クラウドサービスの普及が進む中、製品の開発設計で利用されるCAD/CAM/CAEソフトについてもクラウド化の波が押し寄せています。そこで本記事では、CAD/CAM/CAEソフトをクラウド化するメリットと有名ソフトについてご紹介します。
CAD/CAM/CAEソフトのクラウド型とインストール型の違い
クラウドサービスの普及が進む中、製品設計や解析などに使われるCAD/CAM/CAEソフトウェアについてもクラウドサービスで利用できる製品が増えています。クラウド型のCAD/CAM/CAEは、従来のインストール型の製品と比べて何が違うのでしょうか。以下では、双方の違いについて解説します。
インストール型ソフトの特徴とメリット
インストール型のCAD/CAM/CAEソフトの場合、ユーザーは自社でハードウェアを整備し、自社のローカルコンピューター、あるいはローカルネットワーク内でアプリケーションを使用することになります。つまり、いわゆるオンプレミス型の運用形式です。インストール型ソフトはコスト面の負担が重くなる一方で、自社に合わせてシステムをカスタマイズしやすいことが大きなメリットです。
また、基本的にローカルネットワーク内の限られたユーザーしかシステムにアクセスできないので、セキュリティを確保しやすいのも利点です。さらに、インストール型のソフトはネットワークの速度や帯域幅に依存するクラウドベースの CAD システムと比較して、より迅速かつ安定的なレスポンスを維持しやすいという長所もあります。
クラウド型ソフトの特徴とメリット
インストール型と比べたクラウド(SaaS)型のCAD/CAM/CAEソフトの大きな強みは、設備投資を最小限に抑えられることです。クラウド型ソフトは、ハードウェアなどの先行投資が必要ないため、組織はプロジェクトを迅速に開始すると共に、投資を失うことなく運用を終了することができます。
また、クラウド型ソフトでは、システムのメンテナンスやアップデートなどをユーザー側でする必要がないので、自自社のIT部門の負担を低く抑えらるだけでなく、ユーザーは常にベンダーから最新のソリューションを受け取り利用することが可能です。
さらに、クラウド型ソフトではインターネットを介してサービスを享受することになるので、場所や時間、あるいは使用デバイスに囚われずに仕事をすることが可能です。チームがいつでもどこからでもデータにアクセスできれば、より迅速に開発を促進できます。また、クラウドならではのスケーラビリティや柔軟性の高さも大きな魅力です。
CAD/CAM/CAEソフトはクラウド化するべき?
上記の特徴やメリットは、CADをオンプレミスで使うか、クラウドで使うか検討する際に念頭に置くべきことです。クラウドベースのCADが適している企業もあれば、オンプレミスベースのCADが必要な企業もあります。インストール型かクラウド型か選択する際の基準としては、以下の要素が挙げられます。
インストール型が向いている企業
- CADを自社に最適化するようにカスタマイズしたい企業
- セキュリティ面を重視したい企業
- 予算が潤沢な大企業
クラウド型が向いている企業
- 迅速にCADを導入したい企業
- システムに柔軟性や拡張性を求める企業
- システムの保守管理の手間を削減したい企業
- 多様な場所やデバイスでCADを使いたい企業
- コストを抑えたい中小企業やスタートアップ企業
ただし、セキュリティ面について言えば、とりわけ予算や人員、技術力が限られている中小企業の場合、かえってクラウド型の方が安全であるという見方もあります。というのも、現在のクラウドベンダーはセキュリティ面も十分に配慮しており、小規模な事業者が独自に導入できるレベルよりも高いレベルのセキュリティを提供している場合も多いからです。
それゆえクラウド型かインストール型かは、自社の技術レベルや予算面も考慮しながら選ばねばなりません。そういう意味では、インストール型は予算や人員が豊富な大企業向け、クラウド型は限られたリソースを有効活用したい中小企業やスタートアップ企業向けと言えます。
クラウド型ソフトを使う時の注意点
クラウド型のCAD/CAM/CAEソフトを使う際には以下の点に注意が必要です。
データの管理方法
クラウドでの運用は、複数のユーザーにデータ共有できる点はというメリットがありますが、バックアップデータなどデータ管理に関してルールを決めておく必要があります。
