OpenAI一強時代が到来?
北米のトレンドから見る「AI市場」【前編】

 2024.07.04  デジタルビジネスシェルパ

世界中で注目を浴びているAIは今年、新たな局面を迎えようとしています。これは2023年に進んだ大企業による投資合戦や、新たなAI技術への期待、そしてAIを取り巻く市場が活性化しているためです。今回は、北米におけるエンタープライズ向けITトレンドや投資トレンドから、最新のAI市場に関する状況を紹介します。

OpenAI一強時代が到来?北米のトレンドから見る「AI市場」

デジタル化を推進すべき”23の領域” とは?

AIに向かうエンタープライズITトレンド

エンタープライズ向けのITトレンドは、続々と登場する新しい技術を取り入れるために、刻々と変化し続けています。私たち伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、北米での市場規模や成長性などをもとに調査したデータによると、2024年のエンタープライズ向けITトレンドは、そのどちらも大きいものとして、4つの分野があると考えています。4つの分野とは、サイバーセキュリティ、ビッグデータ・アナリティクス、オープンソース、そしてAIです。

231116 CTCアメリカ紹介.pptx P01

私たちは、これらの分野に勢いのある企業の調査・協業を北米にて推進しています。例えば、データ領域におけるETL(ELT)ツール「Fivetran」や、オープンソースにおけるAIの民主化を掲げる「MindsDB」、次世代アーキテクチャAIの「Liquid AI」などが挙げられ、どれも目覚ましい成長を遂げています。
そして、AIが注目されるとともに、AIと取り巻く要素としてAIインフラも、合わせて重要になります。
AIインフラとは、AIモデルを開発・実行する上で必要となるハードウェア技術を指しています。高性能なGPUは勿論、それに代わるTPUやIPU(まとめてxPUとも)次世代のチップ、高負荷のサーバーの排熱問題を解消する水冷技術など、さまざまあります。

「生成AI」に関する実態・意識調査 調査報告レポート - 2024年5月度版 -
AI活用お客様事例集 -国内取組事例10件紹介-

ITトレンドを取り巻くカオス構造はOpenAIへと集約?

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引用:CES 2024 — January 9-12, 2024 - Green Revolution Cooling (grcooling.com)

こうしたなか、技術やサービス以外にも、さまざまなニュースの発表もありました。特にMicrosoftの動きは顕著で、OpenAIとのパートナーシップはよく知られています。
AI関連のITは様々なレイヤーの技術が日々新しいものが出現するカオス構造になっていますが、現時点では実態としてMicrosoftとOpenAIを中心に動いているといっても過言ではありません。

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資金調達の観点でも2023年は、Microsoftはもちろん、GoogleやAmazon、NVIDIAといった企業が、大規模言語モデル(LLM)関連を中心にスタートアップへの投資を行ってきましたが、MicrosoftがOpenAIに対して行った投資は群を抜いた額となりました。
市場や技術者からの期待が高まる一方で、このような寡占状態に対抗する形で新たなスタートアップも日々登場しています。特にオープンソースで技術を提供することで、近年はその名に反してクローズドソースのスタンスを取るOpenAIとの差別化を謳うものが出現し、クローズドソース対オープンソースの構図も注目されています。ただ、直近ではMicrosoftもそういったオープンソースのAIスタートアップの中で非常に有力な存在であったMistralとの提携を発表するなど、やはり目が離せません。

汎用AI「AGI」に高まる期待とAI Infrastructureの進化

このようにAIに対する期待は大きなものとなっていますが、「AGI(Artificial General Intelligence)=人工汎用知能」も重要なキーワードになっています。
これまでのAIは、特定のタスクに特化したものでした。これが、チャットによるコミュニケーションを行うAIが画像・動画生成AIを機能として取り込んでいくようになっているのはChatGPTをお使いの方であればご存知かと思います。AGIは更にこの先の概念で、汎用的な知能を持つAIで、人間のあらゆるタスクを解決できるAIを指す概念です。
AGIがいつ、どのように実現されるかは議論がありまだわかりません。しかし、AIよりも遥かに高度な処理が必要となり、高度なAIインフラストラクチャーが要求されることは確かです。私たちはこうした状況を踏まえ、注目すべきポイントは3つあると考えています。

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まずLLMの課題解決です。LLMはChatGPTの浸透により急激に注目度が高まりましたが、大量のリソースを消費すること、いわゆるハルシネーションという誤った情報を出してしまうことなど様々な問題があります。モデルを小さくしても高い精度が得られるのがいわば理想形であり、SLM(Small Language Models=小規模言語モデル)といった概念も登場しています。
次に、AIインフラストラクチャーで述べたようなハードウェアです。現状この領域においてNVIDIAが大きく先行しており、ここ1年間での株価の上昇にも市場の期待が強く反映されています。しかしながら、xPUと総称されるような新しいハードウェアが登場することでこれがどう変化していくかが注目されています。
最後に、消費電力や発熱の問題です。これはハードウェアと密接する課題ですが、AIが気軽に使える時代になったので、その裏には電力を大量に消費することを知らないユーザーも多いかもしれません。AGIの実現という未来には、ハードウェア・ソフトウェア両方のさらなる進化が不可欠ですが、ユーザーの意識も今後課題になってくるかもしれません。

いまもっとも重要なのは生成AIを取り入れること

これまで、北米におけるエンタープライズ向けITトレンドと、AIに関連する最新動向を紹介しました。
誰もがAIを扱える時代になり、新規ビジネスやサービス開発もAIを何かしらの形で取り入れることがもう当たり前といえます。しかしながら、いまだにAIを導入できていないという企業も少なくないことも事実なのです。この流れにいかに遅れを取らないかが最も重要になってきます。

後編に続く

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