2021年10月29日にFacebookの最高経営責任者のマークザッカーバーグが会社名を「meta」(メタ)に変更しました。
社名変更の理由は、SNS事業の一つのブランド名称にすぎない「facebook」では現在のFacebook社が提供する多くのサービスやアプリ全体を現しきれていなくまた将来の事業を体現するにもふさわしくない事から。
新しい社名は、VRやMRといった技術で実現する次世代のプラットフォーム、また新しいインターネットそのものの姿である「メタバース」の構築に注力する事を示しています。
またメタバース構築に向けて今後2年間で約55億円(5000万ドル)の投資をする事も発表しています。
メタバースとは?
そもそもおさらいですが、メタバースとは何でしょうか?
Wikipediaによると、インターネット上の仮想世界の事。転じて、将来におけるインタ0ネット環境が到達するであろうコンセプトモデルや仮想空間サービスの通称としても用いられる。メタ(meta)とユニバース(universe)の合成語。
なんとなくイメージは沸きますが、実際により具体的にいうとどういう物でしょうか?
エンタメ・ゲームの領域ではメタバースの概念に近い事が実現できているサービスは
・フォートナイト(2017年)
https://www.epicgames.com/fortnite/ja/home
エピックゲームズが開発・販売しているバトルロワイヤルゲームで、オンライン上で100人と同時にプレイでき、最後に残った1人が勝ちになる。マルチプラットフォームでプレイできて、スマホでもパソコンでも同じフルCG環境内でプレイできる。
当初は単純なゲーム好きがゲームをする環境でしたが、近年非常に機能的にも事業的にも成長しています。
まずプレイヤーの数は2018年11月時点で2億人だった所が2021年6月時点では5億人を突破しています。
全世界で展開されている事もユーザー数増加の大きな要因ですが、単純なゲームを楽しんでいる人以外のユーザーが継続利用している点がユーザー数も売上も伸ばしている要素であります。
2020年には、米津玄師やアリアナグランデのライブが開催されましたし、2021年にも星野源などアーティストのライブが行われました。子供も、学校が終わってフォートナイトで戦おうではなく、とりあえずフォートナイトで集まって話そう。というようにゲームする場から一緒の時間を楽しむ場所となっています。
・あつまれ どうぶつの森(2020年)
https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/index.html
こちらの方が日本では有名だと思いますが、任天堂のあつまれどうぶつの森。
販売当初はSWITCHとあわせて品薄で欠品が続き、入手できる事の特別感も重なり、ブーム化していましたね。
あつもりを例に説明してみます。
①仮想空間に仮想の自分を作れる
匿名・顔出しなしの同じ条件で自分(アバター)を自由に作れ、そのアバターを介してコミュニケーションができる
現実世界と隔離されており、仮想空間内で行ったコミュニケーションはリアル世界に影響させないようにできる。
最近、日本でもyahoo!掲示板などで匿名のコメント・誹謗中傷が問題になっていて、Yahoo!がAI判定でコメント欄をOFFにする機能を実装・提供しましたね。あれは人は実名よりも匿名の方が行動的になれるって事だと思います。実名でも誹謗中傷がなくなる事はないといわれていますが、やっぱり実名では言えない事を匿名だからこそ発言できるという人は多いと思います。
②誰でも参加でき、アクセス人数は無制限
誰でも参加でき、複数人で同じ場所やイベントを共有体験でき、個性を表現したりコミュニケーションをとる事ができる
③経済活動が生まれる
あつもり内(メタバース内)で使うアイテムを課金して購入しゲーム内で使う。
フォートナイトでもアバターに持たせる武器や、着せる服などが沢山売っています。例えば5億人がプレイするフォートナイトでは人気のジャケットは1日で1億円も売れる事があるそうです。アバターが着る服をCGで作る原価は・・・。すごい利益率になります。
④データ・デジタルアセット・コンテンツの相互運用が可能
あつもりのデータはあつもりだけ。フォートナイトのデータはフォートナイト内だけで利用できる。というレベルから一段上のレベルに行く事がメタバースの必要要素になってきます。
一度購入・利用した3DCGやデジタルアセットが、複数のプラットフォームをまたいで利用できるようになる。こういう世界観が必要になってきます
⑤常にライブで同期されている
全世界でプレイする人がいるという事は、時差もあり24時間誰かがアクセスしている環境になります。
その仮想空間で起こったイベントは現実社会の時系列と全く同じに同期されています
だから、朝にスマホで行った事を夜にパソコンで見ても時系列にそった同じ仮想空間の時間経過を体験できます。
⑥終わらない
現実社会やインターネットの世界と同じく。メタバースの世界にも終わりはありません。
実際にフォートナイトもあつもりも、ずっと運営側がアップデートを繰り返し永遠に世界が続くように環境維持を行っています。
ゲーム以外で使うのか?
