データドリブン経営は、ビジネスで成功する鍵として今や多くの企業が注目するトピックです。その際、データの価値を最大限に引き出し、組織の競争力を高める重要な要素となるのがデータガバナンスです。本記事では、データガバナンスとは何かという基本知識から始め、その要点や実践のポイント、役に立つフレームワークについて解説します。
データガバナンスとは
データガバナンスとは、データの利活用を監督し、データマネジメントを円滑に遂行するためのハンドリングをすることです。組織内のデータ活用におけるルールやガイドラインを策定し、それらを遵守するための体制を整えることを指します。
データガバナンスとデータマネジメントの違い
データマネジメントとは、膨大なデータを利活用するためにデータを適正管理するための取り組みです。他方で、データガバナンスにおいては、データマネジメントが企業の方針や価値観、リスク管理の観点から適切に行われているか監督します。
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データドリブン経営を実現するデータガバナンスの要点
現代の経営において、データが重要な経営資源であることは周知の通りです。意思決定の迅速化や精度向上を目指す企業にとって、データドリブン経営の実践は欠かせません。特に昨今ではAI技術の進展と共に、データの価値を効率的かつ最大限に引き出すことが一層重視されています。
これらの背景を踏まえて、データドリブン経営の実現をサポートするデータガバナンスでは、以下の4点を意識することが必要です。
- 基盤となるデータ活用のためのプラットフォームの整備
- 人財に対するデータリテラシーの向上
- データドリブン経営を促す企業文化の醸成
- データ活用の監督と推進のための組織・役割の設定
これらの点を踏まえたデータガバナンスを強化することで、データドリブン経営をよりスムーズに実現できます。
データガバナンスを実践する際のポイント
DMBOK2(データマネジメント知識体系ガイド第2版)では、データガバナンスの具体的な取り組み内容として以下のような要素が提示されています。
- データ戦略、データガバナンス戦略の定義と実行
- データマネジメントに関するポリシーの定義と実行
- データ品質とデータアーキテクチャの標準の定義と維持
- データマネジメントプロセス全般に対する監督者(データスチュワード)による監査と補正
- データに関する規制遵守の保証
- データマネジメントやガバナンスに関する課題の管理と解決
- データマネジメント プロジェクトの支援
- データ資産の価値評価
これらの取り組みを円滑に行うには、以下で紹介するように組織体制の整備やデータマネジメントに対する日々の運営が非常に重要です。
1. 組織体制の整備
組織体制の整備はデータガバナンスの成功に欠かせません。
まずは、高品質のデータを提供できる標準化された環境を構築することが重要です。この環境には、セキュリティやコンプライアンスに対応することも含まれます。
次に、組織の戦略に沿ったデータ分析や可視化を通じて、ビジネスプロセスの高度化、迅速化、そして正確性を向上させることが必要です。
また、データガバナンス組織は従来のIT管理部門とは別個に独立運営することが求められます。その運営には、コンプライアンス遵守やアクセス権限を監視するデータアーキテクトやデータスチュワードといった人員が必要です。
2. データマネジメントに対する日々の運営
データガバナンス戦略を成功させるためには、以下のような日常業務を通して適切にデータマネジメントすることも必要です。
- 社内で統一された形式へのデータ加工
- データの一元管理と蓄積
- データの分析
これらの業務サイクルを円滑に回していくために、データガバナンスによって適切に方向付けすることが重要です。そのほかでは、IT中心のプロセス(データ収集、クレンジング、プロファイリングなど)とビジネス中心のプロセス(データのタグ付け、キュレーション、管理など)を密に連携させることも鍵になります。
最後に、データガバナンスを成功させるには、IT技術者と実際にビジネスでデータを活用する業務担当者の協力体制も必要です。この協力によって、データの品質や取り扱いが改善され、結果的にビジネス価値を高められます。
データガバナンスを支援する主なツール
データガバナンスを効果的に実施する上では、様々なツールを有効活用することが重要です。以下では、その主要なツールと機能について紹介します。
マスタデータ管理
ビジネスで取り扱う各種のマスタデータに対し、一貫性のあるデータ定義を行い、複数のソースから取得したデータを統合管理します。異なるデータソース間のマスタデータの同期や変更管理、バージョン管理も行います。
メタデータ管理
メタデータには主に、テクニカルメタデータ、ビジネスメタデータ、オペレーショナルメタデータの3種類があります。メタデータ管理では、データの正確な解釈や利用、保護ができるようにデータを維持管理します。
データ品質管理
データ分析の精度を上げるには、その品質管理が非常に重要です。そのために、データのプロファイリング、マッチング、統合、修正、クレンジング、充実化などの処理を行います。
データリネージ管理
データリネージとは、データの取得・変更などのプロセスを追跡することです。データリネージ管理は、その追跡情報を視覚化し、データに問題が起きた時の調査などに役立つ判断材料を提供します。
ビジネス用語集
ユーザーがデータの意味を正しく理解するための組織標準の用語集を整備するツールです。組織内のデータ資産の共同利用を促進します。この用語集は、データガバナンスのプロセスを通じて整備され、用語の登録・更新・削除といった継続的なメンテナンスが行われます。
データカタログ管理
データカタログとは、各データの概要、位置、使用方法などの情報をまとめたもので、データの発見や理解を助けるものです。データカタログ管理ツールは、メタデータやビジネス用語集、属性情報などに対する検索可能なインベントリーを維持します。最新のデータカタログ管理ツールは、機械学習を用いてデータマネジメントやデータガバナンスに必要なタスクを大幅に効率化可能です。
データガバナンスを進める上で重視すべきこと
最後に、データガバナンスを進める上での注意点や対策を解説します。
従来型のデータガバナンスの取組みでは、ポリシーや規約の文書化、利用者に対する統制などデータを管理することに重点が置かれたものでした。こうしたアプローチはデータ利活用に対する実際のビジネスニーズを犠牲にしがちであり、データを活用する側の業務担当者の負担増大やビジネスニーズへの迅速な対応を妨げる一因となっています。
これからのデータガバナンスは、この問題点を認識し、より柔軟かつ効率的なアプローチをする方向にシフトしていくことが重要です。具体的には、様々なツールを用いてデータのアクセスと利用を容易にし、ビジネス上の成果や組織効率を最大化することが求められます。
また、ビジネスの専門家を中心としたコミュニティを形成し、利用者・管理者・監督者が協力し合ってデータを効率的に活用する人間中心的なアプローチも重要です。つまり、今後のデータガバナンスにおいては、データを単なる管理対象として位置付けるのではなく、競争力のある資産として活用する観点を最も重視すべきです。
まとめ
データドリブン経営を成功させるためには、ただデータを管理するだけでは不十分です。最新のデータガバナンスのアプローチは、データを組織全体で効率的に活用することを目的としています。そのためには、人間を中心としたビジネス活動を促進し、データ利用者、管理者、監督者が協力してデータを有効に活用する環境を作ることが重要です。このようにして初めて、データが真の組織資産として機能し、データドリブン経営が実現できます。
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