近年、クラウド上で仮想的なデスクトップ環境を使える「DaaS」が注目されています。DaaSは、テレワークを実現するためにも有効な手段です。本記事ではDaaSの概要や種類、導入するメリット・デメリットなどについて解説します。DaaSの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
Desktop as a Service(DaaS)とは?
「DaaS」とは、クラウド上の仮想的なデスクトップ環境を使えるサービスのことです。DaaSは「Desktop as a Service」の略で、「ダース」と呼びます。
企業がDaaSを契約した場合、従業員はネットワーク経由でクラウド上の仮想デスクトップにアクセスして使うことが可能です。仮想デスクトップ上で操作するデータはクラウド上に保存され、手元のパソコンには残りません。
働き方改革が推進され、テレワーク・リモートワークの導入が進む近年、DaaSはそれらを実現する手段として注目されています。自宅や外出先からでもインターネット経由でDaaS上のデスクトップにアクセスし、業務を行えるためです。
Desktop as a Service(DaaS)には3タイプが存在
DaaSには「プライベートクラウド」「バーチャルクラウド」「パブリッククラウド」の3タイプが存在し、それぞれ違った特徴やメリット・デメリットがあります。DaaSを導入する際は、この3タイプのうち、どれが自社に適しているかを検討することが必要です。以下、それぞれのタイプの概要について解説します。
プライベートクラウド
自社専用に構築されたクラウド環境上でDaaSを提供するタイプです。プライベートクラウドタイプのDaaSを選ぶメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 自社専用なので柔軟なカスタマイズが可能(OSやソフトウェアなども自社の自由に選択できる)
- 自社専用の独立した環境を使うため、セキュリティ性に優れる
- 独立したクラウド環境のリソースを自社のみで使えることから、動作が軽く快適
その反面、3タイプの中でコストは最も高くなります。
バーチャルクラウド
サービス事業者が保有するクラウド環境(IaaS/PaaS)上で、仮想デスクトップ環境が使えるタイプです。プライベートクラウドのように環境が100%独立してはいませんが、ほかの企業が同一のDaaS環境を使うわけでもありません。
そのため、プライベートクラウドに比べれば劣るものの、一定以上のセキュリティ性が確保されています。カスタマイズ性にも優れており、先にご紹介したプライベートクラウドと、これから紹介するパブリッククラウドの中間的な位置にあるタイプといえます。
なお、「IaaS」とはクラウド上のCPU・メモリ・ストレージ・ネットワークといったコンピュータリソースを使えるサービスをいい、「PaaS」はクラウド上のプラットフォーム・アプリケーションの実行環境を使えるサービスのことです。
パブリッククラウド
不特定多数のユーザーが使うクラウド環境(パブリッククラウド環境)で提供されるタイプのDaaSです。パブリッククラウドのDaaSは他企業と共有して使うことから、カスタマイズ性は高くありません。セキュリティ性に関しても、上記2つと比べると見劣りします。
その反面、必要となるコストは3タイプの中で最も安価です。そのため、ほかと比較して導入しやすいタイプといえます。
DaaSの比較ポイント
DaaSにおける3タイプのうち、どのタイプを選ぶべきかについては、企業ごとのニーズによって異なります。比較する際のポイントとしては、主に以下が挙げられます。
セキュリティ性
3タイプで比較すると、他企業と環境を共有するパブリッククラウドが最もセキュリティ性に劣り、ほか2タイプが高くなります。ただし、3タイプともデータが手元の端末に残らないため、一定以上のセキュリティは確保されるといってよいでしょう。
また、パブリッククラウドタイプのDaaSでも、サービスによりセキュリティ性の高さは異なります。ベンダーによっては、しっかり対策をしている例も少なくありません。
カスタマイズ性
最もカスタマイズ性に優れるのはプライベートクラウドであり、次点でバーチャルクラウドが続きます。この2つであれば、ほぼ自社の希望通りにカスタイズできるでしょう。一方、プライベートクラウドは他企業と共有の環境であることから、カスタマイズ性についてはあまり期待できません。
コスト
3つのタイプではパブリッククラウドが最もコストが安く、反対に最も高いのはプライベートクラウドです。バーチャルクラウドは中間に位置します。ただし、オンプレミス環境で仮想デスクトップ環境を構築する場合に比べれば、プライベートクラウドのほうがコストを抑えられます。
運用負荷
パブリッククラウドではサーバーやネットワークの運用をすべて業者側が行ってくれるため、運用負荷はあまりかかりません。一方、ほかの2タイプは、サーバー・ネットワークの運用を自社で行うか、そうでなければアウトソースして行う必要があります。そのためパブリッククラウドに比べ、運用負荷が高い傾向にあります。
これらのポイントをもとに、どのタイプが自社に合うか検討するとよいでしょう。
DaaSのメリット・デメリット
DaaSは利用企業にとってメリットが多い反面、デメリットもあります。DaaSを導入する際は、どのようなメリット・デメリットがあるか、あらかじめ把握しておきましょう。
DaaSのメリット
DaaSのメリットとして、以下の点が挙げられます。
デスクトップの管理を一元化できる
テレワークのため従業員に端末を貸与したり、私用の端末を使わせたりする場合、デスクトップ環境を会社側で管理・監視するのは困難です。その点DaaSなら、デスクトップ環境がクラウド上に集約されるため、一元的に管理できます。
セキュリティ強化
DaaSでは、手元の端末にデータが残りません。そのため従業員が端末を紛失し、社内データが漏えいしてしまうリスクが軽減されます。また、十分にセキュリティ対策がとられていない私用端末と比べ、デスクトップのセキュリティをしっかりと管理できます。
リソースを柔軟に使える
DaaSはクラウド上で提供されるため、必要な分だけリソースを契約・利用できます。リソースが足りなくなれば、簡単に追加可能です。そのため、自社でサーバー機器を購入して仮想デスクトップ環境を用意するより、ずっと柔軟にリソースを利用できます。自社サーバーの場合、リソースが足りなくなったときは、サーバー機などをその都度追加で購入しなくてはなりません。
DaaSのデメリット
DaaSのデメリットとして、以下の点が挙げられます。
障害発生時の影響が大きくなるおそれがある
仮にDaaSが運用されているクラウド環境に障害が発生した場合、すべての仮想デスクトップが使えなくなる可能性があります。どのくらい影響が大きくなるかは、環境やサービスによっても異なりますが、サービスの安定性は非常に重要です。どのような対策がとられているか、契約前にチェックしましょう。
遅延が発生する可能性がある
DaaSではネットワークを経由し、デスクトップ環境が手元の端末へ配信されます。そのため、ネットワークに大きな負荷がかかる点は注意しなければなりません。負荷の状況によっては遅延が発生し、デスクトップで行う作業に支障をきたす可能性もあります。DaaSを使う際は、十分な帯域を備えたネットワーク環境が必要です。
まとめ
DaaSとは、仮想的なデスクトップ環境を使えるクラウドサービスです。企業専用のプライベートクラウドタイプのほか、不特定多数で共有するパブリッククラウドや、その中間に位置するバーチャルクラウドがあります。DaaSを使うことによって、デスクトップ環境を一元管理できるうえ、セキュリティの強化が可能です。また、クラウド上で使えるため、リソースを柔軟に活用できる点もメリットとして挙げられます。
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