また、製品選びの際にも設計データに加えた変更履歴や派生部品データの管理など、設計データのバージョン管理ができる製品を選ぶのも有効です。
ネットワーク環境の整備
クラウド型はネット上での操作・編集・管理に依存するため、高品質なネットワーク環境が必要です。インターネットが使えないことにはCADプログラムへのアクセスができず、仕事もできません。設計ファイルは時に非常に重い容量になる場合もあるので、接続スピードも重要です。インターネットの速度が遅いと、パフォーマンスの快適性に大きな影響が出てしまいます。
セキュリティの強化が必要
クラウド型はインターネットを介して、不特定多数の人がデータにアクセスできる状況になるのでセキュリティの強化も大切です。自社の機密データが情報漏洩など起こさないように、不正アクセスの防止対策やID・パスワードなどの管理方法の見直しを実施しましょう。
クラウド型で有名なCAD/CAM/CAEソフト3選
最後に、一般的に良く知られているCAD/CAM/CAEソフトの中から、クラウド型のものソフトを3つ紹介します。(2021年12月1日現在の情報です)
Fusion360(Autodesk)
Fusion 360は、アメリカのAUTODESK社が提供する3DCAD/CAM/CAEソフトです。Fusion 360は、3DCADのモデリング機能に加えて、3DCAMやレンダリング、解析、アセンブリ、2次元図面などの機能が搭載されています。Fusion 360は導入のしやすさが非常に際立つ製品で、学生や個人ユーザー、スタートアップ企業などは3年間無料で利用可能です。有料版の場合も月額7,700円、年額の場合は割引が利いて61,600 円からと、充実した内容に比してとても安価に提供されています。こうした導入・運用のしやすさからFusion 360は中小企業や個人ユーザーにとって最高の選択肢になりえます。
<Fusion 360の価格>
7,700円/月(年間契約の場合は61,600 円/年)
無料プランあり
Onshape(CYBERNET)
CYBERNETが提供するOnshapeは、機械設計が可能な完全クラウドベースの3D CADです。「完全」とはどういうことかと言えば、クラウド型CADは通常、データこそクラウド上に置きますが、アプリケーション自体はローカルに置くのが通例だからです、対して、Onshapeの場合、正真正銘、ローカルには何もいらず、演算処理もクラウド上で行われるため、ハイスペックな端末やOSもいらず、ソフトウェアをインストールする必要もありません。それゆえユーザーは、モバイルデバイスからでもCADを操作可能です。ただし、その弊害としてインターネットの状態に動作がさらに影響されやすくなる側面もあります。OnshapeもFusion 360と同様、無料から始められるローエンド向けの製品です。
<Onshapeの価格>
Standard:161,500円/年
Professional:226,100円/年
Enterprise:323,000円/年
無料プランあり
CATIA 3DEXPERIENCE(ダッソー・システムズ)
CATIA 3DEXPERIENCEはフランスのダッソーシステムズ社が提供する高機能CADソフトです。先の2製品に比べてはハイエンド向けの製品に位置付けられます。CATIA 3D CATIA 3DEXPERIENCEには、スタイリングデザイン、メカ設計、電気および流体設計、システムズ・エンジニアリングなどをサポートする50を超えるロールが含まれており、自動車・航空機・宇宙事業などの大規模事業で特に活用されています。なお、CATIA 3DEXPERIENCEにはクラウド型だけでなく、オンプレミス版でも提供されています。
<CATIA 3DEXPERIENCEの価格>
要問い合わせ
https://www.ctc-g.co.jp/solutions/3dexperience/index.html
まとめ
クラウド型CADは従来のインストール型CADに比べて、コスト面に優位性があるほか、場所や端末を選ばずに利用できることや、システム管理の負担を減らせることが魅力です。ぜひ導入を検討してみてください。
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