取引先との接点の変化とマーケティング施策
~営業とマーケティングの連携で生まれる新たな価値~【前半】

 2024.03.29  2024.11.19

取引先との接点の変化とマーケティング施策~営業とマーケティングの連携で生まれる新たな価値~【前半】

「情報収集段階で見込み客の57%が購買プロセスを完了している」といわれる現代で、有効なマーケティング施策とは何でしょうか。DXの立ち上げを担ってきた伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の佐藤氏と、伊藤忠インタラクティブ(IIC)のデジタルマーケティング事業部で戦略の策定を担う冨田氏・安永氏に、滝澤氏が尋ねます。

滝澤 保志伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業グループ デジタルビジネス推進第2部
滝澤 保志


2003年 伊藤忠テクノサイエンス株式会社(当時)入社。CTCの取り扱うネットワーク製品の選定、提案、導入支援に従事。
2012年より CTCのASEAN地域における海外事業の立上げに従事し、途中4年間のタイへの駐在期間も含め日系企業のITシステムのコンサルティングを中心にグローバル展開する企業のサポートを担当する。2019年より企業のDX推進を担当する。

佐藤 元信伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業グループ デジタルビジネス推進第2部
佐藤 元信


2003年 伊藤忠テクノサイエンス株式会社(当時)入社。製品サービス主管のプリセールス支援やアカウント営業として大手自動車メーカー、食品卸・メーカーなど担当。 ベンチャーキャピタルへの出向や食品卸と共同で新規事業の企画創出を経験し、2019年よりDX領域で「データマネジメント」「新規事業創出支援」「デジタルマーケティング」など多様な施策の立ち上げに従事。
冨田 健介伊藤忠インタラクティブ株式会社
デジタルマーケティング事業部 デジタルソリューショングループ プロデューサー・ストラテジープランナー
冨田 健介


大手書店を経て、エンタメ系出版社にて海外事業を立ち上げ統括プロデューサーを担当韓流コンテンツの輸入および東アジア展開を見据えた日韓エンタメ事業(文化交流含む)を推進。
その後、BtoBマーケティング支援会社のディレクター、メディカル系ポータル会社の営業コンサル、デザインファームのデジタルマーケティング、サステナブルブランドコミュニケーションのプロデューサーを経て、現職。主に事業開発、サービス開発、データ活用等のデジタルマーケティング上流における戦略設計、プロデュース、PMOを担当。

安永 和功伊藤忠インタラクティブ株式会社
デジタルマーケティング事業部 デジタルソリューショングループ マーケティングディレクター
安永 和功


通販事業者(基礎化粧品/サプリメント販売)でマーケティングディレクター/制作ディレクター/セールス コピーライターとして従事した後、Webマーケティング事業者にてオンライン英会話スクールなどBtoC商材のマーケティング戦略・販売戦略の策定、KPI設定、Webサイト制作ディレクションなどデジタルマーケティング全域を担当。
広告制作会社にてプロデューサーを経て現職。BtoB、BtoCを問わずデジタルマーケティング領域における戦略立案・KPI設計・施策立案、新規ビジネス立ち上げ支援、新規ビジネスサービス設計、Webディレクション、UI/UXデザイン、インサイドセールス設計、GA4分析など担当。

デジタルマーケティングソリューション

取引先との接点はどう変容しているか?

滝澤氏
本日は、これからのマーケティング施策について、BtoBを中心にお話しいただきたいと思います。お客様と企業との接点は、どのように変化しているのでしょうか。

安永氏
BtoB取引においては、Web広告やコーポレートサイト、オウンドメディアなどが接点になっています。リアルな接点としては展示会やセミナーなどがありますが、お客様が製品を選定するために行う情報収集は、Webで完了しているケースが増えているとの調査結果が、アメリカのデータ分析会社CEB(Corporate Executive Board Company)とGoogleとの共同研究によって出されています。この調査によれば、見込み客の実に57%が情報収集の段階で購買を決定しているといいます。

取引先との接点はどう変容しているか?

この結果から、見込み客の態度変容や興味関心の予測の精度をこれまで以上に高めるようなWebサイトへの仕掛けが必要だと見ています。

滝澤氏
営業担当者を通したリアルの取引が接点の中心だった時代が終わり、デジタルの接点を有効利用する時代になっていると考えてよさそうですね。

BtoB企業の営業・マーケティング活動におけるデジタル活用支援のご提案
販売代理店ビジネスにおけるWebマーケティング基盤の活用

マーケティングで顧客ニーズを顕在化し、営業の精度を上げる

佐藤氏
最近の企業間取引においては様々チャネルが設定されています。誰が、どのような情報を見るためにWebサイトを訪れているのか頻度はどの程度なのかといた情報や、マーケティングイベント、商談会とどう関係するのかといったことを、検討・分析したいといったニーズをよく耳にします。例えば既存顧客に対しては、そのお客様の課題を想定し、Webサイトの情報が解決策として有効なのかといった分析を行うなどです。

