼び方に注意する

タイ人の本名は長く複雑なものが多いため、ビジネスシーンでは一般的にニックネームが使用されます。初対面の際やフォーマルな場では、「クン」という敬称を名前の前につけて呼ぶのが基本です。また、親しい間柄では、年上の人には「ピー」、年下の人には「ノーン」を付けて呼ぶこともあります。相手の名前の呼び方を間違えないよう、名刺交換の際にしっかりと確認し、適切な呼び方を心掛けることが重要です。

タイでのビジネスを成功させるならIT技術の導入が重要

タイでのビジネスを成功させるならIT技術の導入が重要

タイ政府は「タイランド4.0」を掲げ、産業構造の高度化とデジタル技術を活用した持続可能な経済成長を目指しています。これは先述の通り、労働集約型の製造業から知識集約型の産業への移行を促し、スマートテクノロジーを活用した新しいビジネスモデルの創出を後押しする政策です。政府の予測によると、デジタル変革によって2030年までに年間750億ドルもの経済価値が生み出されるとされています。

デジタル化が進む中、企業が競争力を高めるためには、IT技術の活用が重要です。ITを活用することで、業務の自動化や効率化が進み、企業全体の生産性が向上します。例えば、ERPを導入すれば、販売管理、在庫管理、財務管理を一元化し、リアルタイムでのデータ共有も可能です。

CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)は、タイ市場でのIT導入を支援しており、グループ会社であるCTC Global (Thailand) Ltd.は、パソコンやサーバ、ネットワーク機器などのITインフラの販売をはじめ、システム構築、アプリケーション開発、データ分析ソリューションなど、幅広いITサービスを提供しています。

CTC Global(Thailand)Ltd.の強みは、豊富な実績と高度な技術力を持つ点にあります。タイ市場に精通した専門チームが現地の企業に最適なソリューションを提案し、ITインフラの構築からシステム開発、セキュリティ対策まで幅広いソリューションを提供し、導入から運用までの包括的なサポートを行っています。

まとめ

まとめ

タイは持続的な経済成長が見込まれるほか、地理的な立地条件や外国企業へのさまざまな優遇措置などがあり、ビジネスが展開しやすい環境にあります。日系企業にとっては、英語でビジネスを行える、日本の製品・サービスの需要が拡大傾向にある、施設・人件費などが安く抑えられるなどの魅力があります。

タイでビジネスを成功させるには、現地の文化や商習慣を理解し、適切なビジネスマナーを実践することが重要です。また、市場における競争力強化に必要な、IT技術の活用やDXの推進を行う必要もあります。

タイにおいてオフィスや工場の新設、セキュリティ対策等のIT導入を検討中、あるいはお悩みを抱えていらっしゃる場合は、ぜひCTC Global (Thailand) にご相談ください。お客様のビジネスの成功をサポートし、課題解決を支援します。

CTC Global (Thailand)公式HP

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