【イベントレポート】CTC DX Days 2021 Chapter2
~DXノーマル時代を見据えたIT戦略~

 2022.02.28  2023.06.08

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、2021年12月にオンラインイベント「CTC DX Days 2021 Chapter2」を開催しました。本イベントでは、先進的なDXの取り組みをされている企業様による、DXの導入・活用事例についてのご講演やCTCの業務改革型DX「DIGITAL SHIFT」ソリューション、CTCアメリカ駐在員によるシリコンバレー発のDX最新動向が紹介されました。

本レポートでは、各ご講演内容の要点をお伝えします。みなさまにDX戦略策定におけるヒントをお持ち帰りいただければ幸いです。

デジタル化を推進すべき”23の領域” とは?

【基調講演】「デジタルサービスの会社」に向けたリコー流DXとクラウドシフト

リコー様

 株式会社リコー
 理事
 デジタル戦略部 基盤開発統括センター 所長
 小林 一則 様


1977年にリコーが提唱した「OA(Office Automation)」。オフィスで働くお客様を単純作業から解放し、いかに創造力を発揮できるお仕事に専念していただくか、これが私たちのミッションであり、過去も今もこれからもずっとお客様に寄り添い、それを実現していくため、リコーはデジタルサービスの会社に生まれ変わります。

2025年に向けた道すじでは、22年度にはプリンティングとオフィスサービス・デジタルサービスの営業利益が逆転、その次の年には売上高も逆転、25年度には営業利益でオフィスサービスが過半を占める。そういった会社に変革するための準備を進めています。

デジタルサービスの会社への変革の動きの中で『仕事のAI』第一弾サービスとして「RICOH品質分析サービスStandard for 食品業」を21年7月にリリースしました。食品製造業に特化したリコーの品質分析サービスです。お客様相談窓口やコールセンターなどに寄せられた「お客様の声(VOC:Voice of Customer)」を、AIが自動で分析し、業務効率向上に貢献します。

リコー流DX

リコーは2036年に創業100周年を迎えます。そのとき、お客様とともに成し遂げたい姿として掲げているのが「“はたらく”に歓びを」というビジョンです。そのために提供する価値として「Empowering Digital Workplaces(=EDW)」を挙げています。EDWは、デジタルとデータで囲まれた世の中で働くお客様、オフィス、現場をデジタルでつなぐことでどれだけ活性化できるのか、これが私たちの提供価値です。そのためには、自社が率先してEDWに取り組み、デジタル技術を使いこなす豊かな業務体験が欠かせません。こういった体験を持つ人材によってお客様に価値を提供していくことがリコーのDXです。

リコー流DXは、カスタマーサクセスを中心に据え、常にお客様に寄り添い、“はたらく”を変革するデジタルサービスの会社に変わっていくことです。そんなリコー流DXを加速するには5つの重要要素があります。それが「企業風土・人材」「デジタル基盤」「データ利活用」「社内プロセス変革」「顧客価値創造」の5つです。なかでもEDWに取り組む上で欠かせないのが「デジタル基盤」であり、その中でもITインフラに変革をもたらすクラウドシフトが重要です。

クラウドシフト

20〜30年前のレガシーシステムが稼働している企業も多くあり、DXを実現するためには老朽化したITインフラをいかにしてクラウドシフトしていくかが重要です。これは、分散しているビジネスプロセスの統合とITの刷新を同時に進め、グループ・グローバルの共通基盤統合プラットフォームを構築することで、経営管理改革と業務プロセス改革の実現を目指すのが狙いです。近年、ICTやテクノロジーの進歩とともに世の中が大きく変化しています。だからこそ、ビジネスを取り巻く環境の変化に対応できるよう、俊敏性と柔軟性に優れる経営基盤を構築しなくてはなりません。