滝澤氏
お客様との関係構築はどのように変化しているのでしょうか。

佐藤氏
マーケティングの担当者が、対象とする商品サービスに対するお客様の検討状態がどのレベルにあるのかを測ることができれば、営業部門の担当者に対し、具体的な商談に繋がるリードを提供できます。従来のBtoB取引において、顧客との関係構築を担ってきたのは営業部門ですが、初期の関係構築にマーケティング部門が重要な役割を担うようになってきている認識です。

冨田氏
これまで多くの企業は、素朴な方法でWebサイトを訪れたお客様のニーズを把握しようとしてきました。例えば、営業担当者がSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)とにらめっこをしながら導き出したり、ルート営業のなかで培った経験と勘を用いて手探りで確定させたりといった方法です。デジタルマーケティングにおいては、お客様がどこからアクセスしているのかを位置情報から特定してWeb広告を打つソリューションはあったものの、あくまでも顕在化されたユーザーを集客するような機能しかありませんでした。このように、これまではお客様の動きを十分には把握できていませんでした。

今後は、顕在化させたお客様を、たんに集客するのではなく、取り込む時代になります。デジタルマーケティングで精度の高いアプローチを行うことによって、業績の改善につなげられると考えています。

滝澤氏
お客様の行動データは、営業においてもマーケティングにおいても非常に重要ですよね。しかしながら、行動データに対してはハードルの高さを感じる企業も多いですよね。営業とマーケティングの連携を阻む、よくある問題点というと、どういったものが挙げられますか?

安永氏
よくある問題のひとつに、営業部門とマーケティング部門との分断があります。この問題を改善する鍵は業務に対する納得感です。例えば、営業担当者にとってSFAの入力には手間がかかりますが、入力することによって本当に受注率が上がるんだという納得感が重要です。

佐藤氏
営業部門とマーケティング両部門の目標意識を統一させることも重要だと言われますね。今回のテーマに即して述べると、営業部門の視線をマーケティング部門が取り入れていくことになると思います。一方で、営業部門もマーケティング部門の施策をしっかりと理解し、積極的に働きかけていくことが重要です。仕組みを変える前に、目標意識の統一することが一番重要なところだと思います。

マーケティングにおけるデータ活用のポイントは?

安永氏
マーケティングにおけるデータの活用ポイントについて一言でまとめるなら、戦略ありきのデータであるべきだということです。データを集めるところから発想を広げると、目的を見失いがちです。今は、会社の規模や業種にかかわらず、GoogleアナリティクスによるWebサイトのデータなど、様々なデータを取ることができます。そのため「データが多く集まったけれど、何をしたらいいのかわからない」という状況に陥りがちです。

そうではなくて、「これを実現するためには、どのようなデータが必要なのか」を考えるべきです。営業フロー、ユーザーフロー、KPIツリー、ユーザー属性など、様々な観点で、戦略と施策を練ることを先にやるべきだということです。つまり、出口戦略あるいは施策のイメージをあらかじめもった上で、データ基盤を構築する流れが理想的です。それらがないままにデータを貯める箱を作ったとしても「データの使い方がわからない」「何のためのデータなのかがわからない」といった問題が生じます。データを活用して実現したい目的や目標がなければ、振り返りの指標もなくなるため、PDCAを回せなくなってしまいます。

佐藤氏
日本企業の営業担当は、海外に比べて広範囲の業務を担っていて相当な負担がかかっていると聞いたことがあります。営業担当者の負担を減らすことも、マーケティング部門が売り上げに貢献できることの一つになるはずです。

例えば、マーケティング部門でKPIを設定して活動しているとして、このKPI自体が売上の拡大や受注率の向上にどういった形で寄与しているか、改めて考え直すべきということですね。先ほど話題に上がった、Webサイトで顕著に広がっているお客様との接点を有効活用し、いかにお客様に価値を提供するのかの意識を擦り合わせていくことがポイントと理解しています。

まとめ

取引先との接点をWeb上で持つことが多くなった現在、精度の高いデジタルマーケティングでお客様のニーズを顕在化し、営業の精度を上げていくことがますます重要になってきています。営業部門とマーケティング部門の分断を防ぐ体制作りと目標意識の統一によって、全社を挙げた「戦略ありきのデータ活用」を図っていく必要があります。

後半では、営業とマーケティングを連携させる事例と課題を紹介していきます。また、近年のリード解像度の向上とAIの登場で変化するマーケティングについても扱います。

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