Microsoft Azure上で利用できるAzure NetApp Filesは、大規模データを処理できるクラウドサービスです。Azure NetApp Filesの機能や特徴、メリットについて、導入によるパフォーマンスの変化、バックアップシステムの違い、移行の簡単さなどを解説します。
Azure NetApp Filesとは
Azure NetApp Filesとは、Microsoft社が提供するクラウドサービス「Azure」上で利用できるフルマネージドストレージサービスのことです。データの書き込みを効率的に行えるネットアップ社(NetApp.G.K.)のストレージOS「ONTAP」をベースにしているので、大容量のデータ書き込みや読み込み時などに高いパフォーマンスが期待できます。
Azure NetApp Filesはオンプレミスのネットアップ社ストレージと高い互換性があり、幅広い作業において作業負担のサポートが可能です。サービスレベルやパフォーマンスレベルを選択し、アカウント、容量プール、ボリュームの作成といったサーバ―構築から障害やセキュリティの監視・対応などさまざまな処理が行える特徴があります。またAzure Virtual Desktop利用時には、ファイルサーバーなどとして利用できます。
Azure NetApp Filesのメリット
Azure NetApp Filesには、大規模なSAPシステムを快適に利用できる、バックアップシステムが充実しているなど多くのメリットがあります。クラウドへの移行やストレージ管理が簡単にできるため手軽に導入でき、セキュリティの高さから安心して運用することが可能です。
大規模なSAPシステムを快適に利用できる
Azure NetApp Filesを導入した場合、起動時のメモリ展開にかかる時間やオンラインバックアップ、SAPクライアントコピーなどの処理を高速化できます。Azure NetApp FilesではNetAppの高い性能を活用でき、高速なファイルストレージプロトコルNFS4.1がサポートされているため、起動時やLinuxその他アプリケーション、複数のファイルを起動する際などに待機時間、起動時間の短縮を実現します。
Azure NetApp FilesはSAP S/4HANAなどの基幹系システムに組み込まれていて高速のNFS4.1を利用することで、短時間でのオンラインバックアップが可能です。さらに、SAPクライアントコピーの高速処理も可能になっているため、作業時間の効率化によりテレワーク中にも快適な環境で利用できます。
Azure NetApp FilesはSAP S/4HANAが公式にサポートしているため、運用上でわからないことや問題が起きた場合のサポートが受けられるメリットもあります。
バックアップシステムの充実さ
Azure NetApp Filesでは、スナップショットを利用してオンラインバックアップイメージを取得できます。Azure NetApp Filesのスナップショットは、ある一定時点におけるファイルシステムのイメージです。取得予定のスケジュールと保持期間を設定しておくと自動で取得されるため、自分でバックアップをとる必要がありません。システムの稼働中に重要なファイルを消してしまったり、データが破損したりしたときに、スナップショットのバックアップイメージを使用してデータの復旧ができます。
スナップショットではアクティブデータブロックのメタ情報を取得するだけなので、バックアップデータの容量を抑えて高いパフォーマンスで処理が行えます。スナップショットのオンラインバックアップでは、新しいボリュームの作成(クローン)、ボリュームの復元、リージョン間のレプリケーション、ファイルの復元、データの長期保有といったデータ保護機能を活用可能です。
ストレージ管理が容易
ストレージ管理が簡単に行える点もAzure NetApp Filesのメリットのひとつです。Azure NetApp Filesは従量制課金ファイルストレージサービスのため、Azure上のさまざまなリソースと同じくフルマネージドで利用できます。データベースや回線、アプリケーションなどの管理をマイクロソフト社が行っているフルマネージドのクラウドサービスなので、ユーザーが自分で管理しなければならない部分はそれほど多くありません。
自分でストレージ管理を行う際には、通常の使用でもユーザーがよく使っているAzurePotalのエクスペリエンス、PowerShell、REST APIなどを利用できます。Azure上の他サービスと同じく短時間で設定を終了でき、シームレスで楽に管理することが可能です。
Azure NetApp Filesではパフォーマンスレベルが異なる「スタンダード」「プレミアム」「ウルトラ」の3種類のワークロードが提供されています。データベースのバックアップや静的サイトなどの利用に適した(1TBあたり16MB/秒)の「スタンダード」、データベース、エンタプライズアプリ分析などに適した(1TBあたり64MB/秒)の「プレミアム」、高いパフォーマンスが必要なアプリ利用時に最適な(1TBあたり128MB/秒)の「ウルトラ」など、取り扱うストレージに適したパフォーマンスレベルも簡単に設定できます。
クラウド移行を簡単にできる
Azure NetApp Filesは、ひとつのサービスに対してNFSv3、NFSv4.1、SMB3.1.xなど複数のファイルストレージプロトコルがサポートしているため、LinuxとWindows両方にシームレスで移行することが可能です。クラウドへの移行は、多くのアプリケーション、アプリケーションのファイルベースのデータでコード変更せずにリフトアンドシフトができます。
クラウドへの移行は、最初にNetAppアカウントを作成してから容量プールを作成、ボリュームを作る手順で行います。ストレージには、SAP(データベース)やOracle(データベース)、VDI(仮想デスクトップ)、ファイルサーバーなどさまざまなサービスを利用できます。
導入時には、正常稼働が出来ているか、オンラインバックアップが可能か確認する「機能検証」と、HANA起動時の所要時間、オンラインバックアップ、クライアントコピーなどが問題なく実行できるか確認する「性能検証」を行い、確実に移行を完了します。
セキュリティ対策が万全
Azure NetApp Filesには、データ暗号化やアクセス制御などさまざまなセキュリティ対策が設定されているので、高いセキュリティで安全にデータベースを利用できます。Azure NetApp Filesでは、データ保存時に「米国連邦情報処理標準規格FIPS140-2」準拠のデータ暗号化、社員やプロジェクトの関係者などが業務上必要なシステムにだけアクセスできる権利を持つ「ロールベースのアクセス制御」が設定されています。
また、企業内で部署ごとにドメインを作り、ネットワーク上の人や物などのリソースを階層的に管理する「Azure Active Directory認証」、ネットワークベースのアクセス制御リストなどのセキュリティ対策が行われており、優れたセキュリティ環境で作業が可能です。
まとめ
Azure NetApp Filesは、Azure上で利用するフルマネージドストレージサービスのことです。データの書き込み、読み込みパフォーマンスが高く、大容量のデータ処理が行える特徴があります。
Azure NetApp Filesを導入すると、大規模SAPシステムを快適に利用でき、重要なデータを自動でバックアップできる、ストレージ管理を短時間で簡単にできる、高いセキュリティ環境で利用できるなどたくさんのメリットがあります。クラウド移行も簡単にできるため、容易な移行で業務の効率化が可能です。
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