現在、大規模なクラウドシフトプロジェクトが進行中です。22年9月にオンプレ基盤がEOSとなるため、対象システムの8割を一気にクラウドに移行するものです。短納期かつ大規模なプロジェクトを進めるにあたっては、クラウド移行の目的共有、情報の洗い出し、ビジネスニーズの整理、要件定義、難易度・重要度の棚卸を行った上で計画を策定し、実行に移している最中です。

リコーでは、クラウド化に向けた取り組みとして、社内ナレッジを集約し、クラウド活用によるビジネス価値向上を促進するため「CCoE(Cloud Centre of Excellence)」を設立しました。CCoEには3つのミッションがあります。1つ目はクラウド移行の意識を醸成する「コミュニティ」、2つ目はクラウド価値を最大化する「ルール&ガイドライン」、3つ目は要件や課題に合わせた「技術支援」です。この3つをコアミッションとして、社内ITシステムや外販向けITサービスのクラウド化を加速させています。

戦略的パートナーの必要性

大規模複雑なクラウドシフトプロジェクトを進めていくためには、戦略的パートナーの存在が欠かせません。先述したクラウドシフトを自社のリソースのみで実現するのは非常に困難です。そこでリコーでは、「クラウドでの豊富な実績」「オンプレでの長年の信頼感」「優れた第三者評価がある」という3点を総合的に評価し、CTCと戦略的パートナーシップを結んでクラウドシフトプロジェクトに取り組んでいます 。

まとめ

リコーは、MFPプリンターの会社からデジタルサービスの会社へと変革してまいります。その変革を進めていくのはリコー流DXであり、このDXを支えるのはクラウドシフトです。「“はたらく”に歓びを」というビジョンの実現に向けて、お客様と寄り添い、パートナーの皆様と一緒に会社の変革を、継続的な価値提供を続けていきたいと思います。

顧客体験価値向上DX「ストリーミングエンジンによる
マンガでわかるSnowflake

【特別講演】DX人材を育成する仕掛けづくり ~ 高い目標に本気でチャレンジ ~

DNP様_DX人材を育成する仕掛けづくり~ 高い目標に本気でチャレンジ ~.00_28_17_49.静止画002

 大日本印刷株式会社
 情報イノベーション事業部 ICTセンター センター長
 (兼)株式会社DNPデジタルソリューションズ
 代表取締役社長
 河西 正樹 様


1876年に創業した大日本印刷株式会社(以下、DNP)の企業理念は「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」です。DNPにとってのDXは『P&I(PrintingとInformation)イノベーション』による価値創造です。CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)が全社のDXを統括し、DXにおける価値創造を「新規ビジネス創出」「既存ビジネス変革」「社内システム基盤革新」「生産性の飛躍的な向上」という4つの領域に定義し推進しています。

「新規ビジネス創出」におけるDX事例

私が所属する情報イノベーション事業部の事業コンセプトは『DX for CX』です。最高の顧客体験を提供するための手段としてDXを推進します。「新規ビジネス創出」DX事例を4つご紹介します。
※詳細は各リンクにてご覧ください。

DX人材育成の仕掛けづくり

DX推進における我々の一番の課題は、DX人材の早期社内育成です。DNPでは、DX人材が備えておくべき必須要素(スキル・マインドセット)を社内で早期に一気に育成すべく、独自の育成環境の仕掛けづくりに取り組んでいます。

経営層自らがグローバル先進企業に足を運び、その企業文化に触れ、変革をリードする「会社として本気で取り組む」意思表示をし、制度と環境を整えています。また仕掛けづくりにおいて「ありたい姿・明確なゴール設定」「意図あるトレーニング環境の整備」「実務環境での実践」を繰り返しながら、高い目標に本気でチャレンジできる環境をつくり、DX人材育成を進めています。

注力している技術・手法

DXを推進するにあたり、DNPでは4つの技術・手法に注力し、スキル習得に向けた仕掛けづくりを実施しています。

Design Thinking

「デザイン思考での企画提案・事業創造の実践、企業風土としての定着」というゴールに向け、スキル習得者目標数を定め、スキル段階を定義しています。全国でアンバサダー制度を設け一気に広めると共に、各種デザインツールのそろった共創スペースを各拠点に設け、ワークショップやチャレンジコンテストなどを開催し、デザイン思考の習得に向けた仕掛けづくりを推進しています。

