近年では、オンラインを介したサービスが増加し、企業は24時間365日体制でのITシステム運用や、不具合発生時の迅速な対応が求められるようになりました。AIOpsが注目を集めているのも、このような背景があるためです。本記事では、AIOpsの概要やメリット、代表的なツールなどを解説します。
AIOpsとは?
AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)とは、IT業務を効率化するため、AIや機械学習を用いてビッグデータを解析する手法です。導入によって膨大なデータの自動分析やパターン検出が可能であり、課題の抽出や未来予測によって効率化を実現できます。
現在、多くの企業がいくつもの情報システムを運用しており、従来に比べて扱うデータの量は増加傾向にあります。また、ビッグデータの蓄積や分析を行える環境が整備されたことで、AIOpsに注目が集まるようになりました。
AIOpsのメリット
AIOpsの導入を検討している企業にとって、気になるのは得られるメリットではないでしょうか。メリットとしては、DX化の推進や、コスト・人員の削減、問題解決のスピード向上などが挙げられます。
DX化の推進
DXとは、デジタル技術を活用したビジネスの創出や体制の変革を指します。企業がDX化を推進するうえで、まずはシステムを問題なく運用・管理できる環境を構築することが大切です。
IT環境の規模が大きくなるにしたがって、システムが複雑化し稼働が不安定になるケースも少なくありません。膨大なデータの処理と活用が可能なAIOpsを導入すれば、このような環境下でも迅速に障害を検知でき、効率的な原因の特定と対応の策定が可能です。システムの稼働を安定させるとともに、監視・運用業務の負担を軽減するなど、企業のDX化をサポートしてくれます。
コストや人員の削減
AIOpsを導入すれば、自動でさまざまなデータを迅速かつ正確に収集できます。そのため、従来よりも少ないリソースでIT業務を遂行でき、効果的なコストダウンが可能です。
情報システム部門で業務に勤しむ、担当者の負担軽減にも役立ちます。膨大なデータの収集や処理をAIOpsが担ってくれるため、大幅に工数を削減でき、負担も減ります。その結果、従業員の仕事満足度や従業員ロイヤルティがアップし、高いモチベーションのもとでコア業務に注力できるようになるのがメリットです。
問題解決のスピードが向上
AIはより多くのデータから学習し、パターンを見つけ出すほど問題解決のスピードが向上します。問題解決を重ねるほど、よりスピーディーに解決できるようになるため、業務の停滞や機会損失、クレームの発生なども回避できます。
精度の高い解決方法をAIが学習すれば、それ以降は人力で判断、対処する手間が少なくなります。AIが迅速に問題の特定と抽出、改善を行えれば、コスト・人員の削減も可能です。
AIOpsの用途
AIOpsをどのように活用するのかは、企業によって異なります。一般的には、IT業務の自動化やパフォーマンス監視、分析、異常検出、イベントにおける根本原因の分析、ITサービス管理などの用途に用いられます。
自動化
IT業務の自動化によって、大幅な業務効率化や生産性の向上を図れます。ただ、さまざまなツールやシステムを用いた自動化は、いくつもの媒体から膨大なデータを集める必要があり、人力で実現するには膨大な手間とリソースを必要とします。
AIOpsでは、複数ソースを横断した情報収集や学習が可能です。効率的に情報を集められるため、各種業務の自動化も速やかに進められます。
パフォーマンス監視・分析
AIOpsは、ITシステムのパフォーマンス監視にも活用できます。ITシステムのパフォーマンスが低下すると、処理速度の遅延や不具合の発生などを招くおそれがあり、業務に支障をきたしかねません。
AIOpsを導入すれば、このようなリスクを回避できます。AIがシステム稼働に起因するイベントデータを収集、分析することで、パフォーマンスが正常かどうかを判断し、問題が発生している場合には根本的な原因の特定を行います。
異常検出
ITシステムの異常は、通常業務を阻害するだけでなく、顧客や取引先へも迷惑をかけるおそれがあります。特に、システムダウンやリンクダウンといった重大な障害が発生すると、機会損失につながるだけでなく、顧客や取引先の信頼も失いかねません。
このような事態の回避に、AIOpsが役立ちます。AIOpsは、過去のデータやスコアに基づき状況を分析し、一定の条件をオーバーした値を異常と判断します。大きな異常だけでなく、データ分析なしでは見落としやすい異常も素早く検知できるため、迅速な対策が可能です。
イベントの根本原因の分析
発生したイベントの根本原因が分からないことには、適切な対策を行えません。根本原因を把握することで、迅速かつ適切な対策が可能となり、予防にもつながります。
AIOpsは、膨大なイベント情報の解析が可能です。イベントの重要性と類似性を軸に分類を行うため、ノイズとなる不要なイベントを避けて、どこに根本的な原因があるのかを突き止められます。分析結果から対処の必要性やどう対処すべきかを判断できるため、対応策を検討する手間の削減につながるのもメリットです。
ITサービス管理
ITサービス管理とは、社内の従業員が業務に使用するITサービスを管理することです。
ITサービスが使用できなくなる、処理に時間がかかるといった不具合が発生すると、業務に支障が出るかもしれません。AIOpsを利用すれば、前述のように迅速な問題の特定や対処を行えるため、このようなリスクを回避できます。
その他にも、利用履歴をもとにした予測からリソースを活用したり、データ基盤のパフォーマンスを最大化するといった効率的な管理に役立てられます。
AIOpsの代表的なツール・プラットフォーム
AIOpsは、さまざまな企業がサービスとして提供しています。導入を検討しているのなら、まずは代表的なツール・プラットフォームから検討しましょう。
Splunk
「Splunk」は、アメリカに拠点を構える「Splunk Inc.」が提供しているAIOpsツールです。統合ログ管理ソフトであり、ネットワーク機器やアプリケーション、サーバなどから収集したログの解析、ビッグデータ活用などが可能です。
世界で2,200社以上が活用している実績があります。また、13,000人以上がコミュニティに参加しているほか、1,800人以上のSplunkエキスパートが設計や導入をサポートしてくれるため、初めて導入する企業も安心です。
OpsRamp
「OpsRamp」はアメリカで事業を営む「OpsRamp Inc.」が提供しているAIOpsツールです。既存システムとの連携やリソースの可視化、モニタリング、自動化が可能であり、システム環境の一元管理も行えます。
クラウドで提供されているIT運用管理プラットフォームであり、エンドツーエンド監視やノイズの少ない的確なアラート通知など優れた機能を実装しています。
IBM Watson OpenScale
IBM Watson OpenScaleはアメリカのIBM社がリリースしたAIOpsツールです。他のAIOpsツール・プラットフォームとは趣向が異なり、AIが正常に稼働しているのかどうかをテストします。
通常、AIの稼動時に結果を導くまでの経路を確認することはできず、利用者が信頼性を評価することは困難です。こちらのツールを導入すれば、AIのふるまいからどの程度正しい判断をしているかどうかを確認できるため、安心してAIを利用できます。
まとめ
AIOpsは、AIを用いたIT運用管理を指し、対応するツールやプラットフォームの導入によって業務効率化、生産性向上などのメリットを得られます。パフォーマンス監視や異常検知、ITサービス管理などさまざまな用途に利用でき、企業におけるIT運用をしっかりとサポートしてくれます。この機会に導入を検討してみるのもひとつの手です。
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