Facebookのメタバース構想に話を戻します。
まずはこちらのmetaが出しているコンセプト動画を見てください。英語ですが大分イメージをつかめます。
https://youtu.be/afdnbXXbBTg
ゲーム活用だけでなく、ビジネス・日常コミュニケーションで使っているイメージがそこにはあります。
ヘッドマウントディスプレイがもっと小型軽量化していく、またはスマートグラスのようなメガネ型になっていると思います。
現状よくあるヘッドマウントディスプレイを想像すると没入感はあるけど、ずっと使うには圧迫感もあるし、頭重いし、髪型崩れるし、外に持って行くには重いしと、かなり限れた環境でのみ使うイメージがあります。
さらに、インターネットに通常つながっている接点はスマホだけど、そのスマホ見れないよね。とか
ご飯やおやつ食べる時や、飲みものを飲むときどうするの?って思います。仕事やコミュニケーションする時にお茶のみますよね。
この中でスマホに関しては、metaの動画にもありますが、スマートウォッチからバーチャルの画面が広がってそこから電話したりメッセージを見たりができています。これができれば、メタバース内にいる時はもはやスマホみなくていいって事ですね。
むしろ大画面で複数画面同時に見れるので、便利になっていると思います。
食事や飲み物に関しては、MR対応で、その時だけカメラ映像で現実社会を見れるか、スマートグラス方式になるかですかね。
仕事でも私の場合、オフィスではディスプレイ3面分使って仕事をしています。メール・チャットツールで1画面。ブラウザで1画面。PPTやEXCELで1画面みたいな感じです。
なのでこの環境に慣れてしまうと、外出先でノートパソコンだけになった時に著しい生産性の悪化を感じます。出先でも仕事はできるんですが、効率が悪いなと帰ってからまとめてやりたいってなりますね。
これが小型軽量・つけても恥ずかしくないメタバース用デバイスがあれば、カフェでも、タクシーの中でも電車の中でもいつでも3画面体制、いや5画面くらい開きっぱなしで仕事できる時代になるんでしょうね。
そこは楽しみです。
メタバースの世界が広がれば共通アセットである3DCGコンテンツが重要になる
Facebookが社名をmetaに変更し、メタバース構想を語り、多額の投資を発表した事でメタバース関連市場は人気になっていますし、それだけで株価が上がっている会社も複数あります。
ですが、一般市民の生活にすぐに変化を感じる程、市場への展開が広がるとは思えません。
キャズムの谷ではないですが、まだ乗り越えなければいけないハードルはあると思います。
ただ、少なくとも確実に人類はメタバース実現への道を進み続けています。
その時に、仮想空間を作る一つ一つの要素はすべて3DCGになります。
今作った3DCGのアセットは、その時に必ず活用できる物になります。なにかしらの加工・変換は必要だとしても全く無駄になる事はありません。
また今から3DCGを作ってどう活用できるかを深く検討すればするほど、3DCGがメインのメタバース市場では、その中でどうマネタイズするか、どう生産性を高めるかという所に力を発揮できると思います。
まずは身近なテーマで3DCG・XRの活用を検討するところからスタートしてみてはどうでしょうか?
- カタログのCG化
- 販促資料、CMのCG化
- ショールーム、販売店、Shopのバーチャル化
- 商品プレゼンテーションのCG化・シミュレーション
- 商品企画・試作のXR利用
まだまだいくつも身近なアナログ業務の中でXR技術を使って業務改善できるネタはあります。
そしてそれらに今から取り組む事で、この検討プロセス自体をAI学習できるのでは?
など自社でだけ考えられる技術やサービスを生み出せるきっかけにも出会える可能性があります。
Meta(facebook)ではなく日本からのメタバース
Metaの社名変更で一気に盛り上がってきた感じはありますが、日本企業にも十分この領域で世界で戦えるチャンスはあると思います。あつまれどうぶつの森もそうですし、古くはファイナルファンタジーも今でもオンライン同時接続数はかなり多いそうですし、荒野行動というオンラインゲームでもフォートナイトと同じレベルに成長する可能性はあります。
Sonyも大復活しましたし、任天堂はずっと強いです。インターネットに国境はありませんし、もちろんメタバースにも国境はありません。誰でも同じチャンスが得れる環境ですので、日本から世界に誇れる技術が出てきて欲しいと思います。
今後もメタバース・XR市場の日本の技術には注目していこうと思います。
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株式会社カトルセ 代表取締役 橋本健太郎
大手住設機器メーカーでのIT企画・開発担当から、住宅業界向けSaaS(3D/EC)の開発・運営経験
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