Cloud

Cloudスキル習得に向けた仕掛けづくりとして、技術者が切磋琢磨し合えるコミュニティをつくり、最新技術を学べる勉強会を定期開催しています。自由に最新技術を試行できるSandbox環境の提供、スキルレベル別に体系化されたプログラムの提供など、人材の知的好奇心や探究心を醸成する環境整備に取り組んでいます。

AI

AIの人材育成に向けた仕掛けづくりとして「AWS DeepRacer」を活用しています。「AWS DeepRacer」は、AIを搭載した自動走行型レーシングカーで、楽しみながら強化学習のアルゴリズムを学べる点が大きな特徴です。「世界一になる」という高い目標に向け、本活動は全て業務時間内での活動として管理職が活動を支援するなど「本気で挑めるトレーニング環境」を提供した結果、見事世界大会で優勝することができました。また、これらの取組みを大学の講義や子供向けに発信し、社会貢献活動にもつながっています。他にも、AIをテーマにしたハッカソンやKaggleにも積極的に参加し、世界基準の技術や知識を肌で感じられる環境を提供しています。

Agile

複雑で変化の激しい課題に対応できる『DNP流・真のAgile』を確立するために、外部コーチを招聘してコーチング、アジャイル開発ガイドラインの策定、認定スクラム研修の実施など、アジャイルの文化醸成に邁進しています。また、当該プロジェクトにはアジャイル開発手当を支給するといった制度を設け、会社としてしっかりとバックアップする環境を整えています。

まとめ

DX人材育成を進めていくためには、会社として本気で取り組むための制度や環境を整え、各人が設定した明確なゴールを目指せる仕組みづくりが大切です。そのために、世界基準を経験できる場づくりや、仲間と学び高め合いながらスキルを習得できる環境が必要です。その上で学んだスキルを実践の場で活かし、得られた成功体験がさらなるスキルアップに向けたモチベーションにつながると考えます。

我々DNPは人材を、そして組織をTRANSFORMATIONしながら、未来のあたりまえとなるイノベーションの創出にこれからも邁進し続けたいと思います。

【特別講演】さまざまな社会課題により変革するエンタープライズ市場のDXの取り組み

沖電気

 沖電気工業株式会社
 執行役員 (DX/イノベーション統括)
 (兼) ソリューションシステム事業本部副本部長
 (兼) 金融・法人ソリューション事業部長
 田中 信一 様

沖電気工業株式会社(以下、OKI)は、自社の強みであるAIエッジをはじめとした業務特化型の領域を中心として、パートナー企業様(お客様、SIer、プラットフォーマー)との共創によりDXを推進しています。100社を超えるAIエッジパートナー、交通、建設/インフラ、防災、金融・流通、製造、海洋など様々な分野の共創パートナー、革新的なソリューションを送出するオープンイノベーションパートナーと連携して「DXエコシステム」を構築することで、ビジネスの拡大を目指しています。

 AIエッジソリューション

AI処理を「エッジ領域」で汎用的に実行させ、クラウドとの連携により実現する「AIエッジコンピューティング」。その中核となるAIエッジコンピューター「AE2100」を用いた様々なソリューションが実装段階に入ってきています。例えば、360度自由な視点での俯瞰映像にAIを組み合わせ、人の目だけでは判断しづらかったものをAIの目で判断する「フライングビュー」。こちらは船舶の安全航行監視や遠隔からの自動操船など、本格運用に向けて実証実験を進めています。

金融分野への取り組み

OKIの金融エッジプラットフォームを活用した店舗デジタル変革ソリューション「Enterprise DX」を展開し、デジタルバンキングの加速や金融市場に新たなDXを提供しています。

