事業規模が一定以上大きくなると、データベース活用を視野に入れる必要があります。店舗の在庫管理で考えると、商品点数が増えるほど帳簿やエクセルで管理するのが難しくなるため、仕入・出庫・販売・在庫といった複数の情報を管理するためにデータベースが欠かせません。さらに、顧客情報という管理項目が加われば、一層のことデータベースの力を借りなければ正しいデータ管理が行えなくなってしまいます。
一般的にデータベースというものは、「DBMS(データベース・マネジメント・システム)」のことを指しています。DBMSは一定の法則に従ってデータを蓄積・整理・統合して、好きなときに検索・収集・加工できるシステムです。
本稿でご紹介するのは、このデータベースを構築する基盤が「クラウド」と「オンプレミス」では何が違うのか?についてです。合わせて、クラウドデータベースのメリットについても分かりやすくまとめていきます。
「クラウドデータベース」とは?
データベースの役割は「データの蓄積・整理・統合と、それに伴うデータの活用」です。店舗におけるデータベースは一般的にPOSシステムに接続され、販売した商品の情報や購入者情報などをどんどん蓄積していきます。
一方、社内でのデータベースは基幹システムなどに接続され、日々の業務によって生まれるデータを蓄積していきます。通常、基幹システムとデータベースの関係は1対1なので、基幹システムの数だけデータベースが存在することになります。
基幹システムとデータベース(を構築したサーバー)は社内LANで接続され、リアルタイムにデータやり取りが行われます。こうしたオーソドックスな環境を「オンプレミスデータベース」と呼びます。
このオンプレミスデータベースに代わって注目を集めているのが「クラウドデータベース」です。文字通り、クラウド上に構築されたデータベースのことを指します。
クラウドとはインターネット上で提供されるサービスを指す言葉であり、現在ではさまざまなクラウドサービスが展開されています。その中には、サーバーが持つリソースをクラウド上で提供するサービスがあり、そうしたサービスを使って構築したデータベースのことをクラウドデータベースと呼ぶのです。
クラウドデータベースの特徴
クラウドデータベースはオンプレミスデータベースと決定的に違う特徴がいくつか存在します。それこそが、クラウドデータベースが注目されている理由であり、構築するメリットでもあります。
OS、ソフトウェアのインストールが不要
オンプレミスデータベースを構築するためには、システム基盤となるサーバーにOSとDBMSソフトウェアをインストールする必要があります。さらに、利用も目的に応じてインターフェースを構築する必要があります。
クラウドデータベースではこの作業が不要です。クラウド上に置かれたサーバーにはデータベースに必要な環境がすでに整っているため、インストール作業はもちろん、インターフェース構築も不要な場合があります。
バックアップ機能が標準搭載されている
データベースを構築するためのサーバーには、RAID構成によってデータの冗長性が保たれます。しかしながら、有事に備えたバックアップ作業は欠かせません。通常、オンプレミスデータベースにはバックアップ機能が搭載されていないので、手動で行うのが基本です。
一方、クラウドデータベースはサービスを提供する事業者が、複数のデータセンターにて分散管理を行っている場合が多いため、バックアップを心配する必要が無くなります。
利用料金がI/O数、時間、データ量で決まる
コスト面に目を向けてみると、クラウドサービスは初期投資においた大きなメリットがあります。オンプレミスデータベースを構築するためには、サーバーやDBMSライセンスの購入、ネットワークスイッチ、その他ソフトウェア、人件費など諸々の費用がかかります。規模にもよりますが、数百万円から時には数千万円にも上るでしょう。
一方、クラウドデータベースのほとんどは初期費用が無料です。利用料金はデータのI/O数、使用時間、データ量に応じて従量課金制なので、必要に応じた分だけの出費になります。
オンプレミスデータベースはダイナミックさや柔軟性という点において優れたシステム基盤です。しかし、初期投資が非常に高額なことやシステム運用負担が大きいことなどから、導入を躊躇するケースが少なくありません。クラウドデータベースはそうした課題をクリアしながら、実態に即したシステム基盤を構築していけることに注目が集まり、人気となっています。
その他、クラウドデータベースのメリット
オンプレミスデータベースと比較した際のクラウドデータベースの違いについて解説しましたが、実は他にもクラウドデータベースを利用するメリットがあります。
スケールアップ・アウトが容易に行える
データベースを構築したサーバーの性能には限りがあるため、保管するデータ量が増えるほどリソースを消費します。そして限界が近づくと、それ以上データを保管できなくなるため、対策を取らなければいけません。加えて、システムに対してデータベースの性能が追い付かなくなると、同様に対策が必要です。
その際に実施するのがスケールアップ、スケールアウトという対策です。これはより性能が高いサーバーに買い替える(スケールアップ)か、サーバーを増設する(スケールアウト)という選択になります。
オンプレミスデータベースでこの対策を実施するとなると、一定時間システムを停止しなければいけないため、業務が遂行できなくなります。また、データベースの移行やサーバー増設に伴ってさまざまなトラブルが予測されます。特にスケールアップでは数時間は業務が停止しますし、リスクも多いので現実的に不可能な対策です。
一方、クラウドデータベースではサーバーのスケールアップもスケールアウトも、管理画面から変更を加えることで簡単に行えます。それに伴い利用料金は変動しますが、追加コストが発生することはありません。
セキュリティの強化が期待できる
クラウドデータベースを利用するにあたり、「目に見えない所にデータが蓄積されるからセキュリティが心配…」という声が少なくありません。実際にデータはサービス提供事業者が管理するデータセンターで管理されるので、一抹の不安がぬぐえないのが実情です。
しかし、最近ではクラウドデータベースを利用する方がセキュリティの強化が期待できるという認識が拡大しています。サービス提供事業者の多くはシステムやデータセンターに堅固なセキュリティ対策を実施していることから、企業独自に実施したセキュリティ対策よりも高度な場合がほとんどです。そのため、クラウドデータベースを利用すること自体がセキュリティ対策に繋がります。
クラウドデータベースを検討しよう!
一部のクラウドデータベースでは、長期利用を前提に契約することで費用を大幅にカットできるケースがあります。オンプレミスデータベースに課題があることも確かですが、これだけのメリットがあるのでこの機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか?
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