事例:山梨中央銀行様

ネットワーク型セルフ入出金機「SmartCashStation」を活用し、窓口業務の軽量化と、現金取扱事務の軽減を実現。店頭タブレットとセルフキャッシャで取引を完結することで、窓口・後方要員の削減を図り、オペレーションとサービスの両軸において変革をもたらしました。

運輸・流通分野への取り組み

様々なセンサーを活用した機体センシングなどの空港DXソリューション、踏切監視や駅の混雑・人流分析などを行う鉄道DXソリューション、リモート応対窓口や非接触操作を実現する流通DXソリューションなど、様々な取り組みを行っています。

事例:東急様

東急様と進めているリモートコンシェルジュサービスは、OKIの雑音除去マイクやタッチレスセンサーなどを制御するミドルウェア「CounterSmart」を搭載したサイネージディスプレイを提供しています。非接触・非対面での快適な接客を実現すべく実証実験を進めており、観光案内業務のDXに取り組んでいます。

事例:西武鉄道様

「AIの目」により踏切内に留まる自動車や人を検知、踏切事故防止に貢献する「踏切滞留AI監視システム」の導入試験に参加しました。低照度カメラの映像をAIがリアルタイム解析を行い、異常を検知した際には現場の特殊信号発光機と直接連携して、列車の運転士に迅速に知らせることができます。

製造分野への取り組み

製造業向けDXソリューション「Manufacturing DX」は、OKI自社工場のノウハウと実績あるDXソリューションをベースに、多くの製造業のお客様が抱える課題を解決し、スマート工場の実現をご支援します。

事例:ジヤトコ様

手順が複雑で作業負担が大きい品質検査工程に対し、プロジェクションマッピング技術と画像センシング技術を活用したOKIの「プロジェクションアッセンブリーシステム」を導入。映像による作業のガイド化、不具合発生時の早期改善、品質の安定・向上を実現しました。課題だったOJT教育指導でも、熟練作業者に負担をかけることなく新人作業者の習熟期間短縮を実現、ローコスト化につながっています。

事例:OKI「外観異常判定システム」Google Cloud™連携

OKIが提供する映像AIで製造現場の検査工程を省力化・自動化する「外観異常判定システム」に、Google Cloud™の高速かつ高精度の品質管理を実現する「Visual Inspection AI」を組み合わせ、AIによる学習モデルの自動生成機能と自律型検査機能を追加しました。AI知識がなくても導入・運用が可能となる本システムを、2022年春にスマート工場として稼働を開始する本庄工場に導入します。

スマート工場「本庄工場新棟」

2022年4月に竣工する新工場は、地域社会と共存し、災害に強く、環境負荷低減に配慮したスマート工場です。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の最高ランクである5星を獲得、大規模生産施設として国内初となる『ZEB(Net Zero Energy Building)』認定も取得しました。OKIのDXソリューションを実現し、モノづくり基盤強化のフラグシップ工場として運営していきます。

まとめ

エンタープライズ市場のDXの取り組み事例をいくつかご紹介しましたが、一社のみでのDX推進は困難です。いかに共創パートナーと共に進めていくか、これが重要となります。これからもOKIは共創パートナーとともにDX推進に積極的に取り組んでまいります。

【ユーザー様事例講演】「かんたん1分注文」サービスで生協の注文をさらに便利に

コープ1

 コープデリ生活協同組合連合会
 宅配・EC事業本部 宅配インターネット事業部 開発グループ
 グループ長 櫻井 恵梨子 様


コープ2 コープデリ生活協同組合連合会
 情報システム ECシステム部 ECシステム課
 企画担当 岡部 晶彦 様

 

【櫻井氏】コープデリ生活協同組合連合会は、「CO-OP ともに はぐくむ くらしと未来」という理念のもと事業活動を進めています。組合員数、事業高は年々伸びていて、昨年度の組合員数は512万人、総事業高は6,286億円となりました。事業としては週1回注文された商品をお届けする「ウイークリーコープ」、週3日からお弁当やミールキットをお届けする「デイリーコープ」がある宅配事業、合計150店舗を展開している店舗事業、そのほかにも福祉事業、保障事業、サービス事業、エネルギー供給事業などさまざまな事業を展開しています。

かんたん1分注文サービス

【櫻井氏】『かんたん1分注文』は、宅配事業の「ウイークリーコープ」のインターネット注文サイトで展開しているサービスです。コンセプトは「時短かつ利用者のくらしに寄り添うツール」で、利用者の購入実績をもとに、商品の選好性や購入サイクル、購入シーズン、平均購入金額などを考慮して、今週のおすすめ商品と数量を自動で表示します。利用者は自動表示された商品を確認して注文ボタンを押すだけで買い物ができ、1分間で注文を完了することができます。

利用者からは、
「注文にかかる時間が劇的に短くなって、とても助かっています」
「カタログで見落としていたものがあったので助かった」
「次回SALEの予告がわかりやすくてとても良い」など喜びの声が届いています。

CTCとの共同について

【岡部氏】『かんたん1分注文』のサービスをリリースする契機となったのが、2018年にCTCから受けた「AIを用いた新たな注文の考え方について」の提案です。その後、CTCとの合同で検討を進め、2019年12月に同サービスをリリースしました。当初は1分で注文が完了するのは注文忘れへの救済策となると考えていましたが、運用が始まると「時短」のメリットが際立つようになりました。

商品を提案する技術は、CTCが産学連携によって開発したAI自動学習を活用しています。また同サービス基盤の構築は、運用の負荷を軽減する工夫がされています。既存のEC基盤にある注文機能と、過去の注文履歴などを蓄積・格納しているDWHを連携させることで、コストを抑えた開発に成功しています。

今後の取り組み

【岡部氏】サービスリリースから半年後に実施した利用者アンケートではお褒めの言葉の他に、システム改善につながるようなご要望の声も寄せられました。「二週に一度程度頼むものなどを提案してもらいたい」といったご要望に対して、同じ商品でも一人一人の適切なタイミングで商品提案をすることで、利便性を向上させます。例えば、ある商品の受注状況を検証した結果、多くの利用者が隔週で注文している傾向が高いことがわかりました。商品ひとつひとつに対して周期性ロジックの検証を行い、システムに組み込んでいく開発を実施しています。

『かんたん1分注文』は「利用者のくらしに寄り添う」をコンセプトに誕生しました。これからもコンセプトを大切に、利用者の声を真摯に受け入れ、スピード感をもって改善に取り組んでいきます。

【CTC講演】Digital Transformation Next ~ シリコンバレー発DXレポート ~

CTCA ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.
 Business
Development
 Director 高橋 紘樹

 

ITOCHU Techno-Solutions Americaから、新型コロナウイルス感染症のパンデミック変遷により、シリコンバレーのDXトレンドがどのように変化したかについてご紹介します。

リモート / バーチャル

パンデミック第1期(2020年3~6月)のキーワードは「リモート・バーチャル」です。第1期では感染症対策としてリモートワークが浸透し、リモートワークツールへの投資が急増しました。特にビデオ会議システムの需要が高まり、その代表格といえるZoomのユーザー数が急激に拡大しています。Zoomの普及で会議の場所が不問になり、米国各拠点の自宅からシリコンバレーの企業で働けるようになりました。そこで注目されたのが、コミュニケーションの方法です。

従来型コミュニケーションであるメールやチャット、会議などは同期型です。リアルタイムでコミュニケーションできる反面、仕事が中断されてしまうのがデメリットになる場合もあります。そこで2020年からシリコンバレーでは、ITツールを駆使した非同期型のコミュニケーションが盛んになっています。中でも急成長しているのが、プロジェクトマネジメントツールAsanaです。Asanaの利用でコミュニケーションが円滑化し、プロジェクト進捗も可視化され、メンバーが自発的に仕事をこなせるようになります。

デリバリー

パンデミックによって物流に混乱が生じ、日常品の購入さえ困難になる時期がありました。これを背景に、パンデミック第2期(2020年7~10月)で注目を集めたのが「デリバリー」です。米国ではあらゆるモノやサービスをオンラインでオーダーできる環境が、整えられました。EコマースのAmazon、レストラン向けのDoorDash、食料品・日用品向けのInstacartなどのビッグプレーヤーが台頭し、デリバリーサービスが急激に拡大・普及したのです。またモバイルでオーダーして店舗で受け取るオプションや、ドローン・自動運転車による配達など、顧客志向のサービスも相次いで登場しました。デリバリーサービスの普及は、ライフスタイルに大きな変化をもたらしました。

セルフサービス

パンデミック第3期(2020年11月~2021年6月)の前半、米国で感染者が急増しましたが、やがてワクチン普及により感染者が減少し、人々が外に出る機会が増加します。しかし接触機会の増加による感染リスク低減のため、「セルフサービス」が注目を集めるようになりました。例えば、店舗スタッフに質問をするのではなく、消費者が自分で調べられるツールを提供して接触機会を減らしていくといった動きです。その結果、Amazon Goなどのセルフチェックアウト系や各種企業が提供しているチャットボット、または健康管理アプリケーションといったサービスが急成長しました。ワクチン普及で人々の移動が再開しても、引き続きリモート系の技術が拡大している要因の一つに、セルフサービスへの需要の高まりが考えられます。

オンサイト

パンデミック第4期(2020年7月~2021年6月)はワクチンの普及により、人々が「オンサイト」に向かう状況が加速されました。そこで安全対策が注目され、それに関する新たなデジタル化も成長してきています。しかし人々がオンサイトに向かう中で、意外にもバーチャル化が注目を集めています。バーチャル化は、第1期で普及したリモート/バーチャル、また第3期で浮上したハイブリッドワークにも関連しています。

ワクチンが普及しても米国の各企業では、引き続きリモートワークが主流となっており、オンサイトワークとリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークというキーワードが良く用いられています。またハイブリットワークとバーチャルに関連したイベント関係のテクノロジーとして、オンサイトイベントの代替手段となるバーチャルイベントが注目されていました。しかしそのブームは収まり、最近はオンライン上の仮想空間メタバースが注目を集め、今後さらなる拡大が予想されています。

また、アプリケーションを支えるインフラ技術のトレンドもご紹介します。規模感が大きく、成長性も高いのが「サイバーセキュリティ」と「ビッグデータアナリティクス」の2領域です。これらは米国で急成長しており、日本にもすぐに必要になる技術カテゴリーと考えられます。

Digital Transformation Next ~シリコンバレー発DXレポート~(CTC DX Days 2021 chapter2 講演資料)

【CTC講演】DX時代におけるセキュリティリスク対策とは

小野さん

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
 エンタープライズビジネス企画室
 デジタルビジネス推進第1部
 部長代行 小野 友和

 

働き方改革(ワークシフト)により自宅など会社の外から端末を接続する機会が増加し、さらにはクラウドシフトにより重要なシステムやデータがクラウド環境上に置かれるようになりました。このようなDX時代において、どのようなセキュリティの考え方でリスク対策をおこなっていったらよいかご紹介させていただきます。

DX時代におけるセキュリティリスク対策とは

従来はファイアフォールなどを設置し外部の脅威から社内を守る境界防御でしたが、DX時代においては、ワークシフトやクラウドシフトにより境界外に広がったあらゆる人・場所・デバイスなどにセキュリティ対象が拡大しています。さらに、不正ログイン・シャドーIT問題・クラウド環境上での情報漏洩問題やランサムウェア問題など、新たなセキュリティリスクにも対策をし、DX環境の立ち上げをしていく必要があります。これに対し、2021年9月28日にリリースされた内閣府のサイバーセキュリティ戦略においてもDXとサイバーセキュリティの同時推進(DX With Cybersecurity)が基本戦略として掲げられ、国としてDX環境のセキュリティ対策を推進しています。(出典:「サイバーセキュリティ戦略」(NISC))

我々CTCにおいても『新デジタルトランスフォーメーション』といたしまして、DXの環境にセキュリティを付加した形で提供させて頂き、より安全安心にDXを推進して頂けることを今後のコンセプトとしていきたいと考えています。

ゼロトラストモデルとは

ゼロトラストモデルとは「決して信頼せず、必ず確認する」という前提に基づくセキュリティモデルです。DX時代においては、あらゆる人・場所・接続方式・デバイスを信じずに防御するというゼロトラストの考えに基づきセキュリティに向き合っていくことが必要です。それでは、ゼロトラストモデル実現のために強化が必要な3つの領域についてご説明いたします。

①エンドポイントセキュリティ強化

サイバー攻撃が高度化・多角化しており、防御網を突破され侵入されるのが当たり前となりつつあります。そのため、エンドポイントセキュリティを強化し、侵入された場合を想定したセキュリティ体制の構築が求められます。

それを実現するのが、侵入された後の防御対策を行うEDR(Endpoint Detection and Response)です。従来の侵入防御の仕組みに加えて、ユーザーやサーバなど端末の振る舞いを全て検知した上で侵入後の攻撃活動を監視し、脅威を発見した際には影響範囲の早期特定を行って拡散防止を行った上で即座に連絡し対策を行い、情報漏洩など攻撃を成立させない仕組みとなります。EDRは導入後の脅威発見などの運用サービスを含めた対策が重要です。

②ネットワークセキュリティ強化

リモートワーク環境では、仮想化されたプライベートネットワークのVPNを利用する、あるいはマルウェア対策用の機材を別で導入するといった対策を行っている企業が多いかもしれません。その場合、自宅や外出先、サテライトオフィスなどからの接続に対し、同一のセキュリティポリシーを適用するのは困難な状況かと思います。

そこで登場したのが、統合型クラウドセキュリティプラットフォーム「SASE(Secure Access、Secure Edge)」です。SASEを用いることで、自宅や外出先などからの接続をクラウド上に集約し、そこからのアクセスに対して一元的にセキュリティポリシーを適用する仕組みを整備できます。さまざまなリクエストやトラフィックを一元化し、認められたユーザーとデバイスのみ許可するという、ゼロトラスモデルに基づくネットワークセキュリティの構築が可能です。

③クラウドセキュリティ強化

クラウドセキュリティ強化では、主に2つのポイントがあります。1つ目はすべてのクラウド利用ネットワーク通信に対し、セキュリティポリシーの適用と利用状況の可視化を行うこと、2つ目はクラウド環境におけるガバナンスやコンプライアンスが遵守されているかという点です。この2つのポイントを満たすためには、「CASB(Cloud Access Security Broker)」と「CSPM(Cloud Security Posture Management)」が必要です。

CASBは、クラウドサービスへのアクセス可視化や不正アクセスの防止、セキュリティポリシーを一元的に適用するといった機能を有するソリューションです。CSPMはクラウドサービスの利用状況を統合的に管理し、全体のセキュリティ評価やコンプライアンスの監視を行います。この2つのセキュリティソリューションを活用することで、ユーザーが安全にクラウドを利用できる環境を構築できます。

最後に

弊社では、サイバーセキュリティ分野における取り組みとしてNISTのサイバーセキュリティFrameworkに基づいたリスク特定から復旧までに至る全フェーズのサービス提供を実施しており、現状のセキュリティ分析や方針・既定の策定から運用に至るまで、様々なDX環境に則したセキュリティ対策の導入をご支援しています。

安心安全にDXを推進するためのサイバーセキュリティ環境を一緒にお提供させて頂く形で、
今後も皆様のDXの実現を支援させていただきたいと考えています。

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